FF SPECIAL INTERVIEW

知り合いが「会場の“フミヤ愛”がすごい」って。
そりゃそうさ、俺たちは長いんだから!

昨年からの十音楽団ツアーが好評を博している中、
今年は還暦ライブ“RED PARTY”にF-BLOODツアー、さらにアルバムリリースも決定!
ますます大充実の一年となりそうな寅年・年男のフミヤ。
2022年も、ファンへの想いをさまざまな形にして届けてくれそうだ。

コロナになってる場合じゃない
〜新型コロナウイルス感染で感じたこと〜

———1月末はコロナ感染で大変でしたが、幸い軽めに済んでよかったですね。

フミヤ(以下F):俺も、いよいよ近くに迫ってきているのは感じて気をつけてきたけれど、ついにかかってしまった。最初は、単純に寒かったし風邪だと思ったんだけどねぇ……。十音楽団の後半最初の大阪2本が延期になってしまったことは、本当に申し訳なかった。ただ、もしツアーの途中や遠征先で発症していたら、もっと大変なことになっていたと思う。陽性と分かって、まず、自分が誰かに感染させていたらいけないっていうことが心配だった。すぐに直近で会った人たちに連絡して状況を聞いたら、確認できた範囲では誰にもうつしていなくてホッとしたよ。一番危険だったのは、FFのYouTube配信を目の前で撮影してくれていた監督やマネージャーだったけど、それも大丈夫だった。やっぱりマスクをしてたからだろうね。もしかしてテレビ局で感染したのかな?とも思ったけど、番組の出演者が休まず出演していたから「あ、じゃあ違う。あの時はまだ感染していなかったんだ」と判断。全部そうやって消去法で確認した。あと、芸能人は感染したことが日本中に公表されてしまうからね。もちろんツアー中だし発表の必要もあるんだけど、立場的に報道されてしまうということは、なかなか辛いものがあった。まあ、あまりに芸能界の感染者も多いから、最初の頃ほど目立つニュースではなくなっているけど。報道を見て、知り合いが連絡をくれたり、いろいろ送ってきてくれたりもしたよ。しかし厄払いに行って、その夜に発熱するなんてなぁ……(苦笑)。

———せめてデルタ株でなく、軽症で済むことが多いと言われるオミクロン株だったことは不幸中の幸いというか。

F:そうなんだよ。デルタの時期だったら、もっと症状がきつかった可能性が高い。今回は最初の2日ぐらいは少しだるかったけど、あとは少し咳や鼻炎のような症状があったぐらいで、体力もあまり落ちなかった。一応ずっとベッドルームで隔離していたけどね。あと普通の風邪と違って、家の中で触った場所や飛沫が飛んだ可能性のあるところを、いちいちアルコール消毒しなきゃならない。鼻をかんだら自分用のビニール袋に厳重に捨てるとかさ。それこそ、暇だから映画を観るしかないじゃん。で、泣くじゃん。ティッシュで涙を拭いたら「あ、これもウイルスか」って。感動して流した涙までもが(笑)。かなりの時間、映画を観て過ごしたけど、さすがに内容が変わっても「映画を観る」という行為に飽きるもんだね(笑)。他には、頼まれていた絵をちょっと描いたり、作詞をしたりもした。幸い家庭内クラスターが起きなかったから、毎日家庭料理を食べられたことはありがたかった。嗅覚は落ちたけど味覚は問題なかったから、もりもり食べられたし。ホテル隔離とか一人暮らしだと、食事の面が辛いだろうね。家族も濃厚接触者だから買い物にすら行きづらかったけど、普段から家に食材が豊富にあったから、そんなに困らなかった。コロナも後遺症さえなければ普通の風邪になり得るんだろうけど、まだステルスオミクロンとか来てるし落ち着かないからね。基本のマスク、手洗い、消毒、換気など、引き続き気持ちを引き締めて過ごすよ。

———そして、東京オペラシティからすぐにツアーを再開できましたね。

F:オペラシティが終わるまでは気持ち的に落ち着かなかったから、無事にできてほっとしたよ! 当日は少しだけ鼻声っぽかったけど、鼻は通っていて喉の調子もよかったし、声もよく出た。歌うのは12月25日以来だったけれど、全然問題なくできた。内容が十音楽団だったのもよかったと思う。あんまり激しいライブだと、できなかったかもしれないし。あと隔離中にあらためてツアースケジュールを見直して、後半の方が本数がだいぶ多いという事実に気付いた。「俺、コロナになってる場合じゃないじゃん!」って(笑)。

伝えたいものを、
ちゃんと伝えられている
〜十音楽団〜

———そんな十音楽団ツアーも中盤まで来て、だいぶ熟成されているかと思います。

F:楽器陣とは相変わらず阿吽の呼吸でやれていて、気持ちいいよ。変化としては、セリフをほんの少し微調整したところがあるぐらいかな。自分が伝えたいものを、観る人にちゃんと伝えられているという感覚がある。座席も、ツアーが始まった時点ではコロナで客席50%制限があったけれど、それが解禁になって7割8割と徐々に戻ってきて嬉しい。クラシックと同じで座って静かに観てもらうコンサートだから、わいわい密になって騒ぐようなリスクもないしね。ただ、その分、客席の反応は拍手しかないから、こっちはSNSとか見ないと感想が分かりづらいんだけど(笑)。とくに最初のうちは、いろんな形でいろんな人の反応を見ながら、「ああ、なるほど。そういう風に感じるんだ」とか「そこは俺もそう考えていた」という風に、必要なら微調整しつつ完成形に持っていった。この間も平山雄一さんがインタビューしてくれて、「観ていて、あっという間だった」と言ってくれたから、よっしゃ!と思ったよ。

———あの引き込まれていく感じは、普段のライブと違う十音楽団独特の感覚ですよね。次は何だろう?どう来るんだろう?と、目が離せない。

F:そうなんだよ。演劇のような細かい物語があるわけじゃないけれど、場面や流れがあるからね。最終的にラストはどこに向かっていくんだろう?という前提で観てもらえる。その点でも、初めて俺のコンサートを見る人も入りやすい。あと、演奏自体は変えていないんだけど、サウンド的には客席への音の出し方を少し変えて、さらに聴こえ方がよくなったらしい。俺らはステージにいるから分からないんだけど、さらにいいサウンドで味わってもらえているはず。

———大阪の振替公演は5月2日・3日に決まったので、ゴールデンウィークを利用して遠征いただくのも楽しそうですね。

みんな集合!のお祭り
〜還暦記念ライブ“60th BIRTHDAY RED PARTY”〜

———そして7月11日、還暦を迎えるスペシャルな武道館ライブです。

F:いよいよ来たね〜、還暦のRED PARTY(笑)。これはもう、みんな全国から集合!というFF祭り。バースデーライブの、さらにスペシャル版だね。ドレスコードはもちろん赤。何でもいいから、赤い服またはアイテムをどこか1点でも身に着けて来てほしい。グッズもほぼ赤いアイテム(笑)。なにしろ、この日限りのお祭りだからね、シャレだよシャレ(笑)。ライブの内容は、やっぱり一緒に盛り上がることが最優先だね。チェッカーズの楽曲もやるし、そのために尚之もバンドに入ってもらう。来年のデビュー40周年に向けてもいろいろ考えているんだけど、ある意味7月11日がその先取りというか先出しのような感じで、リンクした内容になるかもしれない。

———武道館という、フミヤさんにもファンの皆さんにとっても大切な場所でのライブ。それこそ、バンド時代に一緒にライブを見たお友達や久しぶりのFF仲間と、同窓会的に楽しんでいただくこともできそうですね。

F:そうだね。ぜひ周りの人を誘ってみんなで来てほしい。ミュージシャンにとって、ファンとバースデーライブで過ごせるというのは最高に幸せなこと。しかも60歳という節目。本当に、みんなのおかげでいい人生になっているからね。そういえばこの間、俺のライブを初めて見た知り合いが、「会場の愛、お客さんの“フミヤ愛”がすごい」って驚いてた。「そりゃそうさ、俺たちは長いんだから!」って(笑)。そんな長い付き合いのファンのみんなと、節目のバースデーを過ごすのが、すごく楽しみなんだよ。

———コロナで誰もが、「また今度」が当たり前にあるわけではないと痛感しました。今回は、節目をリアルにお祝いできる貴重な機会となりますね。

60代という大事な10年に入る感慨
〜還暦を迎えるということ〜

———今年は年男で還暦なわけですが、フミヤさんにとって還暦とはどういう意味や想いがありますか。

F:俺にとって還暦を迎えることは、60歳という1年だけのことでなく、60代という10年間に入るということ。これがなかなか感慨深いものがある。その10年をもって70歳になるわけだからね。ここから10年で世界も大きく変わるだろうし、自分の見た目もだいぶ変わると思う。前の彩事季でも書いたけど、完全に思い通り好きなことできるのが、あと10年ぐらいかなと。もちろん、それ以降も歌うことはできるし、いろいろやると思うけどね。いろんな意味ですごく大事な10年になるだろうし、すごく短く感じるだろうなとも思ってる。あと、世間的な扱いも60を過ぎると変わってくる気がするんだよ。さすがにまだ電車で優先席を譲られることはないと思うけどさ(笑)。例えばテレビ番組に出演するとしても、扱いが年長の大御所みたいな枠になりそうな。梅沢富美男さんとかと同じ扱いっていうか(笑)。

———そこはなんというか、またちょっと違う枠だとは思いますけど(笑)。社会全般でも、今の60歳・70歳像は、昔の高度成長期だとか終身雇用で60歳定年退職の時代とはまったく変わっていますが、たしかに古いイメージは枠として残っているのかもしれませんね。

F:そうなんだよ。そういうことを、よく分からないながらもいろいろ考えるのが、還暦を迎えるってことなんだろうね(笑)。60になるまでは、まあまあ「その歳に見えませんね」とか「若いですね」って言われ続けてきたけど、ここからはさすがになぁ。70になった時に、どれだけいぶし銀になっていけるかだね。ビジュアルも、やっていることも含めて。正直、ここからどういう未来や夢を見据えているかというよりも、まず健康しかない。健康な上で何をやりたいか、っていうことだよね。別にここからすごいビジネスで儲けたいとかないし、がむしゃらに働く年齢でもない。もちろん今もやるべきことはきちっとやっているし、俺のポジションや役割があるから暇ではないけど、昔の方が時間に追われていたし、いっぱい抱えていたね。今は、そこまで同時進行することは多くはない。今年は還暦、来年は40周年と、アニバーサリーイヤーが続くことになる。すでに来年まで大体のビジョンが浮かんでるし、こんな感じになるなというのが見えてきている。ただ、大きな予定がたくさんあっても、60歳の今年は、なるべく月1回ぐらいは2泊3日程度の旅行ができる余裕は持ちたいと思ってる。日本は1時間半〜2時間台で、ほぼどこでも行けるじゃん。「よし、今月は鹿児島の温泉に行こう」とか、気軽に行きたい。コロナ禍で仕事の仕方や時間の使い方が変わったことで生まれたゆとりを、大事にしていきたいね。

今回のF-BLOODは「ゆるい」?!
〜F-BLOODツアー〜

———10月には待望のF-BLOODツアーです。2020年4月にアルバム「Positive」をリリースして、直後のツアーが中止となっていました。

F:コロナでさすがに無理な時期だったからね。ようやくリベンジできる。F-BLOODと言えば、この間また「朝だ!生です旅サラダ」に出演させてもらったんだけどさ。ありがたかったのは、コロナ禍で過去のF-BLOODのロケを何度も再放送してもらえたこと。少し前に俺が釧路方面に行った時、どこ行っても「今回は、弟さんはいらっしゃらないんですか?」って聞かれたんだよ(笑)。それほど、尚之と俺が旅する映像が印象に残っていたらしい。知り合いからも「見たよ」「いいですね」とか連絡が来るんだけど、「この年齢で、兄弟であんなに仲良く旅ができるってうらやましい」「見ていてホッとする」とも言われる。どうやら俺ら二人のゆるさとか、のんびりした感じがいいらしいんだよね。自分たちでは分からないんだけど(笑)。

———たしかに、ストレスの多いコロナ禍で、“癒し”を求めたくなる感覚はありそうです。

F:だとすると、今度のF-BLOODは、ちょっとゆるめな雰囲気でもいいのかもしれないと思ってるんだよ。ひょっとすると、「旅サラダ」を見た全然別の層のお客さんが、“藤井兄弟らしさ”を楽しみたくて来てくれる可能性もなくはない(笑)。F-BLOODは、ライブハウスでイエーイ!って盛り上がるイメージがあるじゃん。ロック、骨太、バンド、といったコンセプトで。でも今回はあえてそれを変えるべく、もはやツアータイトルから「ゆるい兄弟」みたいなのにしてもいいんじゃないかっていう気さえしてる。ツアーポスターやチラシも、バリバリのロックな写真ではなく、「ああ、あの旅してた二人ね」と思えるものにするとか。なんなら兄弟二人で将棋を指してる、とかさ(笑)。

———将棋とは渋いですね!(笑) 以前から、ゆくゆくは二人でとお話されていた“赤提灯ツアー”に一気に近づくというか、それも超えているような。

F:だからもう、響きとしてはF-BLOODというより藤井兄弟って感じだよね。もちろんアルバム「Positive」を軸に、しっかり音楽を楽しんでもらうんだけど、雰囲気としてはそういうゆるいのも意外といいんじゃないかっていう。まだ、どうまとめるか分かんないけど(笑)。

———実際どういうツアーになるのか、これは気になるところです。また次号で詳細を教えてください。

聴いてくれるのは一番のファン
〜2022年アルバム〜

———コロナでの隔離中に作詞もされていたとおっしゃっていましたが、今年のリリースはどのような予定でしょうか。

F:今年は、秋ごろアルバムをリリースできたらと思ってる。これが次の仕事だね。進行中の十音楽団は、すでに完成系を届けるという行為であって、何かを新たに創るとか考える段階ではない。そろそろゼロから生み出すアーティストとして、次の創作物に向けて思考を切り替える時期。すでに曲はいろんな人にお願いしていて、いい曲が出揃っているから、充実したアルバムになると思うよ。作詞モードに入ると、ツアーや旅に持って行く本も、そこに向けたものになっていく。ただ真っ白い部屋で詞を考えるというよりは、何かを見たり読んだりすることで、何らかのキーワードから連想を広げたり、感情や記憶が引き出されたりしていくから。そうだ、久しぶりに作詞のためにホテルにでも篭ってみるかなぁ。パソコン1台と、ちょっと休む時に読む本を持って。ホテルの何がいいって、電話が鳴ったり人に呼ばれたりして作業を中断されることが一切ないこと(笑)。ただ、すでにツアー中だから歌詞を書くためだけに1週間確保とかはできないんだよなぁ。ツアー先で一泊多く滞在するぐらいならいいかも。

———先日のYouTube配信で、あと何枚アルバムを出せるか分からないから大事にしたいとおっしゃっていたのが印象的でした。

F:そうなんだよ。ここからさらに、1枚1枚大切に作って届ける意識がある。そのためには当然、1曲1曲が大切になるわけで、歌詞もより丁寧に書いていきたい。人に歌詞をお願いすると、自分の違う面を引き出してもらえて面白い。ただ、その歌をコンサートで歌う機会は少なくなってしまうんだよね。セットリストを作る時は、そこに伝えたい想いや世界観があるわけで、そうすると自分が書いたものが中心になる。自分の言葉を大切にして、ぐっとくるようなものや面白いものを書きたい。常に、聴いてくれるのは一番のファンだからね。想像をかき立てるものや、記憶を呼び戻したり、あの頃に一瞬で戻れたりするもの。つまり、みんなにとっての“青いレーベル”になるような歌がいいんじゃないかとは思ってる。今年のアルバムは、全体的にスタンダードラブソングみたいな雰囲気になるんじゃないかな。

———楽しみです。また制作が進んだら詳しく聞かせてください。

※インタビュー以降に内容に変更が生じている場合があります。ご了承ください。