藤井画廊 第6回

恥じらい

Fujii Art Gallery

作品を知ることは、作り手の内面世界に触れること。
近年のカレンダー掲載作をはじめ、作品のテーマや技法、制作エピソードなどを、フミヤ自身の言葉でお届けします。
さらにFUMIYAワールドが深まる、アートなひとときをどうぞ!

恥じらい

作品タイトル「恥じらい」
(ボールペン、クレヨン、水彩、アクリル 2019年)

この作品は、しばらくほったらかしだった。ここからどうしたものかと考えているうちに、存在すら忘れていた。未完成のつもりだったが、しばらくぶりに見てみると、これで完成でいいんじゃないかなと思えてきた。
さらに描くべきか描かぬべきか、判断が難しいところである。ここから更に描き足せば、もう後戻りできない。失敗や後悔をしても、油絵やアクリル画は上から塗り重ねできるが、水彩やパステルなどはそのまま進むしかないのだ。あそこでやめときゃ良かったーと、密かに後悔している作品も少なくない。何より危険なのは、酔って描き足した時。その時はこれはいいと思っても、ほぼ翌日に後悔することになる…。

少女のポーズは、泣いているようにも見えるし、恥じらっているようにも見える。全身に、まるで古代の原住民の刺青のような柄が入っている。なぜこのような作風にしたのか自分でも思い出せないが、少し現代アートな感じにしたかったのだろう。たしかバスキア展に行った後だったから、刺激されたのかもしれない。アート展を見に行くと、たいてい作品に影響する。
でも実は、この絵がこうなった本当の理由は、プレゼントなのだ。あえて、ボールペン・クレヨン・水彩・アクリルなど多くの画材を使用している。実は、どれもFFメンバーからのプレゼントだ(※)。せっかくもらったから使わないともったいない、全部使ってみよう!と言うのが最初の発想。料理で言うと、いろんな野菜を沢山もらったから、これで何か作ろう、みたいな感じ。FFメンバーというのは、画家である私のパトロンでもあったのだなぁ。

この作品と同じポーズの絵が、他にもう1枚ある。そちらはオイルパステル(クレヨン)で描いた。綺麗に仕上がった絵をぐしゃぐしゃと丸めてしわくちゃにし、それをまた元に戻し、最後にコーティング液を塗った。一か八かの後には引けない行為だったが、なかなか面白い作品に仕上がったので良かった。そちらは大阪での個展で新作として展示したので、見に行ってくれた人はこのポーズが記憶にあるかもしれない。今から思えば、あの時の個展はコロナで日本中のイベントが中止になるギリギリ前だった。

※現在、感染症予防対策としてプレゼント送付はご遠慮いただいております。(巻末参照)