40th Anniversary FINAL in 日本武道館 特集

2024.6.9 
40th Anniversary FINAL in 日本武道館
LIVE REPORT

すでに彩事季とインタビューでも語られている、特別な武道館公演。
この特集では“客席目線”で、主にホールツアーとは異なる楽曲と演出部分にフォーカス。
迫力たっぷりのライブ写真とともにお届けしよう。

アニバーサリーイヤーを締めくくる、一夜限りの武道館。入場と同時に観客の目に飛び込むのは、円形センターステージを囲む白い緞帳。チェッカーズ時代に既視感のあるファンならハッとして心拍数が上がるし、初めて目にする人も開演の瞬間を想像し始める。すでにコンサートの一部が始まっている。40周年のファイナル公演で心憎い演出。しかもそれは、チェッカーズ当時と同じ舞台監督&演出コンビが今も手掛けていたりもする。

SEから会場が暗転し、大歓声が沸き起こる。フミヤ目線の彩事季と対比させて、オープニングを客席目線で見るとこうなる。14000人の歓声と、客席に煌めくカラフルな光に囲まれたステージ。「Hello, everybody!」暗い幕の中からフミヤの声だけが響いた。「I am here again. Welcome to Nippon Budokan. Come on!」ドラムがリズムを刻み始め、幕内のライトが点灯。そこにいるはずのフミヤの姿はまだ見えない。焦らされることで高まる興奮。パッと照明が切り替わり、天を指差したフミヤのシルエットが! 割れんばかりの大歓声とともに緞帳が振り落とされ、中央に立つフミヤが現れた。そのポーズのまま、360度の歓声を全身で吸収するかのように浴びること数秒、マイクスタンドを手にくるりと回る。「1、2、3!」のロックなカウントから「ギザギザハートの子守唄」へ。凄まじいまでのスターのオーラ。今回のライブで最も鮮烈な印象を残したのが、まさにこのオープニングだった。

興奮MAXのまま、チェッカーズ初期ナンバーで畳み掛ける。2曲目「ジュリアに傷心」では、スモークが吹き上がる。マイクをスタンドから外して手に持ち、円形ステージの外周へ。フミヤのまとう黒いブルゾンのスパンコールが、照明に反射してきらめく。武道館に立つ藤井兄弟のカッコよさといったらない。「星屑のステージ」では、ミラーボールが天井まで星々を撒き散らした。日の丸までキラキラに。フミヤは全方位へ手を差し伸べて歌い、客席では流星が左右に揺れる。光り物が360度ぐるり。すり鉢状の武道館まるごと輝かせるサイリュウムとHOTAFURUもまた、演出の一部。センターステージの一体感は特別だ。「今日は40周年なんで、40年分歌います。覚悟してください(笑)。皆さんの思い出と照らし合わせながら、最後まで楽しんで帰ってください」。RED PARTYで「60」だった足掛けの柵が、今回は「40」に。


中央でスポットライトを浴びて、「I Love you, SAYONARA」。息つく暇もない怒涛のオープニングから、ミディアムナンバーへ。サックスソロに指を鳴らしながら、フミヤもこの空間を味わう。久しぶりの股割りも見せた。「Cherie」は、水色のライトの陰影や水玉模様が美しい。愛しい人を想う歌詞と癒しのメロディー。リズムに合わせてライトが1箇所ずつ点灯したりと、細かい演出が随所に見られる。「NEXT GENERATION」は曲自体も、この場所で聴くことも特別なナンバー。ライトがステージに白い十字を描いてから、ピンクの輪に変わる。フミヤが外周を歩きながら手を振れば、そちらの客席が歓声と光で応える。「夜明けのブレス」は白と青の世界。平行に走るレーザーと繊細な垂直のライトが、ステージを鳥籠のように囲む。どこから見ても美しい立体感。ラストは天を仰いで抱きしめ、拍手に応えて全方位に礼をした。

「どっちが前かよく分からない(笑)。(こっちー!と全方位から声)チェッカーズは1983年デビュー、10年間やって解散しましたけど。たしか17の夏ぐらいに組んだので、アマチュアから入れると13〜14年はやったのではないかと思います。最初の10年はスーパーアイドルでした。人生でアイドル経験があるっていう人間は少ないと思うんですけど(笑)。そんな経験なかなかできないからなぁ。面白かったよね。俺らも多少はのぼせあがるよな、尚之?(尚之、笑顔で頷く)チェッカーズは解散しましたが、次は解散のないユニットをやります」

尚之が呼び込まれてF-BLOOD。センターに二人で立つ。恒例の「F」「B」の人文字を作り、その状態で360度回って見せる兄弟。お約束の「命」までやって、「まさか武道館でやるとは(笑)」と兄。「白い雲のように」で、優しい明かりが二人を包み、ステージがゆっくりと回転。フミヤがヒップポケットからハーモニカを取り出してソロへ。フミヤやバンドを背面から見られるのも、センターステージの面白さだ。「未来列車」は、パステルレインボーカラーの夢色。フミヤがタンバリン、尚之がギターを手に、それぞれの方向を向いて客席に届ける。会場の広さを超えて、二人をとても近く感じられる。「SHOOTING STAR」は赤と白のライトとステージ周りのミラーボールが、会場中にキラキラと光の粒を広げる。ロックな兄弟が、ひたすらカッコよく、かつ笑顔も見せながらのパフォーマンスで魅了。フミヤは外周でベースやギターと絡む。足掛けの柵に立ち、ラストは向き合って軽くジャンプして締めた。チェッカーズ時代からのファンも今回が初という人も、二人との今を全身で味わう。

「今回の40周年ツアー、初めて全都道府県を回りました。今日は61本目です。全部ホールツアーだったのにいきなりこんな円形ステージになって、最終日のような初日なんですけど。勝手が全然違う。この武道館のステージに立つのが、今日でわたくし111回目。(大歓声&大拍手)偶然ですよ。ゾロ目です。サイコロふったら一番いい目です(笑)。武道館は、たくさんの思い出があります。チェッカーズ解散のコンサートもここでした。30年前ですね。多分ソロの始まり(FFFツアー)でも武道館でやったと思うんですけど。20世紀から21世紀に変わる瞬間もここで歌ってました。いろんな思い出がある武道館です。30年前、藤井フミヤというソロになりました。1曲目が運良くヒットしてくれました。それでは聴いてください、『TRUE LOVE』」

アコースティックギターを弾きながら、「TRUE LOVE」。フミヤの足元で光の粒が軌跡を描く。まるで一人ひとりの人生が星座となって交差するよう。中央のステージがゆっくりと回転。すべてのファンに深い愛と感謝を込めて届ける。「DO NOT」では、ステージ内周と外周を光が縁取る。水が滴るような、自然を感じさせる有機的な灯りの演出。ギターソロは赤、ラストは青とグリーンと、1曲の中でもコントラストが美しい。それぞれの曲の魅力を引き出す演出も見どころのひとつ。最後のロングトーンで、場内に広がっていた光がフミヤの足元へ戻る。その余韻がたっぷりと響き渡る。続いて、ピアノソロから「Another Orion」。一面が星空となった前奏で、ステージ中央部分がリフト。これも武道館らしい、心に残る絵となる。続く「Go the Distance」も高いステージから全方位へと歌い上げる。床面から上に照らす垂直なライトは、神殿の柱のよう。“生まれてきた意味”を知り、歌で愛を届けているフミヤ。黄金の光が広がり、弓から矢を放った。「ALIVE」では外周へ。ファンとの絆でもあるこのナンバーで、一緒に歩いてきた道のりと未来を確かめ合う。

「どこまで来たっけな? ああ、もう最後のブロックです。俺と尚之は、ティーンエイジャーの頃にロックンロールに身も心もやられちゃいまして……(尚之から、メンバー紹介!とフォローが入る)……その話の前にメンバー紹介を(笑)。兄思いの弟と、弟思いの兄です(笑)。今回61本一緒に回ったメンバー。日本中のお酒を飲みましたね。それでは飲み友達を5人紹介します」
バンドメンバーを紹介し、最後に尚之から「センター、藤井フミヤ!」と紹介されると、「40年間ずっとセンターです。今日は、センター中のセンターです!(笑)」と、アイドル風に。
「さっきの話の続きですが(笑)、俺と尚之はティーンエイジャーの頃、ロックンロールに洗脳されまして。中1ぐらいでバンドを組んで、ずっとバンド人生です。チェッカーズを組んだのが17の夏ぐらいだったと思います。ロックンロールとロックの違いはですね、ロックンロールはもともと男女が踊るために作られた曲。つまり8ビートですね。踊って何をするのか? それは恋をするためです。だから、ロックンロールは求愛の音楽なんです。求愛しようぜ! Rock ’n’ Roll!!」

「REVOLUTION 2007」のギターイントロに大歓声、笑顔、涙。フミヤとバンドメンバーが拳を振り上げて、HEY!HEY!で場内を煽れば、観客も一体となって応え続ける。そしてフミヤのカウントから、ハーモニカソロで曲がスタート。イントロの間に舞台下部で衣装替えを済ませていたフミヤ。ノースリーブ姿にさらなる歓声が起こる。アクティブなスタイルが、ここからのロックンロールタイムの熱さを示唆する。続いて「NANA」。イントロで、シルバー&ゴールドのテープが放たれ宙を舞う。フミヤと尚之をピンクのスポットライトが照らし、ピンクに染まる場内とミラーボールに、艶かしいサックスが絡む。
カラフルな照明の中、藤井兄弟がハンドマイクで客席を煽る「I LOVE IT!ドーナッツ!」。なんといっても今回は円形ステージそのものがドーナッツ、そしてドーナッツ盤でもある。ステージを縁取るライトが回転することで、二人が巨大なレコードプレイヤーの上で歌っているよう。二人で外周を回りながら、フミヤはコーラスを追っかけアレンジ。後半では北の花道へ。
「GIRIGIRIナイト」互いに求愛、なロックンロールタイムの集大成。リズムに合わせて客席が揺れる。数時間後の0時そして1時には、すべてを終えたフミヤは美酒に酔っているだろうか。「One more Rock ’n’ Roll!! Come on!」ボルテージが一瞬たりとも下がることがない、むしろメーターを振り切ったほどの爆発的な熱気が続く。打ち込みのリズムから、ラスト「UPSIDE DOWN」。イントロでスモーク、赤青のライトとレーザーが交差する。これでもかと盛り上がる、ホールとはまた違う360度のエネルギーが渦を巻く。40の柵に足を掛けて、ラストは「Thank you!」花道からメンバーとともに一旦去った。

アンコールに応えて、花道からフミヤを先頭に再登場。白いツアーTシャツ、胸に「111」の数字が誇らしい。

「アンコールどうもありがとうございます。長い、長い長いツアーがやっと終わります。(拍手)日本は地球で見るとちっちゃいんですけど、実際回ってみるとまぁまぁ広いです。いろんな街があって、いろんな人が暮らしていて、それぞれに特色があって。また全国ツアー、やりたいと思います。(歓声&拍手)今日はいろんなとこから決起集会のように集まってくれて、ありがとうございます(笑)。それじゃアンコールいこう!」 

ギターのイントロから「Song for U.S.A.」。誰にでも、“ティーンエイジのまま”の部分は多かれ少なかれ残っている。大人になった同士、今この瞬間を新たな証として刻んでいく。「哀しくてジェラシー」も前奏から大歓声。お約束の手振りも揃う。外周を回りながら、フミヤもまた武道館という場を味わい尽くす。「Come on, ドラちゃん!」から、「紙飛行機」。クラップとともに、みんなごそごそと“その時”に向けて準備し始める。「答えは風の中……用意はいいか? Are you ready? ここでしか見れない世界を、みんなで作ろうぜ!」。フミヤが足で強く床を蹴ってカウントし、「Yeah Yeah Yeah!!」で紙飛行機がみんなの手元から一斉に離陸。たくさんの想いがこもったカラフルな紙飛行機が舞い飛ぶ中、フミヤも笑顔で拾い上げて飛ばしたりしながら歌い続ける。ラストは「みんなの願いが叶いますように! Thank you!!」。今回は気合いを入れてたくさん紙飛行機を折ってきてくれた方も多かったようだ。「武道館さん、あとで片付けます!」と笑う。曲が終わりMCになっても、まだ紙飛行機が宙に。


「まだ飛んでる!(笑) まだ余ってるんだね、君たち。持って帰りなさい。だーかーら、折り過ぎるなっつったの!(笑) 今日はありがとうございました。やっと終わります。なんか大晦日みたいな気持ちになってきた(笑)。40年間、ステージの上で歌わせてもらって、本当にありがとうございます。(拍手)40年のすべては、ここがゴールだったと思います。本当にありがとう。最後は何歌おうかと思ったんですが、尚之も40周年なんで最後はF-BLOODで歌います。チェッカーズの頃に、20代で作った『I have a dream』。キング牧師の演説に感化されて作ったラブソングです。その頃はまだ20世紀で、21世紀になったら人類は戦争なんてやめるに決まってるじゃんと思ったんですが、全然そんなことはない。それどころか今年の世界の軍事費が過去最高になっております。世界から戦争がなくなりますように、武器と兵器がなくなりますように、願って歌います。みんなで祈れば、でっかい祈りになる」

回転するステージの中心で歌うフミヤと尚之、全周を囲む観客の手振りが揃う。古代から音楽が祭祀や神事で使われていたことを思えば、こうして平和を想う気持ちを合わせたくなるのは、ごくナチュラルなこと。曲の後半では、フミヤのメッセージが印刷された星がひらひらと降ってきた。その感謝の思いは、会員サイトのTOP画像でもすべてのファンに向けて届けられている。歌い終えたフミヤに、大きな拍手がいつまでも贈られた。

「今日は本当にありがとうございました。燃え尽きました(笑)。また必ずお会いしましょう!(歓声)また一緒に遊ぼうぜ!Yeah!」SEがかかり、会場は手拍子。ひとつのツアーが終わるということは、そのツアーバンドの解散でもある。バンドメンバーがセンターに集まり、全員で外向きの輪になって手を繋いだ。「バンザイ! バンザイ! バンザーイ!」。ファンも一緒に万歳三唱し、長いツアーを駆け抜けてきたフミヤとバンドメンバーに惜しみない拍手が贈られた。「帰りは気をつけて。じゃあな!」。大歓声を全身に浴びて、ステージを後にする。2年前の還暦ライブ「RED PARTY」の時にはなかった360度の歓声が、この日フミヤに届いた。40周年の歴史を最高の今という形で表現したステージへの、喜びと祝福に満ちた拍手が続く。

長い40周年アニバーサリーツアーが、武道館で最高のファイナルとなって幕を下ろした。楽屋に戻ったフミヤは、安堵と解放感はもちろん、とてつもなく大きなものを作り上げた達成感と、浄化されたようなすっきりとした表情をしていた。疲労しながらも、全身にファンからの愛のパワーを浴びた人ならではの状態なのだろう。もちろんフミヤが与え続けてきたパワーこそ、凄まじい量だった。40周年、しかも111回目の武道館。それはフミヤとファンが積み上げてきた歴史の集大成。驚き、喜び、涙、懐かしさ、新しさ、愛、祈り、希望……あの幕開けから一瞬のような、でも濃く充実した時間。また新たな1ページが、互いの心に深く濃く焼き付けられた。大きな節目を通過し、フミヤはファンとともに次なる未来を創ってゆく。


  
【SET LIST】

ギザギザハートの子守唄
ジュリアに傷心
星屑のステージ
I Love you, SAYONARA
Cherie
NEXT GENERATION
夜明けのブレス
白い雲のように
未来列車
SHOOTING STAR
TRUE LOVE
DO NOT
Another Orion
Go the Distance
ALIVE
REVOLUTION 2007
NANA
I LOVE IT!ドーナッツ!
GIRIGIRIナイト
UPSIDE DOWN

ENCORE:
Song for U.S.A.
哀しくてジェラシー
紙飛行機
I have a dream

【MEMBERS】

Vocal : 藤井フミヤ  
Drums : 大島賢治
Bass : 山田“Anthony”サトシ
Guitar : 沢頭たかし
Keyboards : 櫻田泰啓
Sax, Guitar:藤井尚之