藤井画廊 第11回

このたび阪急メンズ大阪で、アート作品を展示することになった。ただ、同じ時期に滋賀の佐川美術館でも個展が開催されるため、展示できる作品がほぼない。となると作品を新たに作る必要が出てくるが、十音楽団のツアー中で制作時間がとりづらい。
そこで、昔のCG作品を出力して展示することにした。FFのみんなは知っている作品ばかりだろうけれど、20~30年前の物なので今の若い世代はほぼ見たことがないはずだ。というかFUMIYARTのことも知らないだろう。となると、今の時代と世代にマッチする作品はどれだ? 阪急に来るようなファッション好きのメンズが好むような作品は? 自分の中でそのようにコンセプトを決め、約20点を選んだ。

その中に、1995年に制作した【SHRINE】というシリーズの作品がある。当時は建築に興味があり、建築の本ばかり買っていた。そこから「宇宙に浮かぶ未来建築」というテーマでCG作品を作っていくことになる。人間が宇宙に浮かぶ建築を造るとしたら、やはり地球上と同じく、宗教建築こそが巨大で壮大なものになるはずだ。祀られる神は、やはり太陽だろう。日本の神道でも太陽が神なので、一連のシリーズのタイトルを「SHRINE(神社)」と付けた。

当時のプリンターは、当然今よりも性能や精度が低い。同じ作品を出力しても色合いが全然違うし、用紙サイズにも限界があったので現在のように大きく出力することはできなかった。当時は作品を大きく見せるために、作品とフレームの間に入るマットの幅を広くして、そこに落款を押して仕上げた。当時、歌川広重の版画が好きだったこともあり、落款やグラデーションの背景もその影響だ。今回展示する【SHRINE】シリーズは、額装をプラスチックのボックスにしたので、そのマット部分と落款がない。また新しいタイプの【SHRINE】となった。

今回、久しぶりに【SHRINE】シリーズの作品と向き合ってみると、不思議なことに、無機質なはずの建築物が生命体のように見えてきた。まるでエヴァンゲリオンの“使徒”のような、謎の生命体。もちろん作品を作った当時は、エヴァも使徒も知らない。今は頭の中にエヴァという知識が加えられていることで、同じ作品を見ても違う視点と発想が生まれたのだ。使徒とは不思議な生命体であり人類の敵。生物的なものもあれば無機質な多角形のものもあり、そのデザインは奇抜だ。【SHRINE】は、今までまったく生物には見えなかったし、そんなことを思ったこともなかった。だからこそ今回の感覚は自分にとっても不思議な現象。まるで、彫られたばかりの白木の仏像が何十年もすると茶色になり、何かが宿るような感じ。

そう考えると、今回の展示では細かい説明は必要ないのではないかと思えた。自分には生命体に見えるし、今の時代、似たように感じる人もいるかもしれない。あるいは、さらに別の発想があるかもしれない。【SHRINE】を今の世代が見て何を感じるかは、自由な方がいい。


『ART of FUMIYA』展示情報

 会期:2022年4月20日(水)〜5月10日(火)
 会場:阪急メンズ大阪3F コンテンポラリーアートギャラリー 他

 詳細は 阪急メンズ大阪ホームページ にてご確認ください。