Fumiya’s Favorite ー 時々とんかつ

時々とんかつ

時々、無性にとんかつを食べたくなる時がある。夫婦でとんかつが大好きなのだが、食べる機会は少ない。だから、とんかつを食べる時は意気込んで行く。よく行くお店は二つあり、どちらも人気店で甲乙つけ難く美味い。テレビの取材でも行ったことがある。予約は取れないし、食事の時間帯はいつも行列でしばらく待たないと入れないので、夕方オープンすぐを狙う。朝から心に決め、開口一番「今日はあの店のとんかつを食べに行くぞ!」と宣言する。その瞬間から、その日はとんかつモードになる。なにしろ夕方4時から食べる計画なので、当然お昼は抜き。とにかく空腹で参上!という心意気なのだ。店に入るとほぼ一番乗りで最初は貸切状態だが、さすが人気店、食べ終える頃にはほぼ満席になっている。

オーダーするのはもちろん「とんかつ定食」。やはりとんかつには白米に限る。最初から酒は飲まないと心に決めているので、車で行く。たまのとんかつ、せっかくだから2種類食べたい。特選ヒレと特選リブロースをオーダーする。どちらも約3000円の豪華定食。特選の場合1000円上がるのだが、この値段でこのセットディナーと考えれば最強だ。とんかつ定食の基本は、とんかつ・豚汁・お新香。皿にはたっぷりのキャベツとポテサラが付いていて、キャベツはおかわりができる。ご飯も、この時ばかりは大盛りにする。さらに、ここでもうひとつ悩むメニューがある。それはカレールー。なかなか普段カツカレーを食べる機会などないので、欲張ってカレールーも頼む。やはり空腹だと、あれもこれもと欲張りになってしまう。
まずロースから。最初の一口は塩だけで食べる。脂がジュワァーッと口の中に広がり、目を閉じて、シンプルな塩味の柔らかい豚肉の旨味を味わう。揚げたての熱々で毎回口をやや火傷し、上顎の薄皮がめくれる。そこからいよいよ基本のソースだ。特製ソースに辛子を溶き、熱々のとんかつにレモンをちょい搾ってから、たっぷり付ける。ロースからご飯、ヒレからご飯、からの豚汁。合間でキャベツも忘れてはならない。あぁ至福の時! フードファイターみたいに黙々モグモグ食べ、食べ終えるとそりゃもう腹パンパンで胃の許容量を超えている。もう・う・ご・け・ない!

日本が世界に誇る「とんかつ定食」。考えた料理人は天才ではなかろうか。外国人もファンが多い。とくに東京人はとんかつ好きなのだろう、昔からとんかつ屋が多い。どこも専門店で、なぜかカウンター。さらにここ数年で、東京のとんかつ事情は激変しているようだ。肉・パン粉・油・米など、すべてにこだわりを持つ新しい店が増えている。日本人って本当に凝り性。もちろん、とんかつ好きとしては実に喜ばしい進化である。そんなわけで、時々とんかつを食べに行くことは私にとって一大イベントなのだ。