Fumiya’s Favorite ー 『流転の海』シリーズ

『流転の海 第一部』(新潮文庫刊) 781円(税込)

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「流転の海」シリーズ 宮本輝 著

「流転の海」シリーズ 宮本輝 著

宮本輝
『流転の海 第一部』(新潮文庫刊) 781円(税込)
『地の星―流転の海 第二部―』(新潮文庫刊) 825円(税込)
『血脈の火―流転の海 第三部―』(新潮文庫刊) 935円(税込)
『天の夜曲―流転の海 第四部―』(新潮文庫刊) 935円(税込)
『花の回廊―流転の海 第五部―』(新潮文庫刊) 825円(税込)
『慈雨の音―流転の海 第六部―』(新潮文庫刊) 880円(税込)
『満月の道―流転の海 第七部―』(新潮文庫刊) 825円(税込)
『長流の畔―流転の海 第八部―』(新潮文庫刊) 781円(税込)
『野の春―流転の海 第九部―』(新潮社刊) 2,310円(税込)

 

人生には、いつまでも大切に本棚に置いておきたい本がある。またいつか読みたいと思う本、バイブルになるような本。「流転の海」が、まさにそれだ。読書好きな男性には、特におすすめ。必ず人生の指針になるはずだ。

宮本輝氏は、「泥の河」で太宰治賞、「螢川」で芥川賞を受賞するなど、数々の素晴らしい作品を執筆された大作家。その宮本氏が、なんと37年の歳月をかけて書かれたのが、「流転の海」だ。約500ページの厚めの本が9冊、第九部「野の春」で完結する。作家人生を懸けて書いたと言っても過言ではない大作である。

主人公の松坂熊吾と妻の房江、そして子供の伸仁の3人家族の話。伸仁のモデルは宮本氏自身だろう。半分はフィクションで、半分はノンフィクションなのだと思う。
物語は、敗戦後の動乱の大阪の街から始まる。読み進めるうちに、松坂熊吾という、豪快で人情味があり、なんとも人間臭い、癖のある男に共感を感じ、教訓を得られる。時代背景が戦後から高度成長期に向かう時期なので、昭和37年生まれの自分にとって、割とリアルに感じながら読むことができた。
それにしても、これだけ長編の家族の物語を読んでいると、まるで登場する一家が、実際に自分の知り合いのような気になってくる。それだけに読後の喪失感は、これまで味わったことのない感じ・・・なんと言えばいいのだろうか・・・。今時の言い回しで言うなら“流転の海ロス”状態が、しばらく続いたほどだ。

宮本氏は、愛読者たちに「早く続きを書いて!」と、常に催促されていたらしい。ファンの気持ちもわかる。37年もかかっているのだから、残念ながら最後まで読めず亡くなった方もいるだろう。
もしこれから読むなら、それなりの時間と気合いが必要だ。向き不向きもあるので、すぐ全巻を揃えずに、まず1冊だけ買って読んでみるのがいい。まぁ、途中でやめられないとは思うけれど!