ACTIONツアー特集2

2020年10月31日のFF会員限定公演から幕を開けた、ACTIONツアー。
いまだ続くコロナ禍で公演延期を余儀なくされてはいるが、希望を持って春の再開を待ちたい。

前号に続くツアー特集、今回は12月24日・渋谷公演の様子をレポート。
この日は配信も行われ、会場だけでなく全国でも多くのファンが堪能。
あらためて、写真と文字で記憶に刻みたい。

2020年を締めくくる、LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)公演。クリスマスイブだというのに渋谷の街にはカップルどころか人も少ない。13本目となった渋谷も、引き続き収容人数50%で、万全の感染防止対策のもと開催された。

青い闇に浮かぶステージにフミヤが現れると、マスクをし歓声を上げられない客席から熱い拍手が起こる。「Hi, everybody! Are you ready?」フミヤが問いかけながら腕で丸を作ってみせると、準備万端のファンも「○」で応える。「さあ、始めようか。Band standby. Come on, action!」映画撮影のカメラを回すイメージのオープニング、バンドへのキュー出しでライブが始まった。こんな形でACTIONのワードを頭に持ってくるとは。フィルムのように、止まっていた時間が流れ始める感覚だ。

幕開けは「BET」。当初ツアーとして予定されていた「フジイロック」、そのアルバムオープニング曲である。ステージの背景にはACTIONのロゴが点滅し、鳥肌モノのインパクト。ツアー敢行に賭けるフミヤの想いが伝わってくる。続けてサックスの高音から「TOKYO CONNECTION」。今日は生配信も同時に行われ、舞台前や左右にカメラが入っている。東京まで出かけることが容易ではない今、全国のファンと共有できていると思うと楽しい。「UPSIDE DOWN」手拍子で会場中の光り物がキラキラと輝く。今回、光り物はファンからフミヤに気持ちを伝えるためのコミュニケーションツールとして重要な役割を果たしている。オープニングから一瞬も興奮が止まらない3曲の疾走感。
一転、静かな闇でフミヤが語る。「ずっと君に会いたかったけれど、コロナのやつが邪魔して、なかなか君に会いに行けなかった。でも僕は、君と会っていないと自分が消えてしまいそうで…。だから今日、君に会いにきた」。「Style」気怠く重いリズムと歪んだギター。芯の太いロックナンバー「この空の真下で」は、絞り出すような叫び。そしてフミヤのギター1本から、ソロで初の披露となる「Rolling my Stone」、パトカーのサイレンと乱れた息遣いから、「100Vのペンギン」。独特なメロディが、カオスな時代のメッセージ性を強めている。パントマイムで見せる壁の閉塞感は、今マスクを付けてライブを見ている今にも繋がる。叩いても壊せない壁を、みんなで壊して進もう、と。ここまで7曲ノンストップ。長い長い拍手が止まない。

フミヤ(以下F):Yeah!元気ですか?(客席は手で○)OK(笑)。本日は、コロナで大変な中、よく渋谷公会堂までいらっしゃいました、本当にありがとう。会えてよかったです。一時は収まりかけたんですけどね、また年末になってアイツが復活してきた。ムカつく。お客さんは半分ですけど、こっから見たら満員に見えます。君たちの心が大体二人分ぐらいあると思ってます。(拍手)みんなマスクしてるんで年齢不詳。目だけだと20代ですね。はい20代の人―?(みんな挙手)図々しいな!(笑) では次は、あなたの目から、そして耳から、私が若返りの魔法をかけます。じっとこの指を見てください。眠くなっちゃダメですよ。
ドモホルン〜〜〜フミヤ!

ドラムの4カウントから、「星屑のステージ」そして「ジュリアに傷心」。衝撃と歓喜。会場から小さく歓声が漏れ、涙に濡れてのダンス。懐かしい手振りが揃う。しばらく動けない人や、曲中ずっと泣いている人もいる。初期の楽曲ゆえに、年齢的にリアルで聴くのは初めてという人も少なくない。「WANDERER」、「I Love you, SAYONARA」と人気楽曲が続く。思うように会えなかった2020年。サックスも一緒に、空白の時間を取り戻すように歌い上げる。一気に心をさらわれて、あの時へ。大きな拍手が贈られる。

F:音楽っていうのは不思議なものですね。タイムマシン。その時のことを思い出すというよりは、もう、その時の自分になっちゃう。コンサートというのは船みたいなもんで、始まると出港して、本当は元の場所にはいないんですよ、今。旅の途中。大丈夫、終わる頃にはちゃんと渋谷に着いてますから(笑)。(拍手)さてさて、今日でこのACTIONツアー、今年の分が終わります。今日はとりあえずギリギリの感じで、やれてよかったです。そういえば一回も言ってないね、メリークリスマス!

ハーモニカで尚之氏のギターとともに紡ぎ始めたのは、なんと「ティーンネイジ・ドリーマー」。冒頭でハッとして口元を押さえ、涙を拭いながら聴く人も。郷愁漂うシンプルなバラードで、気持ち良く伸びるボーカル。そして絶妙な曲順で「TRUE LOVE」。バンド時代からソロデビューのあの頃へ、また一気に時間の幅が拡大する。馴染みの曲ほど、その時の自分を映し出す心のバロメーターになる。拍手も止まないうちに「ALIVE」のイントロ。フミヤは笑顔で、明るくなった3階席までを愛おしそうに見渡す。温かいオレンジの光に包まれ、会場がひとつに。フミヤがステージでみんなを手招きする。大丈夫、一緒なら坂だって川だって渡っていける。そんな応援歌をしっかりと受け取る。

F:今回こういう状況ですので、皆さん全然声を出せない。一緒に歌えない。けれど、みなさんの両隣は空いてる。前後左右も結構動ける。そう、君たちは動けるんです! だから後半は私が考えて、非常に簡単な振りを付けました。恥ずかしがらずにやったもん勝ち。画面の向こうのあなたも、
どうぞ一緒にやってください。

「危険なラブ・モーション」、サビのキュートな振り付けをレクチャーしてから歌に入る。ファン思いのフミヤらしい、愛を感じる工夫だ。これもライブを数本やって思いついたアイデアだという。ジャケットも脱ぎ、ハンドマイクで軽やかにステージ左右へ。サビの振りは尚之氏も一緒に。観客も、お墨付きを得て、より堂々とダンスタイム。光り物を装着した腕が輝き、とても客席半分には見えない盛り上がり。続いてカウベルのカウントからの「WE ARE ミーハー」。虹色のライトに照らされて、楽しさがはじける。フミヤもみんなの盛り上がりに嬉しそうだ。1年分のいろんなことが吹っ飛ぶ。続いてドンドンと体に響く拍打ちから、「GIRIGIRIナイト」。HUGしたい、とハートを両手で抱きしめるような仕草。ギターとサックスのソロ掛け合いも見せ場だ。ブレイクでは真壁氏お約束の大ジャンプ。そしてラストソング、「NANA」。青〜パープルに染まるステージに、赤い光がキラキラと美しくフラッシュし、これでもかと高揚感を煽る。あっという間の、でも凄まじいまでの濃さと充実感のある本編。ラストは股割りでフィニッシュ。盛大な拍手とカラフルな光り物に見送られて、いったん袖へ。

アンコールには、フミヤサンタがスレイベル(鈴)を鳴らしながら登場し、「メリークリスマス!」。そのままピアノとサックスとともに「Silent Night」、そしてアンコール1曲目は「涙のリクエスト」。まさに涙、涙の歓喜に包まれる。チェッカーズがブレイクした瞬間から見てきた人も、今回初めて生で聴けた人にとっても、右手でクルクルの振りは伝説の域。当初この曲は、FF会員限定公演だけで披露される予定だった。しかし当日あまりの好評ぶりと、フミヤ自身も「ないと物足りないし、こんなに喜んでくれるのに、やらない理由がない」と、レギュラーのセットリストに加えられた。

F:(尚之氏に)ここ渋谷公会堂で「涙のリクエスト」を歌うと、なんかこう、ねえ? 建物は変わっちゃってるけど。
N:ザ・トップテンを思い出しますね。
F:初めてザ・トップテンという番組に出た時「1位になったら椎茸を食べる」という(笑)。(笑&拍手)時間というのはすごいね、今では椎茸大好きです(笑)。ま、その後、1位になったんですよ。それで椎茸を食った後に歌わされた記憶があります。さて、年末年始はまたコロナで大人しくしなきゃいけない感じになりましたが。しょうがないですね。でも今は昔と違って、いろんなもので繋がっている。SNS、ネット。私もいろいろやってるんで、繋がることもできます。3日に1回ぐらいは日記書いたりしてます。いろんなことがあっても、繋がってるから、きっと寂しくない!(拍手)それでは、ハートマークを込めて。(手で大きなハートを描く)私の携帯から…見えない携帯。
みんなに、送信。

「言葉しかない Love Song」へ。距離を優しさで乗り越えるナンバー。青やパープル、緑のライトが会場を包み、美しいコーラスのハーモニーに気持ち良く身を委ねる。ハートとハートで繋がり、月明かりの下でダンス。そしてライブを締めくくるのにふさわしい「エンジェル」。青く染まったステージに、まるで天使が飛んできたように、白いライトが1本ずつ光の線になって集まり、中央で交差する。まるで宇宙の神殿のような神聖さ。握りしめた手…寂しい時は手を見れば、繋がるスイッチがいつだってそこにある…そんな約束を感じる。

F:今日は本当にありがとうございました。来年は必ず、コロナはある程度収束すると思います。どこまでか分からないけど。がんばろう!(拍手)それでは一本締めで。また一緒に遊ぼうぜ!(パン)配信をご覧の皆さん、今日は参加してくれてありがとうございました。次はぜひライブ会場でお会いしましょう。またねー! 帰りは気をつけて。帰ったら、手洗いうがい忘れないように、今着てる服は洗濯機に(笑)。また必ず、お会いしましょう。素敵なクリスマスを。そして素敵な年末を。
そして良いお年を!

笑顔でステージを後にするフミヤを、拍手と光り物で見送る観客。参加することへの緊張感、歓声を上げられないもどかしさ。そのすべてを上回る強烈な喜び。1年を振り返って、ここまで心も体も高揚する瞬間は他にどれぐらいあっただろうか。今だから実現した奇跡のセットリストは、愛そのもの。お互いの繋がりを確認しあえた感覚は、忘れ難いライブとして胸に刻まれた。みんなと時空を超えて旅した船は、いつしかイブの渋谷に帰港していた。