RED PARTY SPECIAL ISSUE/ライブレポート

FUMIYA FUJII 60th BIRTHDAY RED PARTY SPECIAL ISSUE

2022. 7.11 LIVE REPORT

60歳、武道館の真ん中で歌ってる。
人生ってのは分からない!

藤井フミヤ、60歳のバースデー当日である2022年7月11日。
全国からお祝いに駆けつけたファンとフミヤのエネルギーがひとつになり、日本武道館を真っ赤に染め上げた。
それは誰も見たことのない圧巻の景色。また新たな歴史が刻まれた。

九段下駅から続く、赤い人の波。日本武道館の前では、記念撮影のためスマホを掲げる姿が多い。コロナ禍で数年ぶりの再会を喜ぶ会話も聞こえてくる。ついにやってきたこの日、しかもドレスコード「赤」という特別な公演。服や小物の準備をしてきたファンにとっても、待ちに待った本番というわけだ。場内に足を踏み入れれば、超満員の座席を埋め尽くす赤、赤、赤……! グッズのライブTシャツや光り物を中心に、おそらくフミヤ本人が予想していた以上の量だろう。長引くコロナ禍でマスク着用ではあるが、武道館にはざわめきと期待感が満ち、今や遅しと“その時”を待っている。

場内が暗転し、歓声と拍手が湧いた。同時に、一周ぐるりと赤に染まった客席が浮き上がる。観客一人ひとりが創り出すこの景色こそ、フミヤへのバースデープレゼントだ。すり鉢状の中央には、青く浮かび上がるステージ。バンドメンバーがスタンバイし、あとは主役の登場を待つばかり。
ドンドンドン……と響き始めるドラム。ステージ上にはLEDパネルが映像モニタとして敷き詰められ、赤い十字を描き出している。吹き出すスモークとともに聴こえてきたのは、「TRUE LOVE(ReTake Ver.)」のイントロ。リズムに合わせて赤い映像が波打つ様子は、まるで会場の手拍子がエネルギーとなってセンターステージに送られるのを可視化しているよう。歌い出しとともに、ポップアップでフミヤが登場。赤いスーツに身を包んだ姿を悲鳴と拍手が迎える。この瞬間、フミヤが真っ赤に染まった客席を初めて目にした。フミヤと客席が合わさってRED PARTYという絵が完成。全方向に手を伸ばして歌うフミヤ。会場いっぱいの「赤」に抱かれ、思わず微笑みが浮かぶ。
衣装は赤いスーツにドット柄の赤いシャツ、黒ネクタイはスパンコールがきらめく。還暦をオシャレに遊ぶセンスがフミヤらしい。登場時はジャケットのボタンを留めていたが、すでに1コーラス目で外す。今日は思い切りいくぞ、と、パフォーマーとして無意識のブレーキを外したようにも見えた。さあ、パーティーの始まりだ。

続く「MY STAR」では、ステージ上に宇宙が広がった。中心に立つフミヤが、みんなの愛のパワーを増幅し、確かめ合うように歌う。歌い手と聴き手という関係性を超えた、ひとつのUNIVERSEがそこに生まれる。
今回のセンターステージは、武道館の形状に合わせた八角形のデザイン。東西南北に十字の花道が伸びている。バンドメンバーは、ステージの一段下がったバンドブースで演奏。天井に鎮座する日の丸の赤までもが、お祝いしてくれているようだ。

再び暗転し、深い緑のライトにピアノのイントロが響いて「SWEET GARDEN」。光り物も参加型の演出。手拍子のリズムで客席の赤が濃くなるのも楽しい。フミヤがマイクを手にステージ外周へ。歩きながら全方位に向かって歌う姿を、アリーナでは中継カメラが急いで追う。サビでは、ステージ映像に歌詞「Happy Birthday」の文字。中央に立つフミヤに向かって、全方向から祝福が贈られる。オープニング3曲を歌い終え、笑顔でマイクに向かう。

フミヤ(以下F):Yeah! ようこそ武道館へ、ようこそ“RED PARTY”へ。ご存知かとは思いますが、私、今日が誕生日で。(場内:拍手)ありがとう! ご存知かと思いますが60歳、赤いのを着てるんで還暦ということになりますが(笑)。どっち向いてしゃべっていいのかよく分からない状態ですが。皆さんも赤をたくさん着ていただいて。(ぐるりと見渡しながら)まるで大きなチゲ鍋の中で歌っているような。そして真ん中で歌っている私もカズレーザーみたいで(笑)。(笑&拍手)福岡県の久留米という町でオギャーと生を受けて60年が経つんですが。幼少の頃はお袋が忙しくて、なかなか誕生会とかやってもらえなかったんですけれど、還暦になった今これだけの人に祝っていただいて。(拍手)本当に人生は何が起こるか分からない。ありがたいもんです。(拍手)還暦ということで、初老の老体に鞭打って今日は最後まで頑張りますんで(笑)。ひとつ、皆さんも私を応援しつつ、最後まで楽しんで帰ってください。よろしく!

ふたたび暗転し、「タイムマシーン」へ。映像のデジタルカウンターとともに光が飛び交い、武道館は時空が渦巻くタイムトラベル空間と化す。夢中で観て、踊って、そうそう、この感じ。コロナ禍でしばらく味わうことができなかった景色と一体感。踊れるポップスターであるフミヤ、いつものように軽快にダンス&ハイキックで魅せるロックなパフォーマンス。大きく動くたび、ジャケットの下からベルトのスタッズが覗く。
「GIRIGIRIナイト」では花道の先端へ。赤白・赤黒の市松模様が映し出されたステージは、まるでチェス盤。そこに立つフミヤは、さながらキングの駒のようでもある。60歳にしてこの演出がハマるアーティストは、やはり唯一無二だろう。観客もマスクでは抑えきれない笑顔で、一緒に「0時」「1時」を指す。ノンストップで「I・N・G」へ。会場全体の手振りで、さらなる一体感。ステージ上には、フミヤのエネルギーが全方位に放射しているようなスピード感ある映像が広がる。サビでは「イマヲ」「Fumishimete」など歌詞がピックアップされていてユニークだ。こうした映像はアリーナからはほとんど見えないが、録画や配信アーカイブで見直すことで新鮮な驚きがあるはず。フミヤはジャケットを脱いで、MCへ。

F:Yeah! 今日は本当にありがとうございます。平日の5時、しかもクソ暑い。(客席を見渡して)本当に、すごい赤いな! 人のことは言えませんが。脱いでも赤いです。脱いでも赤いですか?(拍手)どっちなんだよ!(笑) 生まれてきて60年が経ちましたけれど、なんか短いような長いような。あっという間だったという感じがしますが。年齢を追うごとに時の流れのスピードが加速しているような気がします。50代なんて本当にあっという間でしたね。スカイツリーができたのが10年前らしくて、えっ、そんなの3〜4年前じゃなかったっけ?みたいな気がしますけど。時というのは過去と今と未来しかありませんけれど、当然のように、“未来より過去の方が長くなった”。これから未来で起きていくいろんなことより、絶対的に過去に起きたいろんなことの方がたくさんであり長い、という年齢になってきました。でも「今」っていうのは、あってないようなものですね。今!(パンと手を叩く)今のが「今」ですけど、もう過去になってますね。でも今、こうやって皆さんと武道館にいられるということ、これはさすがに私の人生の記憶の中に残ると思います。最近本当にいろんなこと忘れていくんで(笑)。さすがにこの赤い武道館を忘れるようだったらもうボケる時ですね、そん時はしょうがない(笑)。さて、これからはちょっとスローな歌を歌うんで、どうぞお座りください。私が還暦ということは皆さんもそれなりに年齢いってるっていうことなんで(笑)。ちゃんと時々座れるようなセットリストを考えております。(笑&拍手)それでは、いろんな時代のシングル曲を聴いてください。

長い付き合いのファミリー感溢れるMCから、一瞬にして大人のバラードシンガーへと表情を変える。会場は蒼い闇に包まれ、「わらの犬」。ステージに水紋が広がる。切ない歌声とともに、しっとりと会場の温度がクールダウン。スタンドマイクを携えて中央に立つフミヤは、歌いながら少しずつ少しずつ向きを変え、全方向に向かって歌を届ける。
続いては、ピアノのイントロから引き込まれる最新ナンバー「水色と空色」。水たまりのような水色のスポットライトの中へと進み、人差し指1本を立て、指先の「君」を見つめながら歌い出す。メロディーの美しさとまっすぐな歌声が、ストレートに心に染みてくる。空色の映像の上に、赤い衣装が映える。ラストは天井にまで青が広がった。
そこから「Another Orion」へ。流れるようなピアノのイントロ、トリルで聴かせるきらめき。白と青が交差する繊細なレーザーが、天井に星空を映し出す。2コーラス目ではレーザーが面のように広がり、幻想的な眺めに。ラストはロングトーンで余韻を残し、長い拍手が贈られた。客席では、曲間での拍手ごとにHOTAFURUが星のように瞬く。
「DO NOT」では、上部からのライトによってステージ中央に籠のような立体的な網目が現れる。その中に立ち、切なくも力強いロックバラードを歌い上げる。サビでは足元に白色のパネルが並んでは崩れる映像が、曲のダイナミックさとともに鮮烈な印象を残した。曲の最後は暗転直前、フミヤが手で合図をして締める。

一転、サックスのフレーズに場内が即総立ちになった「FINAL LAP」。青いタータンチェックのスーツに身を包んだ尚之が、花道に登場! 艶やかな音色を思い切り鳴り響かせ、場内を魅了しながらセンターへと進む。あの日もここに郁弥と尚之がいて、この曲が解散ライブの幕を開けたのだった。それが今日ここで還暦を祝っている奇跡……感慨深い人も多いだろう。ミュージシャン・藤井尚之の真骨頂。ギターからベース、キーボード、ドラムへとソロ回し。バンドメンバーたちも、一日しかない大舞台を楽しんでいるのが伝わってくる。
拍手が続く中、フミヤがポップアップで再登場。衣装チェンジを終えた姿は、なんと赤いチェックのスーツ! マスク着用で声が出せないとはいえ、悲鳴に近い歓声が漏れるのは至極当然。日本一チェックが似合う兄弟が武道館で魅せる「ギザギザハートの子守唄」。一斉にしゃがむシーンもお約束だ。息つく暇もなく「ジュリアに傷心」へ。フミヤの若々しいボーカルに、尚之の高低自在なコーラスが重なる。オレンジと赤のライトで、ダンスホールのような雰囲気が漂う。客席の興奮冷めやらぬ大拍手を浴びて、MCへ。

F:チェッカーズのナンバーを聴いていただきました。(拍手)俺が初めてバンドを組んだのは中学校1年の12歳の時で、初めて貯金全部はたいてエレキギターを買ったんですけど。そこからバンド人生が始まり、高校2年の夏ぐらいかな、17歳の時にチェッカーズを結成しました。その結成から約1年後に尚之がメンバーになります。デビューしたのが俺が21歳で尚之が花の18歳。

尚之:まだ未成年でございましたね(笑)。

F:あんなスーパーアイドルになるとは思ってなかったんですけど。チェッカーズが10年活動しまして、ここ武道館で解散コンサートをやって解散しました。それが今から約30年ぐらい前の話です。(会場を見渡して)みんな、大人になったね(笑)。(笑&拍手)さあ、それではもう少しチェッカーズを聴いてもらおうかな。次の曲は、チェッカーズが一番スーパーアイドルの頂点ぐらいの時の歌です。さあ、何でしょう? Come on, guitar!

ギターの1コード目で、まさか?!の雰囲気、続く2コード目で歓声が上がった「あの娘とスキャンダル」。曲決めの段階で、フミヤが「これが今回の隠し球。喜んでもらえるはず」といたずらっぽく笑っていた1曲だ。まるで恋人が欲しいプレゼントを熟知していて、目の前で箱を開けて見せたような雰囲気。リズムとともに揺れる武道館。場内の反応に、歌うフミヤも満足気だ。そして縦ノリから一転、「星屑のステージ」は身体をメロディーに預けて気持ちよく揺れる。青い星屑が散りばめられたステージに、赤いチェック柄が映える。Bメロでの手振り、「Cry」で手を上げ、そして泣きのサックス。両手のジャケット袖からは時折、赤いブレスレットが覗く。「夜明けのブレス」では、両手を広げ、力強く約束の歌を届ける。ソプラノサックスのソロからドラマチックな大サビへ。バンド解散時には予想もできなかった今日という日。“ともに生きよう”と重ねてきた約束が、今に至っている事実。円熟味を増した上質なパフォーマンスに、長い長い拍手が送られた。

F:とうとう俺の誕生日“RED PARTY”も、マスクは外せなかったなぁ。それでも世の中だいぶ普通に戻ってきてますけど。とりあえず今日はできてよかったです。(拍手)誕生日って今日しかないからね。ずらすわけにもいかないんで。チェッカーズの解散もここだったんですけど、わたくし武道館110回ぐらいやっております。武道館が好きです!(拍手)1999年、それから20世紀から21世紀に変わる時、あの辺りでカウントダウンコンサートを武道館でやらしていただいたんですけど。今はもう卒業したというか。おかげで普通に紅白歌合戦を見て、年越し蕎麦を食ってますけれど。だから、武道館ですごく盛り上がる曲をやると、イントロとかで勘違いして「Happy new year」と言いそうになるんですよ(笑)。いつも年明けでそういう盛り上がる曲やってたんで。それでは最後のブロック。我々の鉄板、間違えて「Happy new year」と言いそうになるような曲で、最後盛り上がっていこうぜ! Yeah!

「Clap your hands!」。バスドラがリズムを刻み、すぐにギターが乗って「WE ARE ミーハー」。ステージを縦横無尽に駆け回る。バンドメンバーもそれぞれの場所から、笑顔で客席を煽る。間奏ではステージ周りからスモークが沸き立ち、照明の美しさがいっそう冴える。続いて「Stay with me.」。フミヤが中央でジャンプ。明るくなった場内で、観客の赤い服装が視界を埋め尽くす様子は圧巻。壁に映像を照射する場面では、観客がスクリーンそのものになる。このドレスコードがあったからこそ、準備段階からのワクワク感と当日の一体感が最大化した。花道先端の金属柵に足を掛けるフミヤ。柵そのものが「60」の数字になっている。
そのままのリズムで「UPSIDE DOWN」へ。サックスの重低音が身体に響いてくる。歌い出しからスタンドマイクをくるくると回してクールなパフォーマンス。間奏では贅沢なダブルサックスの音色が響く。ラストでは金銀のテープが舞い飛び、あっという間に本編ラストナンバー「恋の気圧」へ。1音目から一気に手振りで盛り上がり、金銀テープを手にしたアリーナはキラキラと波のようにきらめく。後半では、パーカッショニストのスティーヴ エトウ氏がシルバーの旗をはためかせて登場。ダイナミックでありながら流れるように美しいフラッグパフォーマンスで、お祝いムードをさらに盛り上げる。紙吹雪も舞い散り、華やかな本編ラスト。久しぶりのツーショットもファンには嬉しい光景。ラストは中央で二人のジャンプで締めた。笑顔で肩を並べ、花道からステージを後にした。

アンコールを手拍子で待つ時間は、会場全体の「赤」をあらためて堪能できるタイミングでもある。拍手に応え、フミヤがバンドメンバーとともに再登場。赤いライブTシャツに赤いパンツ姿。胸には、ファンと対になったFFのゴールドネックレス。客席を見回して手を振りながら、話し始める。

F:本当に赤い。今、何も知らないで入ってきた人がいたらびっくりするだろうな。「何だろう?」と (笑)。すぐ勧誘するから大丈夫、「あなたも赤いTシャツ着ませんか?」(笑)。(拍手)今日は本当にありがとうございました。本当に人生ってのはどうなるか分かりませんね。60歳、武道館の真ん中で歌ってますからね。(拍手)それでは、みんなが一番好きな曲をやります。Are you ready? Yeah! Yeah!(客席、静かなまま手を上げて応える)やっぱり最後まで君たち、いい子だったねー! 声出さないもん。そんなにいい子に育てた覚えはないんだけどな、俺(笑)。じゃあ行こうぜ、Come on!

アンコール冒頭は、やはり外せない不動の人気ナンバー「ALIVE」。常に胸の中にあって、人生のさまざまな場面で勇気をくれる曲。もちろんフミヤ自身が歌に励まされる瞬間もあっただろう。フミヤが手を伸ばせば、みんなも手を伸ばす。マスクをしていても、その下の笑顔や一緒に口ずさんでいるのは伝わってくる。フミヤも観客も、一度しかないこの光景を忘れまいと心に焼き付ける。

F:あーーー、老体に鞭打ったわ(笑)。こうなったら、古希の時もパーティーやります! あはは!(大拍手)座って歌うかもしれないが。とにかく、歌えるところまで歌います!(拍手)

嬉しい10年後の宣言が飛び出し、大きな拍手が送られる。
続く「友よ」では、スペシャルゲストとして木梨憲武さんとヒロミさんが歌いながら登場。ヒロミさんは誕生日プレゼントのゴルフバッグを背負って。長年の親友3人が、ステージ中央で拳を突き合わせた。「サンキュー、友よ!」と迎えるフミヤに、憲武さん「フミヤ、おめでとう。やっぱり来たぞー!」、ヒロミさん「プレゼントぉ!」憲武さん「60歳ゴルフデビュー!」。フミヤは「代わりに歌って、ほら」とボーカルを任せ、ゴルフバッグからクラブを1本取り出してスウィングしてみる。「ナイスショット!」。相変わらず仲良しな3人に、観客も笑顔。終盤ではヒロミさんがポケットからスマホを取り出し、3人で自撮り。背景の客席を一周ぐるりと連写していく。ここで曲がフィニッシュ。

憲武さんの「藤井さんが今日60歳! 70歳までいこうね」という言葉に、場内から拍手。きっと70のお祝いにも“友”の姿があるだろう。「まあ俺とヒロミは当たり前で、いつもの親戚のおじさんみたいな感じ。今日はそれだけじゃない。一人ご紹介しましょう。なんと右京さん。水谷豊さん!」「マジで?! あっ、右京さん来たー!」これは完全に憲武さんのサプライズで、フミヤもスタッフもびっくり。水谷豊さん、第一声は「Yeah!」とフミヤの真似をしてみせる。「どうしても今日これをフミヤに着せたくて」と、赤いちゃんちゃんこを持参。先日憲武さんの還暦祝いで使った品を、フミヤ、次はヒロミさんへと順番にバトンパスしていくのだという。
その間にヒロミさんが舞台監督とともに、バースデーケーキをステージへ。FFマークと「60」のキャンドルが立てられている。バンドメンバーの演奏に乗って、「Happy birthday to you」を歌う。フミヤは「ありがとう!」と会場全体に応え、ロウソクを吹き消した。さらに憲武さんが「水谷さん、明後日70歳」と明かし、水谷さんが「ちょっと、それ言わない約束」と制止するも、再度キャンドルに火を灯し、歌ってお祝い。なんとも心温まる還暦ライブならではの一場面となった。

フミヤは3人とケーキをステージから送り出すと、「いやー、笑いすぎて鼻水出たわ。ていうか、問題はこれを着て歌うかどうかだ(笑)。まあ、途中までは着て歌おう。ちょっと鬼太郎っぽいってのは分かる」と、ちゃんちゃんこを羽織ったまま次の曲へ。
ギターに軽やかなフルートが重なって、「紙飛行機」。今回はコロナ禍で自粛や変更事項が多かったが、紙飛行機も直前に会場側より持ち込み禁止の連絡があり、客席に配布されることとなった。「用意はよろしいでしょうか、皆さん。行くぜ! Yeah Yeah Yeah!」赤い紙飛行機が、ステージめがけて飛び交う。飛ばしたら、また後ろや上から降ってきたものを拾い上げて再度飛ばし続ける。今回はそのすべてが赤というスペシャル感。ステージやアリーナに降り積もる様子も見事だ。「飛ばせー!」と、フミヤもステージで拾い上げて客席へ飛ばす。「Thank you! みんなの願いが叶いますように」ジャンプで締めた。

F:今日は本当にありがとうございました。帰りもぞろぞろ赤い人たちが歩いて駅に向かうと思うと、面白くてしょうがない(笑)。本当に、歌えるところまでは歌っていこうかと思います。ちょっとあんまりカッコつけられないんでコレ……(ちゃんちゃんこを脱ぐ)ありがとうございましたってことで(笑)。最後の曲これで歌うのもなあって。これヒロミに行くんだ、2年後に(笑)。今日のこの日まで武道館で歌えるってことは、本当に幸せなことです。ありがとうございます。(拍手)自分の人生、皆さんとともにずっとありました。ありがとうございます。まあ、ずっと何かをまだまだ求めていくと思うんで、まだ未完成な藤井フミヤですが。ま、完成するときは死ぬ時なんでしょうね、人間ていうものは。逆に、未完成なまま死んでいきたいです。なぜなら、まだ夢を追っていたっていうことになるからですね。(拍手)また遊びに来てください。また一緒に遊ぼうぜ! よろしく! それじゃLast song, come on!

手を広げて天を仰ぐフミヤ。特別なライブを締めくくるのは、新曲「未完成タワー」。まさに武道館の空間をイメージして作られた1曲だ。360度の笑顔に両手を広げ、回りながら歌う。パワフルで艶のある歌声。フミヤからは感謝を、ファンからは祝福を込めて、愛が循環する空間。フミヤも、ライブが無事に終わりつつあることに安堵しつつも、まだ終わってしまいたくない気持ちなのだろう。両手を広げ、会場を丸ごと抱きしめる。「ありがとう! また一緒に遊ぼうぜ!」バンドの一人ひとりを指差してアイコンタクトをしてから、ジャンプで締めくくった。

「Thank you!」両耳のイヤーモニターを外し、万雷の拍手を浴びて手を振る。フミヤがまともに会場の拍手を聞くことができたのは、この時だ。「ありがとうございました。燃え尽きた〜。ははっ。バンドのメンバーに大きな拍手を」。バンドメンバーを中央に呼び寄せ、みんなで会場に手を振る。「またお会いしましょう。Thank you!」。SE「未完成タワー」が流れる中、ステージから赤い紙飛行機が積もった花道を、手を振って去る。バンドメンバーを送り出すと、最後にフミヤだけがもう一度センターへ走って戻る。360度に手を振って、「じゃあまた! ありがとう。明日から60代、今日からか(笑)。頑張るわ!」。

赤一色に染まった武道館は、圧巻の一言。「未完成タワー」の歌詞通り、これはフミヤ一人で築ける夢ではないし、創れる景色ではない。現役でステージに立ち続けるフミヤと、変わらぬファンの愛がともに創り上げたステージだった。ステージを観ながら、過去・今・未来の時間軸がバラバラになって今に重なり合うような不思議な感覚。永遠に記憶に刻まれる場面をまたひとつ共有できたことは、間違いなく幸運だ。
来年にはデビュー40周年のアニバーサリーイヤーを迎えるフミヤ。楽しみながら真摯に人生のタワーを築いてゆく姿からは、これからも目が離せない。

<SET LIST>
TRUE LOVE(ReTake Ver.)
MY STAR
SWEET GARDEN
タイムマシーン
GIRIGIRIナイト
I・N・G
わらの犬
水色と空色
Another Orion
DO NOT
FINAL LAP
ギザギザハートの子守唄
ジュリアに傷心
あの娘とスキャンダル
星屑のステージ
夜明けのブレス
WE ARE ミーハー
Stay with me.
UPSIDE DOWN
恋の気圧

<ENCORE>
ALIVE
友よ
紙飛行機
未完成タワー

<BAND MEMBERS>
Drums:大島賢治
Bass:山田“Anthony”サトシ
Guitar:沢頭たかし
Keyboards:大島俊一
Sax, Guitar:藤井尚之