今回のシングルは、完全に新しい時代のトライ
ニューシングル「水色と空色」、またひとつフミヤの名曲が生まれた。
還暦ライブ“RED PARTY”を来月に控える中、アルバムやF-BLOODツアーの準備も進めながら、連日のメディア出演や取材に大忙しのフミヤ。
梅雨入り前の東京、会報のインタビューではリラックスした笑顔でFFメンバーへの言葉を届けてくれた。
———新型コロナウイルスもだいぶ落ち着いてきて、久しぶりにフミヤさんがマスクなしの状態でインタビューカット撮影できて嬉しく思います。
フミヤ(以下F):本当に、ようやく落ち着いてきたな。このまま収束するといいね。コロナのことは、いつか「あの時は世界中で大騒ぎだったな」と笑い飛ばせるようになるのは分かってる。でも、経験してみないと分からないことだらけだった。昼間の渋谷に人っ子一人いない景色とか、見たことなかったし。F-BLOODツアーが中止になった2020年の時点で「来年の今頃は元に戻っているから、それまでしばらく我慢」みたいな感じだったけど、結局2022年の今も完全には終わってないからね。長いよな。
どこにもないエンターテインメントを創り出せた
〜十音楽団ツアー完走〜
———そんなコロナ禍で行われていた十音楽団ツアーが、一部公演の延期はありながらも最終日を迎えることができました。
F:とにかく最終日まで無事完走できてよかった。11月から5月まで、長かったなー。コロナ禍でACTIONと十音楽団をやってきたけれど、客席が100%使えるようになった時期に十音楽団というのはタイミングがよかった。もともと静かに楽しんでもらうタイプだから、違和感なくやれたし。長いツアーでメンバー間にも連帯感が生まれて、みんなで一緒に過ごしたサマースクールの終わりのような寂しさがあるよ。
———十音楽団は、初回で出し尽くした上での第二弾でしたが、やってみていかがでしたか。
F:初回は大成功だったけれど、すべてが手探りだったからね。やっぱり2回目はスムーズだったし、演奏も照明もすごくバージョンアップできた感じがある。やってみて手応えがあったし、リピートしてくれるお客さんが多かった。いいコンサートであり舞台であり、どこにもないようなエンターテインメントを創り出せてよかった。語りの部分と歌詞の両方でストーリーを紡いでいくから、初めて俺のコンサートを見る人でも、歌詞を含めてしっかり聴いてもらえているんだろうなと思う。始まったら最後まで途切れず、十音楽団の世界に浸ってもらう感じで。
———やはり他のライブとは完全に別物で、2時間の舞台作品として完成していました。ファンの皆さんには、ぜひBlu-rayで細部までじっくりご覧いただきたいですね。ちなみに、十音楽団の第三弾はありそうでしょうか?
F:2回やってみて、第三弾もやれるだろうなと思ってるよ。ただ、いつになるか分からないし、同じメンバーで集まれるかどうかも分からないけどね。いろんなタイミングが合って集まれたら集まりたい。それに今年はアルバムを出すし、十音楽団に使える曲は増える一方だからね。あとはどういうテーマでやるかだけ。第三弾をやるつもりで過ごしていれば、アンテナが立ってアイデアをいろいろ集めておけると思う。
前世でも歌っていたかも
〜輪廻転生〜
———十音楽団ではいくつか繰り返し出てくるキーワードがある中で、序盤に「Cry for The Moon」で輪廻転生の投げかけが出てきて、以降の曲にも繋がっていくのが印象的です。ファンの方も「自分もフミヤさんと何度も出会っているとしたら?」と思いながら聴かれていると思います。
F:そうなんだよ。これだけの付き合いとなると、前世があるなら過去にもどこかで出会っていた可能性はあるよね。「Cry for The Moon」は、今回ぜひ入れたかった曲。過去にほとんどやったことがないし、ファンへのプレゼント的なチェッカーズ曲を入れたかったから。その歌詞から十音楽団のストーリーに繋げていくと、これは輪廻転生だなと思ったわけ。若い頃、横尾忠則さんなどの影響もあって輪廻転生という考え方にハマった時期がある。今はある程度落ち着いたけど、そういう世界があって欲しい、あるといいなとは思ってる。
———その流れから、質問コーナーへのメールでも「フミヤさんは前世で何をしていたと思いますか」というような質問を複数いただきました。もし前世があるとして、ご自分でこうだったかもと思うことはありますか。
F:やっぱり、前世でも歌ってたんじゃないかなぁとは思うんだよね。ひとつ前の人生なのか、もっと前か分からないけど、どこかで歌ってたような気はする。ただ、俺は日本人だったことが多い気がするんだよ(笑)。ヨーロッパとかユーラシア大陸の人だったというのは、あんまり想像できないから。でもまあ、それは天から生まれる時に自分で好きな場所を選べるシステムだったとしたら、の話だけど。だって一度生まれたら、ほぼそこで80年ぐらい生きるわけじゃん。俺だったら、どうせ1回の人生を過ごすなら、知り合いがいないイースター島よりは、前も一緒だった仲間がいる日本を選ぶと思うんだよね。もっと言えば火星に生まれてもおかしくないけど、火星の苔とかに生まれたら、苔のまま4千年とか生きなきゃいけないかもしれないじゃん!(笑) いわゆる地球以外の宇宙人みたいな存在は、とっくに進化して肉体は持ってないと思う。でも、よその星に行っても砂漠みたいだし、地球なら水があって植物も動物も人間もいるから、きっと地球で人間になるのが一番面白いはずなんだよ。宇宙でも人気のテーマパークみたいな感じで。それに、あえて肉体を持たないと、見たり聞いたり食べたり触ったりできないし何も生み出せない。だから俺も地球を何度もリピートしてるんじゃないかな。で、まず魂が地球で人間になることを目指すとして、次は、地球のどこに生まれようかということになる。もしかすると、浮遊している魂の状態なら、人間の中に入っている魂が透けて見えたりするのかもしれない。「あっ、あの人の中に入っている魂は、前に別の人だった時に会ったことがある。じゃあ、またあの人の近くに生まれよう」みたいな。同じ時代に生きてるということは、生まれ変わりの世代もだいたい重なるわけじゃん。ずれるとしても20〜30年前後する程度とか。だから、天で友達と再会して「あっ、その節はどうも」「じゃ俺、また生まれるわ」「え、行くの? じゃあ俺も行こうかな」で、また出会う。そういうこともあるのかもしれないし。
———もしかしたら、仲間と一緒に外国に生まれていたこともあるのかもしれませんよね。例えば今回は日本で、ひとつ前はローマとか。フミヤさんは昔から歌詞に「エンジェル」「天使」「マリア」など出てきますし、西洋の宗教画もお好きなので、ヨーロッパもなくはない気もしますが。
F:ああ、確かにそれはあるかもね。別にクリスチャンでもないのに、やたらキリスト教の世界は好きだからな。十字架のモチーフも好きで、身に着けたりアートでも描くし。不思議と俺のバックグラウンドとしてあるんだよな。島原あたりはちょっと縁がある土地なのかなと自分でも思うんだよね。そういう「なんとなくそんな感じ」とか「こうかもな」って思うことはある。宣教師をやって歌っていたとか、あり得るかもしれないし。教会は歌や音楽が欠かせない場所だからね。
———布教は字が読めない人のために歌や絵で伝えたりしますからね。歌と絵とLOVE & PEACE……フミヤさんが今されていることそのままじゃないですか(笑)。
F:本当だ。今やってることとまったく同じじゃんなー!(笑) FFメンバーの中には、もしかしてその時代に教会で歌を聞いていた人がいたりするのかもしれないね。あとは、今これだけの単位のコミュニティーと考えると、どこかの藩の偉い人だったのかもしれないし(笑)。まあ、とにかく今回の人生では「藤井フミヤ」であり、この形で出会っている。前世があると仮定したら、想像はいくらでも膨らむな。でも、こればっかりは生きてるうちは答えが分からないからなぁ。
「半透明」な世代の空気感
〜シングル「水色と空色」〜
「水色と空色」
———6月8日発売のシングル「水色と空色」、すでに先行配信が開始となりました。サウンドプロデュースは亀田誠治さん。
F:これは、永山瑛太さんと川栄李奈さん出演のデジタル短編映画「半透明なふたり」の主題歌になった。監督は、auのCM「三太郎シリーズ」もやっている浜崎慎治監督。俺はそこに主題歌という形で参加させてもらうことになった。今回の企画がすごくユニークなのは、普通のスクリーン上映ではなくYouTubeで公開されるということ。ちゃんとお金をかけて短編映画を作るのに、それを誰でも無料で見られるんだよ。完全に新しい時代のトライ。こういう企画があるけどどうします?ってことで、やってみようと。関係各社みんな初の試みだし、正直どういうことになるのか全然分からないんだよ(笑)。映画の内容も、顔面にハンデを負っている主人公を中心に、今時のいろんな問題が絡んでくる。いろんな意味で話題になる作品なんじゃないかな。
———十音楽団のメンバーでもお馴染み、岸田勇気さん作曲の「水色と空色」。歌詞が抽象的で、声とピアノがこちらに寄り添うように近く聴こえて、穏やかで優しい時間が流れます。
F:“水色”と“空色”は、ほぼ同じ色だけれど呼び方が二つあるとも言える。あるいは、似たもの同士の二人という受け取り方をすることもできる。“空子と水男”みたいな(笑)。曲は、2年前にアルバム用に出してもらっていた中でストックしていたもの。映画の主題歌になったことで、映像に乗せて流すならこのメロディーがいいよねっていうことになったんだよ。映画が芥川龍之介の「鼻」をモチーフにするとは聞いていたんだけど、脚本とリンクし過ぎてもよくないから、こっちはこっちで普通にラブソングを作ることにした。だから物語とは関係なく、メロディーから浮かんだインスピレーションだけで書いている。ただ、歌詞とメロディーができた段階で向こうに聴いてもらって、映画のタイトルが「半透明なふたり」に決まったんだよ。それで俺も歌詞に入れていた「半透明」という言葉がもっと前面に出るように少し書き直した。だから、結果的に映画と歌がリンクする形になったね。歌詞は、聴いた人が自由に受け取ってもらえるように、短編小説のような感じで当ててみた。今時の若いアーティストが歌う歌詞をオファーをされて書くとしたら?という設定で、作家に徹して書いている。この年齢まで来ると、ある程度人間が出来上がってしまうけど、この歌では、もっと若くて不完全な人間を描きたかったんだよね。今の若い世代って、好きなものに集中するオタクっぽさもあり、ネットやSNS社会ならではの人間関係やいじめもある。国には何も期待していないあきらめや、浮遊しているような感じもありつつ、一方で起業するような勢いを持っている人もいたりする。目立ちたがりではない、むしろ目立ちたくない、さらっと抜けていきたい人種という印象。日本人は、コロナが終わっても当分マスクをし続けそうだよね。今や若い子も「もう恥ずかしくて外せない」とか「顔を隠せるから楽」とか言ってたりする。それも心理的なものが大きそう。「半透明」というのは、そういう世代の空気感を出したかったというのもある。曇り空や雨の描写をしているけれど、最後は晴れ間に向かう感じになっている。抽象的なので、それぞれ自由に感じてもらえたらいいなと。
———フミヤさんは、そういう若者像や社会背景を、普段どういうところで見て感じているのでしょうか?
F:うちの子どもたちは、もう若者というより大人だからね。社会の中での若者像は、ドラマや本、あとはアートにも感じる。例えば20代で芥川賞をとっちゃう人とかいるじゃん、そういう若手の文章から感じることも多いよ。あとは、流行りの歌も社会を反映しているよね。YOASOBIとか聴いてみて「ああ、今の若い子はこういうのを聴いて感じ入るものがあるんだ」と思ったり。
———短編映画は永山瑛太さんや川栄李奈さんが出演ということで、歌も広い層の方々に届きそうです。
F:そうだね。映画を見た人が、歌にも興味を持ってくれると嬉しい。藤井フミヤを知らなければ、「これ、誰だろう?」となる。声では外見も年齢も分からないわけだし、音楽って本来それでいい部分もあると思うんだよね。今日はこの曲のミュージックビデオを撮影してきた。俺としては、せっかく若い子をイメージして書いたんだからオッサンが歌ってる絵とか要らないでしょ、と思ってたんだけど(笑)。まあ、他に流せる映像がないから撮影してきた。とにかく短編映画を通して、「水色と空色」がいい具合に世の中に浸透して、多くの人に聴いてもらえたらいいなと思う。FFのみんなは、ぜひCDも手にしていただければ。
「未完成タワー」
F:これはまた「水色と空色」とは全然違うタイプ。歌い方もがらりと変えているし、別のバンドの曲みたいな感じ。メロディーが完全に応援歌だったから、亀田さんには、スタジアムクラスの会場でみんなで手を上げて歌うような、壮大なロックに仕上げてもらった。作曲は「Another Orion」や「ALIVE」の増本くん。ちょうどオリンピックとパラリンピックの間の時期で、スポーツイベントのテーマソングに合いそうな曲だと思ったんだよね。ただ、オリンピックだと規模が大きすぎるから、箱根駅伝のテーマソングをイメージして作ってみた(笑)。最後にチームの選手達が、わーっと駆け寄るようなシーンも含めて。
———歌詞にある「駆け上がろう」とか「走り出した」という表現について、今のお話を聞いて納得です。あと、「落ち込む時間長いほど明日が無駄になる」という部分も響きますね。
F:そうなんだよね。これは俺もよく思うことなんだよ。つまり自分に言い聞かせる言葉でもある。人生、失敗して落ち込むことなんて誰にでもあるよ。俺もある。でも、気分を切り替えて前に進むのか、その場で止まるかは自分で選ぶことができるわけじゃん。なかなか忘れられなくて、ぐじぐじ考えてしまう時は、自分に「やっちゃったことはしょうがない! もう終わったことだからいいじゃん」と言い聞かせる。落ち込んだまま完全にストップしてしまうのは、本当に人生の時間がもったいないからね。「あの時の失敗があるから今の俺がある」とか「次はどうにかなる、頑張ろう」と思うことで過去を変えていくしかない。だってほら、未来が過去を変えるんだからさ。
———止まることが必要な時もあるとは思いますが、進むか止まるかは自分で選択できるという視点は大事ですね。ちなみにフミヤさん自身は、いわゆる人に元気を与える側の人ですが、周りには弱さを見せられる方ですか? それとも、あまり出さない?
F:そう。俺は、立場的には弱音は吐いちゃいけないんです(笑)。でもね、もともとあんまり愚痴を言わないし、怒ることもないんだよね。無理に抑えてるとかじゃなくて、基本的に自分で消化できる。落ち込むことがあっても「しょうがない」と切り替えられる方だし。芸能人では完璧な理想像だけを見せるタイプの人もいるけれど、俺は完璧主義者じゃないところが意外といいのかもしれないな。基本的に「まあいいか」と思えるタイプ。じゃなかったら、やってられないよ(笑)。ただ、逆に思い切り弾けることもないんだよね。飲みに行って、うわーっと盛り上がったり羽目を外したりすることは全然ない。若い時はあったけど。そう考えると、俺が一番はしゃげる場所というのはステージの上なんだよ。あの「イエーイ!」って言ってるライブ中は、本気で一番弾けていて、アドレナリンやら何やら出まくってる。
鉄板の曲で盛り上がる、二度とない景色
〜還暦記念ライブ“60th BIRTHDAY RED PARTY”〜
———いよいよ、還暦ライブRED PARTYが迫ってきました。それこそアドレナリン全開のステージになりそうです。
F:みんな集合で、お祭り騒ぎする日だね。ありがたいことに全国から来てくれるようで、平日なのに完売しそうな勢い。この間、セットリストを提出した。鉄板の曲で盛り上がるよ! 半分ぐらいはデジタルで踊れる感じになるかも。シングル以外のアルバム曲もあるけれど、それも鉄板だから、初めての人でも一緒に楽しんでもらえるはず。自分でセットリスト出しておきながら、俺は最後まで体力もつのか?っていうぐらいの内容(笑)。6月になったら、ジム通いで体力をつけつつ心拍数を上げていかないとな……。ドレスコードが「赤」で、赤い服や赤い物を身に着けてもらって、光り物も赤。みんな、いろいろ考えたり準備してくれているようで、今から参加型で楽しんでもらえるのはいいよね。円形ステージの武道館で、みんな「赤」。普段のライブでは見られない、二度とない景色を見てもらえるはず。60歳の誕生日をライブ、しかも武道館で迎える日が来るなんて、もう全っ然想像してなかったよ。とくに若い頃はあり得ない。20代の頃から、早めに隠居して絵を描くと言っていたし、のんびりしたおじいちゃんになりたいと思ってたから(笑)。還暦バースデーライブなんて、ミュージシャンとして最高にありがたいことだよ。
———今年はあらゆる場で「あの藤井フミヤさんが還暦」とか「60歳には見えない」と言われまくる年ですね。
F:もう、言われまくるし、聞かれまくってる! この間も歌番組で「還暦になられる藤井フミヤさんです」って。あんまり強調しないでくれって言ったんだけど(笑)。でもまあ、ネタになるから取り上げてもらえるわけで、ありがたいんだけどね。
———フミヤさんの場合、やたら強調されるのは還暦に見えないからなんですよね。ネット記事でも、『今年還暦に見えない芸能人』1位になっていましたし。
F:そうらしいね。やっぱり同級生を見ると、俺は若く見える方なんだなと思う。今度、同級生と一緒に番組に出るんだけど、友達は久留米でベンツ売ってる支店長だから、貫禄あるし(笑)。とはいえ、さすがに60から70は変わるからな。ここからの10年、いろいろ身体とも相談していかないと。ファンがいてくれる以上、自分だけの人生じゃないから。
———今回はRED PARTYについて伺いましたが、ご自身の還暦についての想いを、ぜひ後日あらためてインタビューさせてください。
1曲ごとのクオリティが高い
〜2022年秋アルバム発売予定〜
F:秋にアルバムを発売する予定で、今ようやく収録曲が決まったところ。作業としてはメロディーのセレクトが終わったから、これから簡単なアレンジがされて、それに俺が歌詞を付けていく。そこからさらにアレンジが加わって、最終的なレコーディングに臨む、という流れだね。音楽プロデューサーは曲ごとに違う。これまでに録った曲はすべて素晴らしくいい曲で、1曲ごとのクオリティがすごく高いんだよ。全体的にこれを持続していきたい。「Moonlight magic」や「ときめきのリズム」の川村結花さんが2曲。歌詞は全部自分で書くけど、今回は全体的に歌詞の世界を若返らせようと思ってる。その点でも「水空」が……ってもう短縮系で呼んでいるけど(笑)「水色と空色」がメインになるね。若さというのは、現代の若者を主人公にするのか、自分の世代が若かりし頃なのか、そこは曲にもよるし歌詞を書いてみないと分からない。ただ、やっぱり人間が感動したり心が動く部分って、時代が変わっても共通するものがあると思うんだよ。違いがあるとしたら、言い回しとかそういう表面的なところだろうね。歌詞は、いざ書き始めると7〜8割までは早いんだけど、そこから仕上げて提出するまでには時間をかける。「てにをは」もギリギリまでいじるから。移動中も、それこそ飛行機の中でもスマホでも書いたりする。浮かんでくる言葉や、こっちの方がいいなというアイデアは、常に出てくるからね。ずーっと歌詞を見ながら考えているわけではないけれど、制作中ずっとアンテナが立ってる状態。「あそこの1行がもうひとつだな。何かないかな」と思っていると、日常の中で新聞や本を読んだり、テレビのニュースを見ている中で、ピッと引っかかるものがある。アンテナさえ立てていれば、「あっ、これいいじゃん!」という答えが見つかるんだよ。
———アルバムのツアーも予定されているのでしょうか。
F:うん。秋にアルバムをリリースしたら、その後ツアーもやりたいと思っている。久しぶりに、しっかりオリジナルアルバムを聴いてもらうツアーになるから、それ自体が楽しみ。
「楽しくて癒された」「和んだ」と思ってもらえるコンサート
〜F-BLOODツアー〜
———10月からはF-BLOODツアーです。2020年にアルバム「Positive」を出してからのツアーがコロナで中止となり、2年ぶりのリベンジとなります。
F:あの時は、まさにコロナの始まりに当たっちゃったからねー。アルバムの曲をまだ生で聴いてもらうことができていないから、ようやくやれるのが嬉しい。コロナの状況が読めなかったから、スタンディングではなく座席のあるスタイル。マスクありでもいいから声が出せるようになってるといいなぁ。
———前号のインタビューで、「朝だ!生です旅サラダ」の兄弟ロケで見られたような“ゆるさ”を楽しんでもらいたい、というお話がありました。
F:そう。ゆるくて、和むような雰囲気のライブにしたいなと思っているんだよね。「旅サラダ」の、あのゆるい兄弟が全国へ行きますから会いに来てください、と。初めての人でも「あの兄弟を見ていると、こっちまでゆるくなるんだよな。ちょっと見に行ってみようか」みたいな感覚で気軽に遊びに来てほしい。筆書きで「居酒屋 なごみ」みたいな雰囲気(笑)。
———ツアーポスターも二人で将棋を指してる写真でいいんじゃないか、ぐらいな勢いでしたもんね。かといって、別にアコースティックライブみたいなわけではないですしね。
F:ないない(笑)。Positiveツアーのために準備していたバンドでやるから、ライブはバンドサウンドでしっかり楽しんでもらう。しかも25周年の年に重なったから、2020年に用意していた内容そのままではなく、代表曲も楽しんでもらえるようにと考えてるよ。基本的にはアルバムを聴き直しておいてもらいつつ、プラスアルファという感じ。
———皆さんにはぜひ、アルバム発売時のF-BLOODインタビューFFF vol.105も読み直しておいていただきたいですね。もう、尚之さんとツアーのお話はされていますか?
F:たまに会って話してるけど、細かいことはこれからだね。まだRED PARTYのことぐらい。尚之はめちゃくちゃ記憶力がいいから、ライブのMCではデータベースとして、その土地での思い出をしゃべってもらうのがいいかもしれない。久しぶりに藤井兄弟に会いに来てもらって、帰りは「今日は楽しくて癒された」「和んだ」と思ってもらえるコンサートにしたい。
———また別のタイミングで、尚之さんとお二人での“ゆるいインタビュー”を楽しみにしています。
※インタビュー以降に内容に変更が生じている場合があります。ご了承ください。