FF SPECIAL INTERVIEW

FFという同志に向けて、 “人間・藤井フミヤ”のメッセージを伝えるのが会報

目の前のACTIONツアーを1公演ずつ大切に進めつつ、次なるプロジェクトを進行中のフミヤ。
いよいよWeb化を迎える会報「FFF」についても、あらためてその想いを語ってくれた。
今年に入って、あなたは何に出会い何を得ただろうか。ここから半年、どう過ごす?
音楽にアートにと自分の世界を磨き続けるフミヤは、外の世界がどうであれ、今を楽しんで動き続ける大切さを教えてくれる。一度しかない2021年を、フミヤとともに味わい尽くそう。

コミューンの中、メンバーのための媒体 〜 会報「FFF」Web化 〜

—— こちら会報「FFF」ですが、次号から印刷物ではなくWeb会報へと形態が変わります。

フミヤ(以下F): 紙でなくなるというのは、かなり大きな変化だよね。でもWebだと誌面みたいに文字制限がないから、載せる量は増やすことができる。インタビューやライブレポートもだけど、投稿してもらうようなページもさらに盛り上がるといいなと思う。

—— 年4回のWeb会報に加え、号外として最新情報もお届けしていきます。また、一年分の内容を再編集した印刷物を年一回お届けします。

F: デジタルとアナログ、それこそメールと手紙を併用するようなものだろうな。瞬時に届くメールのようなものもあれば、手紙をじっくり書いて、切手を貼って投函したものが数日後に届く、というようなものもある。ポストを開けて手紙が届いていた時の嬉しさってあるじゃん。やっぱり年一回でも、形として手元に残るものがあるのは大事だよね。すでに一度読んだ記事でも、一年分まとめ直したものはガッツリ読み応えのあるものになるし、まとめ読みする楽しさもあると思う。

—— 世の中がデジタル化とはいえ、アナログと併用して良さを生かす流れは当分続きますからね。それに会報は単なるお知らせではなく、他では読めないフミヤさんの言葉が詰まったコレクションアイテムでもあります。フミヤさんにとって、会報とはどのような存在ですか。

F: 「コミューンの中における、メンバーのための媒体」だね。ファンクラブができた当初、俺は会報をカッコいい雑誌みたいな洗練された雰囲気にしたかったわけ。ちょうど最初のFUMIYART個展をやった頃だし、クリエイティブとかアーティスティックな方に意識が向いてたからね。でも、当時会報の編集長を担当してくれていたプロデューサーが、フミヤそれは違うんだよ、と(笑)。「ファンクラブの会報誌というのは、もっとフミヤのことを身近に感じてもらうためのものであって、そういう雑誌のようにカッコ良過ぎちゃいけないんだ」って。ああ、言われてみればそうだなぁと。さすが出版や編集のプロ。もちろんデザインはちゃんとデザイナーにお願いして、いい感じにしてもらうけれど、伝える内容はファンのためのもの。たしかに、ただクールでアーティスティックなものなら、雑誌を買って読んでもらえればいいわけだからね(笑)。

—— とはいえ初期のデザインは、当時のフミヤさんの方向性に沿って、それなりに尖っていました。文字のレイアウトがぐるぐる回転していたり、背景も文字も原色の組み合わせだったりとアート的で。かつ中身はオフショットや活動の舞台裏を紹介していたので、フミヤさんを身近に感じていただくこともできていたと思います。

F: そうだね。そしてだんだん俺自身も伝えたいことを書く量が増えていって、よりしっかりとした「読み物」にしたいと思うようになった。今はバランスのいい、会報らしい会報になっていると思う。外部の人からもよく、うちの会報はちゃんとしてると言ってもらうことが多い。

マネージャー: 業界内でも、かなりしっかり作られている方だと思います。

F: 「彩事季」も、昔以上に読み応えのあるものになっていると思うし、コーナーも充実してる。「F’s RECIPE」も意外と息が長い(笑)。あれは凝ったメニューというより簡単で真似してもらいやすいレシピだし、コロナ禍で自炊が増えている今、昔のを読み返して作ってみるとか、そういう使い方もしてもらえたらいいよね。

—— そうですね。今こそ読み返していただくと、役立つ情報や面白い発見があると思います。そもそも、音楽からアート、お料理まで載っている幅広さはフミヤさんならではですし。

F: そっか、言われてみればそうだよな。多くのミュージシャンはほぼ音楽活動だけだけど、俺の場合はアートや役者、アーティストや万博のプロデュースとか、いろいろやってきたから、誌面のネタが尽きないというのはあるよね。自分でグッズのデザインや料理もするし、連載小説も書いたし。

—— フミヤさんが、今考えていることや、まだ形になっていないアイデアを最初に言葉にするのが、会報の取材であることも多いと思います。会報と一般メディアの取材で語るのとは、どう違いますか。

F: ああ、全然違うね。外でのインタビューは基本的にプロモーション時期だから、どういうアルバムですか、どんなツアーですか、という話だけになることがほとんど。そもそも今の時代、雑誌で何ページにも渡ってインタビューを受けるような機会は多くないし、ましてや内面を語るようなインタビューは年間でも数えるほどしかない。会報の場合、外側に出しているというよりは内側、内輪に向けている感覚。人間・藤井フミヤとしてのリアルなインタビューや、今考えていることをメッセージとして伝える場が、会報なんだよね。だからFFのインタビューというのは、実は俺にとっても非常に大きいんだよ。

—— そこは今後も軸としていきたいところです。

F: あと、今は会報に加えて「comu comu」という日々の発信の場がある。だから、昔とは比べ物にならないほど、俺の存在は身近になってるんじゃないかな。comu comuの内容は、会報よりもずっと日常寄り。昨日こんなことがあったとか、今日これを食べたとか、俺の何気ない日々の投稿をみんなが楽しみに待っていてくれるのが分かる。というか、待っていてくれる人がいなければ、なかなかこんなに書き続けられるもんじゃないよ!(笑) それに前も言ったけど、コロナ禍で自由に外に出たり人と会ったりできない中、貴重な外部との接点であり、励まし合える場でもある。世の中にはいろんなSNSとかコミュニティがあるけれど、どういう場で仲間を持つかは非常に大事だから、FFというコミューンをぜひ活用してほしい。

—— 全員フミヤファンという共通点や安心感がありますしね。今はライブ会場に行けないという方も、ここでのフミヤさんや仲間とのつながりが精神的に大きなものになっているようです。これからも、Web会報とcomu comuそれぞれの魅力を楽しんでいただきたいですね。

F: そういえばNHK BSの特番放送後、局に感想のメールがかなり届いたらしいんだけど、多くの人のメールアドレスやネームに「ff」が入っていたらしくて、プロデューサーに「“ff”って何なんですか?」という質問があったらしい。とりあえず俺からは「教団です」って言っておいた(笑)。そりゃNHKの人も不思議に思うよね。もちろん俺のイニシャルでもあるけれど、FFメンバーという表現でもあるわけで、もはや秘密結社みたいになってるよな(笑)。まあ秘密じゃなくてオープンでいいんだけど。ファン同士でも、身につけているグッズで「あ、FF?」「FF!」ってアイコンタクトし合えるっていうね(笑)。俺にとっても、実際に長い付き合いで、歴史や時代を共有してきた“同志”。これからも、飽きさせず楽しませるから安心して付いてきてもらっていい、と言い切れるよ。

最終日まで完走したい 〜 コンサートツアー“ACTION” 〜

—— では、進行中のACTIONツアーについて伺います、新型コロナウイルスの影響で延期や中止はあるものの、ここまで進んできました。

F: 業界全体で見ると、うちはかなりやれている方なんだよ。延ばし延ばしだけど、ここまで本当によくやっていると思う。スタッフもバンドも本当に頑張ってくれているし、会場がホールクラスだったからできたというのもある。ライブハウスだったらそもそも無理だし、アリーナクラスも相当大変らしいから。何より、お客さんが入ってくれていることが本当にありがたい! しかも、みんな本当によくマナーを守って、ツアーを続けることに協力してくれているのを感じる。ライブ中に声を出せないのは辛かろうとは思うんだけど、今回は光り物がコミュニケーションツールとして重要な存在になってるね。俺も、4月の中野からHOTAFURUを着けている。最初から盛り上がりやすいし、途中で着けたり外したりしながら演出として使ってる。キラキラ盛り上がっていると、客席も50%とは全然思えないんだよ。ちなみに、FF率が高い日は、光り物の数が多いからすぐ分かるよ(笑)。それにしても、光り物自体は前から使ってたけど、今回ならではの形で役立ったな。

—— 今回ならではという意味では、ツアースケジュールが変わったことで、バンドメンバーの途中交代もありました。当初のギター真壁陽平さんが沢頭たかしさん、キーボードの松本ジュンさんがSUNNYさんに。

F: そう。こういう影響も、今年ならではのケースだよね。真壁とジュンは4月の中野までやってくれた。最終日までやれなかったことをすごく残念がってたけど、今回一緒にやれてよかったよ。引き継ぐ二人は、もともとF-BLOODツアーでお願いしていたメンバー。いぶし銀な感じでカッコいい。同じ曲でもバンドの音が変わったことは、俺にとっても新鮮で楽しいよ。まあ、今また感染者が増えて雲行きが怪しくなってきたから、どうなるのか見えないけどな…。引き続きお互い気を付けながら、なんとか最終日まで完走したい。

—— 時間軸が遡りますが、3月に放送されたNHK BSのスペシャル番組は大きな反響がありました。

F: そうだね。俺も周りから「見たよ」という連絡をかなりもらった。いやー、この年になって、あれほど歌に特化したスペシャル番組をやってもらえるなんて、かなり貴重でありがたいことだよ。自分でも見てみたら、やっぱり今の年齢で今の時代にオンエアされるのがよかったんだなと思えた。芹澤さんと売野さんとの共演も、コロナ禍ならではのセットリストでツアーをやると決めたからだし。いろんなタイミングが噛み合ってこその、“今”なんだろうね。

第二弾への期待 〜 十音楽団 〜

F: ACTIONが終わると、今のところ秋から十音楽団の第二弾を予定している。前回でアイデアを使い果たしたんじゃないかっていうぐらいだったけど(笑)、一度やってみたからこそ新たに挑戦できることもあるしね。またあのメンバーが揃ってできることも楽しみで、自分でも期待してる。現時点ではまだ方向性は決まっていなくて、どんな風にしようか考えているところ。とにかく、まずセットリストありきだな。前回もそうだったんだけど、まず選曲をしてから、シーンを作っていき、そこに合う言葉をはめこんでいく感じ。あくまでコンサートだから、映画のような完璧なストーリーではなく、章立てのような流れを作る。ちなみに選曲という点では、今度は新たにチェッカーズナンバーを加えることも考えられる。あと、最近はカバー曲を歌う機会も多いから、そういうものを取り入れてもいいのかもしれない。

マネージャー: せっかく楽器陣が多いので、やろうと思えばいろいろな曲がやれると思います。

F: そうだよね。そう考えるとかなりアイデアが広がって、選曲の段階から面白いことになるかも。他にも、ブロックごとの間で詩を読む部分をどう作るか。例えば詩人の方とか誰かとコラボすることもできなくはないんだろうけど、俺はあくまでポピュラリティーのある言葉で、分かりやすく、届きやすく、次の歌への流れで言葉を並べる。となると、やっぱり自分で書いた方がいいんだろうなぁ、とかね。でも詩集を読んでいると、やっぱり日本語ってすごい、詩ってすごい、面白い!と思わせてくれるし刺激になる。そうやって常にいろいろなものに触れてインプットしつつ、準備していきたい。コロナの状況はまだ読めないけれど、十音楽団はゆっくり座って観てもらう公演だから、今のご時世にも合っていると思う。

女性の神秘や美しさを女神化 〜 FUMIYART展 〜

—— 浜松や福岡でのアート展開催が決まりました(「Fumiyart、未公開作品を加えて今年も各地へ!」参照)。来年も各地で続くようですね。

F: そう。おかげさまで続いていく。代官山で始まってから、今でもう一年半ぐらいになるのか。各地でゆっくり、作品を間近で楽しんでもらいたい。初期から新作まで、デジタルもアナログもあり、線画もあれば切り絵もあり、針金で作ったアートまであるから面白いはず。基本的には女性をモチーフにしている作品が多いけど、俺はもともと女性を女神化している傾向がある。決して淫靡とか卑猥な感じではないんだよね。あくまで神秘や美しさを感じているからこそ、モチーフとして描き続けている。

—— そうですね。セクシーではあっても、あくまで女性を神聖なものとしてリスペクトし、大切に描かれているのが分かります。

F: だからこそ女性にも楽しんでもらえるんだと思う。この感覚は、俺が昔から宗教画が好きだったというのもあるんだろうな。宗教画のほとんどが、神様や女神や天使だから。前に話したギャラリーも準備が進んでる。まだ、どういう形でやっていくかは決まっていないんだけど。昔、広尾のFUMIYART GALLERYや中目黒のSPACE FORCEをやっていた時とはちょっと違うスタンスだな。あの時もがむしゃらに本気でやっていたけれど、より大人な本気度というか、アートの世界やギャラリーの仕組み、近年の流れも知った上でやる。なるべく、若いアーティストの活動を応援できるような場になればいいなと思ってる。

—— アートの書籍も発売が決定したそうで(「All About FUMIYART 藤井フミヤの想像新世界」参照)、今後のさまざまな展開を楽しみにしています。

F: だって俺、まだこれからいろんなことやるからね! アートもギャラリーもそうだし、他のことも。音楽業界におけるキャリアや年齢的には“重鎮”っぽい扱いにもなりがちだけど、アートにおいてはまだ何者でもないし。いくつになっても常に興味のあることを勉強したり、技術を磨いたりし続けている。さすがに若い頃の行動力とは質が違うかもしれないけど、何もしなくなることはないからね。引き続き、 “藤井フミヤ”を一緒に楽しんでもらえればと思ってるよ。

※インタビュー以降に内容に変更が生じている場合があります。ご了承ください。