FF SPECIAL INTERVIEW (2/2)

アルバム『水色と空色』

———では、ここからは制作中のアルバムについてお聞かせください。

F:とってもいいアルバムになっているよ。とにかく1曲ごとのクオリティが高いし、バランスもいい。あと、じーんと来たり泣けるような曲が多いんじゃないかな。全体的には、ラブソング集。それこそ映画みたいな短いストーリーがそれぞれにあって、アルバムは短編小説や映画がいくつも並んでいるようなものだね。恋愛以外の歌は「未完成タワー」と「無限のGrowing up」ぐらいで。それ以外に関しては、10曲で10の恋愛。このアルバムで10回恋をする、恋に落ちてもらいます、という感じ。アルバムタイトルは『水色と空色』。今までやったことがない試みだけれど、すでに出したシングルと同じにしてみた。曲が出揃ってタイトルをあれこれ考えている時に、ちょっと待てよ、『水色と空色』でもいいんじゃないか?と。70年代から80年代にかけての音楽シーンでは、アルバムのメイン曲をそのままアルバムタイトルにするケースがよくあったんだよ。今回、そういう感じにするのもいいかなと思って。水色と空色というのは、絵の具でもほぼ同じ色。なのに別物。この「似ているけれど違う」というのが、俺は、男と女にも言える気がするんだよね。曲が出揃ってみて全体を見渡すと、すべての曲の主人公が「水色と空色」のような感じがした。それはシングルの歌の主人公がアルバムにも出てくるという意味ではなく、それぞれの歌詞のカップルが、まるで水色と空色の2色のように「似ているけど違う二人」ということ。シングルは水たまりに空が映っているような情景だったけれど、俺的には「水」はもうちょっといろんな意味で使ってる。例えば海。海と空なんて全然違うものなのに、水色と空色と言ってしまえばほぼ同じ色とされる。面白いなと。ちなみに空と海ならSEA SKYだし空海じゃん、とか、そこにも繋がったりするかもしれない(笑)。

———「手のなるほうへ」や「水色と空色」「未完成タワー」も含めて、全12曲。まるでドラマや映画の主題歌のようなクオリティの曲が多くて、聴いていると場面が浮かんできます。

F:そうなんだよ。シングルとか主題歌もいけそうなクオリティの曲が多い。ほぼミディアムまたはバラードで、アップテンポは3曲ぐらいかな。曲をストックすることに関しては、「手のなるほうへ」の時から始まっていたと言ってもいい。当時、候補として集めたバラードがあって、そこからさらにストックしてきた。今回新たにプラスされたのが2曲ぐらい。すでにいろんな人から素晴らしい曲が集まっていたから、アルバム全体に一人のプロデューサーを立てることはせず、曲ごとにアレンジしてもらった。

———歌詞は以前おっしゃっていた通り、若々しい感じ。

F:そう。歌詞の主人公自身が若いことが、最大の特徴だね。主人公は俺ではないから、自分の年齢とは関係なく曲ごとに想定したり、若いアーティストが歌うのを想定したりして書いている。人間の感情は年齢を問わず共通しているから、誰が聴いても共感したりしてもらえるはず。あと、愛を歌ってはいるけれど、今回はほぼプラトニック。中には、過去に付き合っていて、そういうこともあったね……みたいな歌や、ちょっとだけ性の目覚めみたいなのはあるけどね。つまり、いわゆるセクシーな歌はないです(笑)。 

———今、そういうプラトニックな歌詞の世界になったのはなぜでしょうか。

F:やっぱり、先にシングル「水色と空色」の存在があったからだね。映画もあって、あの歌の世界観が生まれた。そこからアルバム全体も、若い歌詞とプラトニックなものになっていったと思う。若干のエロティシズムを感じるのは、「今さらI want you」と「禁じられた約束」の2曲だね。ティーンまで行かなくても、子供でも本能的に性への興味とか関心はあるじゃん。「禁じられた約束」は、そういう感覚を歌ってる。テレビとかでも、大人のそういう描写は目にするし。何をやっているのかは詳しく知らなくても気になってしまう。そういえば俺の知り合いの話なんだけどさ。小学生ぐらいの時に女の子といて、なんでか分からないけど二人で裸になっちゃったんだって(笑)。なんとなく「男女にそういうことがある」のは知っていて身体を重ねてみたけど、やり方が分かんないから、女の子の上でずっと腕立て伏せしてたんだって!(一同爆笑)それで汗だくになって、途中でやめたらしいよ(笑)。

———すごい話ですね!(笑) 自分の子がそんなことしてたら大事件でしょうけど。

F:俺の時代なんて、お医者さんごっこみたいなのが実際にあったからね。ちょっと年上のお姉ちゃんが「触ってごらん」みたいな。小学校の時とか女子の方がませているし。知り合いの女の子は、早熟で小学校4〜5年の時から興味がすごいあって、ダイヤルQ2に電話してたんだって。いい悪いは別として、子供でも性への関心とか独自の世界観ってあるんだよな。でも今はSNSで危険なことも昔よりずっと増えているんだろうし。

———そうですね。昔より早めに性教育やSNSの指導が行われたりもするようです。ただ、子供の性への関心そのものは、健全なことですもんね。今回のアルバムはほぼプラトニックということですが、そういう本能的な部分はほんのり出てくる、と。では、アルバムの新曲について解説をお願いします。

【今さら I want you】

F:これは佐橋くんが、フィル・スペクターという昔の音楽プロデューサーや大滝詠一さんのようなサウンドイメージで録りたいということで、せーので楽器を一斉に録った。

マネージャー:例えばギターやパーカッションも、二人来てもらって同時に同じ演奏をしてもらうやり方でしたね。

F:サウンドにその時代の雰囲気が出るんだよね。佐橋くんがデモアレンジをしてくれて、昔のトレンディードラマで流れるみたいな雰囲気になった。それがまさにフィル・スペクターとか大滝詠一さんのようなサウンド。もう最初からこうだったようにしか聴こえないぐらいハマッてたから、歌詞もそれに合わせて、70年代後半から80年代の大手化粧品のCMみたいな風景をイメージして書いたんだよ。今時なかなかない、砂浜で裸足で踊る、みたいなシチュエーション。ただ物語としては、男が未練がましく昔の思い出を大切にしているという歌(笑)。でもこれ、俺的には女性ファンが多いからちょっとどうかなと思うのは……ほら、よく言うけど、女性は過去に付き合ってた男のことなんて振り返らないじゃん?

———例の、「男は過去の恋愛をフォルダに保存、女は上書き」理論ですね。

F:そう。だから、こうやって男が元カノを想っている歌詞なんて、「気持ち悪っ!」って思われるんじゃないかって(笑)。この歌の男女は昔付き合っていて、どちらかというと男の方が好き度が高いというか、まあ要は男がフラれたんだよね。それが再会した。おそらくバーとかかな。もちろん偶然会ったとは限らなくて、「最近どう? 久しぶりに会おうよ」って会ったのかもしれない。それぐらい、別に悪い関係性ではない。ただ、男はどこか「俺たち、一度はそういうことになった仲じゃん?」と思っていたり、ちょっと未練がましい。でも女は全然そういう目では見ていない。万一、男が「キスだけしようよ」とか言っても「は? するわけないじゃん。ないない!」みたいな(笑)。そういう男の歌です。

【君の隣に】

F:作曲は、「夜空ノムコウ」や「ときめきのリズム」の川村結花さん。佐橋くんのアレンジでキー設定が少し低めだったことによって、少し落ち着いた感じに仕上がった。コーラスも川村さん。歌の主人公は20代後半以降、社会人同士ぐらいの設定かな。これも完全プラトニックな二人の歌。女性が落ち込んでいる状況で、仲のいい男友達が「ちょっと付き合ってよ」みたいに呼び出されて会っている。女性の方は彼氏とうまくいっていないのか、友達と揉めたのか、仕事で悩んでいるのか、何らか落ち込んでいる。男性側は好意を持っているんだけど、女性から見ると一番話しやすいヤツっていうこと。でも、いずれ恋に落ちる二人なのかもしれないよね。

———イメージが膨らみますね。歌詞の「もう泣いてもいいよ」なんて、頑張っている人にはかなり響くんじゃないかと。王道の恋愛ドラマの映像にも合いそうな歌です。

F:ああ、そこね! そうだろうねー。歌詞を書いてみて、これ普通だったらシングルかもと思った。本当に、いわゆるドラマの主題歌っぽいよね。かつ、歌詞の内容自体もひとつのドラマっぽい。ちなみに、川村結花さんということで「星空の端っこ」という歌詞を入れたんだよ。こっそり裏遊び。

マネージャー:歌詞を見て、おっ!と思いました(笑)。

———面白いですね。星空の端っこということは、夜空の向こう側よりは手前。

F:そう、そんな感じだね。

【Wana】

F:スーパーポップなナンバー。サビの一番重要な「Wana」っていうところ、これも罠という言葉に行き着くまで時間がかかった。歌詞の内容は、今時の若者の恋愛事情。いきなりブロックされて連絡がとれず、これじゃ自然消滅しちゃうじゃん!と焦っている歌。でも曲自体はポップで明るいから、深刻な雰囲気はないんだけど。何が「罠」かというと、シチュエーションとしては誰かが二人の恋を邪魔して別れさせようとしている。つまり、この男の子のことを好きな女の子が他にもう一人いるか、または、この女の子を好きな男の子がいて、罠にはめられたということだね。結構あると思うよ、「あの人、こうらしいよ」ってガセネタを吹き込まれて、信じちゃって壊れるという話。誰かからフェイクニュースを吹き込まれてても、ブロックされたら弁解の余地がない。今時、友達にも情報が広がりやすいしね。

———今は連絡を取る手段はいろいろありますが、ブロックとか既読スルーとか、関係を切ることは簡単になりましたよね。

F:そうなんだよ。実際に若い子に聞くと、自然消滅は結構多いらしい。あと、俺らの時代って、中学や高校で付き合う時点で「俺は将来この子と結婚するのかも?」という想像までしちゃってたわけ。でも今の子は全然しないらしいよ(笑)。もちろん結婚という形にこだわる必要はないし自由だけど、「将来この人と一緒に暮らしたら、とか想像しないの?」って聞いたら「全然考えない」って(笑)。特に東京なんて、特に20代で結婚しようと思っている女性は少ないのかもね。

【So Young】

F:これは歌詞が難産だった。最初デモテープが来た段階で、大島くんがすでにサビを「So Young」って歌ってたんだよ。それ以外の単語もいろいろ考えたんだけど、もう「So Young」以上にハマるものがなかった(笑)。だったら、その言葉通り、すごく若い頃を思い出す歌にしよう、と。

———この歌に関しては、架空の主人公を設定するというよりは、フミヤさん自身の若い時を表現されていますよね。

F:これはそうだね。自分の高校生ぐらいのことを思い出していて、チェッカーズもちょっと重なっている。ファンへのプレゼント的な曲でもあって、あの当時を彷彿させるような単語をいくつも散りばめてある。当時カセットテープでチェッカーズを聴いてた時代を思い出してくれるかも。サビは繰り返し同じ歌詞が出てくるのもいいなと思ったから、リフレインしている。サビで始まった時点ではなんとも思わないのが、回数が重なるごとに味わい深くなっていき、4回目のサビではさすがにいろいろじーんとする。そんな風に感情の変化を味わってもらえるかもね。ライブでも、みんなで口ずさんでもらえるようなイメージの曲。

【無限なGrowing up】

F:この曲の歌入れが終わってホッとした。ちょっと心配してたんだよ、こんな若い歌詞を歌って大丈夫かなぁ?って(笑)。今回のアルバムは、若い主人公を設定したり、楽曲提供のように誰かが歌うイメージで書いている。で、これはジャニーズJr.が歌う設定で書いちゃったから、歌と実年齢のギャップがアルバムの中で一番大きい歌だね(笑)。60のオヤジが歌っちゃいけない歌なんだけど、まあ、こういうのがあってもいいかなと。

マネージャー:「GENERATION GAP」に続いての作品、ということで。

F:最初のデモは打ち込みで、もっと「ネバーエンディング・ストーリー」みたいな感じだった。それこそ若いグループが、わーっと出てきて歌うような雰囲気。でも俺が歌うから、あえて打ち込みではなくロックっぽいアレンジに仕上がってる。

———歌詞に使われている言葉もキュートでポップで、たしかに、これを還暦で歌えるのはフミヤさんだけですね。

F:歌では歳をとらないという。知らない人が聴くと、もうちょっと若いボーカリストが歌っているように聴こえるかもしれない。テレビの「ザ・マスクド・シンガー」みたいに、オオカミのお面を被って歌うみたいな(笑)。歌詞は最初、もうちょっとダークな面も入れて、大人と子供のギャップを書いてたんだよ。子供の頃は夢を抱いていたのに、大人になることで矛盾が出てくる。社会とか経済とかいろんなものを毎日気にして、ニュースをチェックしなきゃいけなかったり。でも最終的に、そういうマイナスの歌詞は削ってしまった。やっぱり、本当にジャニーズJr.が歌ってもいいように振り切ろうと思ったら、社会批判みたいなことじゃなく、もっと純粋に「僕たちは変わらないよ!」みたいな歌詞になるだろうから。たとえ現実離れしていても、まだ社会で揉まれている必要はないなと。

【禁じられた約束】

F:これは(大土井)裕二が曲を書いて、ベースも弾いてくれている。曲を書いてもらったのは「MY PLANETS」以来で、えらい久しぶりだよ。これは子供のピュアな歌なのに、いわゆる性の目覚めというか、ちょっと“青い性”みたいな要素が入っている。キスだけしたのかもしれないし、秘密めいている分、いろんなことを醸し出すよね。

マネージャー:さっきの話じゃないですけど、まだよく分かってないぐらいの感じがしますもんね。

F:そう。でも興味はあるし触れちゃう、みたいな。子供でも、よく知らなくても本能的に関心はあるからね。あとは、ちょっと「白夜行」っぽいところもあるかもしれない。

———歌詞には空き家という場所が出てきますが、大人の目を盗んで何かする高揚感や秘密を持つドキドキ感ってありますよね。

F:俺らの時代で言うと、鍵っ子だとか、帰っても親がいない時間って結構あったのよ。夜まで仕事でいないとか。そういう時間は完全に放置だったからね。俺なんか、空き家とかいろんなところに入っていって、怖いおじさんにコラーッ!って怒鳴られたよ。しかも、そこからしょうもないものを持って帰ったりするのよ。灯油缶の蓋を集めたり、意味もなくボルトを持って帰ったりとか(笑)。でもそういうのも、なんだかんだ成長の過程なんだろうね。

【IF】

F:これは、二人の関係がどうとでも受け取れる歌。今いるパートナーとの昔を思い出しているようにもとれるし、完全に別れてハートブレイクな歌だと受け取る人もいるだろうし。歌詞の「君が戻るなら」というのは、いなくなったのが戻ってきてくれたらという話ではなく、タイムマシーンみたいに「どの日に戻りたい?」という話。ただ、相手が亡くなっている風にも聞こえなくはない。カップルに限らず、家族、親子と考えることもできる。シンプルだからこそ、自由に感じてもらえればいい。メロディーの展開が少ないから、メロディーに合う、ぐっと来るような単語を厳選した。「大切な人へ」も同じようなタイプだね。あえてノービブラートで歌っているから、主人公像が若く感じられるかもしれない。

———フミヤさん自身が戻れるなら、いつ頃に戻りたいというのはあります?

F:そうだなぁ。俺ねー、あんまり過去に戻りたいと思う人間じゃないんだけど。強いて言えば、子供が小学校の3〜4年だった頃かな。あのぐらいが一番、いわゆる家族っぽいというか。毎日わいわいガチャガチャして、怒鳴ったりもするんだけど、サザエさん一家っぽい時期だった。子供がまだ自我も持ちすぎず反抗期でもなく、まだ子供だなーっていう気がする。自分が3〜4年生に戻ったとしても、やっぱり当時のおふくろと親父と尚之との家族らしい時期だったと思うな。

【君の手に初めて触れた日】

F:作曲は尚之。この歌詞は、するっと一瞬で書けた。やっぱり岸田勇気のアレンジ力のおかげだろうね。イメージが湧きやすかった。

———ロマンティックで映画やドラマの主題歌のようですし、十音楽団の一場面で使われていても馴染みそうです。

F:タイトル通り、初めて好きな相手の手に触れた当日の歌。主人公が若いと言っても、俺が歌うとティーンエイジャーの恋にはならないから20代以降だね。過去にも手を握ったことぐらいあっても、その人・その人とは毎回が初めてなわけじゃん。若い頃に限ったことじゃないよ。40でも50でも、何度恋をしても、相手と初めて手を繋ぐ瞬間というのが必ず一度あるわけだから。この歌は、初デートか2回目のデートぐらいかな。サビの歌詞で、最初は「触れた日」と2回入れていた部分を、後半だけ「触れた夜」に変えた。どう考えても、手に触れたことをすごく思い出すのは夜だろうなと。ベッドで、天井を見つめているんだけど天井の向こうを見ているような感じ。あるじゃん、そういう時。あっ、また相手のことばかり考えちゃってる……みたいなさ。手を握ったということは、こっちは気があるし、それが相手にも伝わった日ということだよね。向こうは手に触れられて「そう思われてたんだ」と気付いた日。

———相手が長年の友達でも最近知り合った人だとしても、そこで関係性が変わりますよね。どうなるのか、という。

F:お互い意識することで、ただの友達ではなくなるからね。次に会ったら「付き合おう」と言うのか言わないのか、キスをするのか……頭の中がやたら膨らんじゃうわけ(笑)。向こうも眠れないまま天井を見ているかもしれないし、お互い同じような想いでいる夜。

マネージャー:人によっては、手を繋ぐだけじゃなくて1日で全部進んでしまうこともあるわけで(笑)。このじっくり大切に味わう感じが、いいですよね。

———作詞というのは面白いですよね。主人公がフミヤさんでなくても、ご自身が若い頃に手を繋いでドキドキした時の感情など思い出して、誰もが共通する感覚ということで場面を描いてゆくという。

F:そうなんだよね。自分が初めて手を握った時とか……うん。やっぱり初めて手を握ると「あ、握っちゃった」と思うんだよねー。だって基本的にまだ付き合ってもいない、キスより前の段階だからさ。キスが先ってのは、あんまりないだろ。徐々に距離を詰めていって、手に触れるか触れないか。そういうプロセスがある。そしていざ握ったら、この手を離したくない、と思うだろうしね。

———ああ、なんか今この時間、フミヤさんからいい話聴いちゃってますね。

マネージャー:本当ですねぇ(笑)。

F:もちろん大人はそれなりに経験があるから、ティーンエイジャーほどは浮かれないだろうけど(笑)。

———ティーンは手を繋ぐだけで一大事ですよね、初の肉体接触ですから。

F:そうだよ、本当に!(笑) 勇気を出して繋いでみても、拒否される場合もあるだろうしね。だから、手を触れるって特別な一歩なんだよな。手を繋ぐことができたら、じゃあ次どうなるか、どうしようか、次の選択肢が出てくる。あとさ、いわゆるカップルとして手を繋ぐのとはちょっと違うけど、もし俺がアイドルのファンで、大好きなアイドルと握手したら当分手を洗わないと思う。「ああ、柔らかかったな〜」とかさ。はぁ〜って何度も思い出して、手を頰に当てたりするだろうしね(笑)。俺もファンクラブツアーとかでファンの子たちと握手するじゃん。あの時、向こうはそういうぐらいの想いなんだろうなと思うもん。

【慕情】

F:これも曲は川村結花さん。ディレクターいわく、“藤井フミヤ版「見上げてごらん夜の星を」”だと言っていた。確かに、悲しい時はこれを聴いてください、と言える1曲だね。メロディーが少ないから、歌詞をかなりじっくり考えた。「君の隣に」と同様、寄り添って慰めている歌。ただ違う点は、こっちはすでに彼氏彼女とか夫婦、カップルという関係性であるということ。しかしこの男は、韓流映画の主人公みたいに優しいよなー。「愛の不時着」の男ぐらい優しいかもしれない(笑)。曲順で言うと、俺はこの静かに消えていく感じがアルバムの最後にいいんじゃないかなと思ってる。でも他にも、「おっ、あえてそういう終わり方する?」みたいなアイデアもあるから、どうなるか分からないけど。

———ありがとうございました。充実のアルバムですね。

F:まずは、アルバムを一人でも多くの人に聴いてもらいたい。今までの作品を聴いたことがないという人でも、非常に入りやすい内容だから。今回のラブソングは、若々しい歌や恋の始まりとか誰もが味わったことのある感覚を歌にしているから、年齢性別問わず心に届きやすいんじゃないかな。いろんな人に広がって聴いてもらえたらいいなと思う。

———それこそ人にプレゼントしても、聴く人を選ばず気持ちよく聴いていただけそうな1枚ですよね。

F:エロくないし毒がないアルバムだからね!(笑) 親でも若い世代でも、安心してお聴きくださいって言える。

———来年は、このアルバムを軸としたツアーが行われます。

F:アルバムの曲を中心に、歌詞や曲をストレートにじっくり楽しんでもらえるツアーになると思う。サウンドから言ってもロックロックした激しいものではないだろうし、かといって十音楽団みたいに座りっぱなしではないだろうし。今回すごく思うのが、このアルバムを聴いて「生歌で聴きたい」と思ってくれる人が多いんじゃないかということ。もちろんファンのみんなはコンサートに来てくれると思うんだけど、まだ一度も観たことがない人たちも「この曲を生で聴いてみたい」と思えるようなアルバムに仕上がった気がしてる。もちろんアルバム以外の曲もやるし、ぜひ夫婦やカップルでもコンサートを楽しんでもらいたいね。

岸田勇気氏、初のアレンジ曲レコーディングメンバー

F-BLOODツアー

———そしていよいよ10月からF-BLOODツアーが始まります。

F:そう、まずはF-BLOODだね。アルバム『Positive』のツアーがコロナでずれたことで、ちょうど25周年になった。当初の内容は『Positive』だったけれど、それはオンラインライブでやったから、今度はアニバーサリー。これまでのF-BLOODはライブハウスでのスタンディング形式が多かったし、ロックのイメージが強かったじゃん。でも今回は全体的に、そこまでアップテンポとかゴリゴリのロックではない予定。スタンディングではなく座席制だし、今までよりも大人な楽しみ方ができるように作るよ。

———かつ、前からおっしゃっている「ゆるい」とか「なごむ」という雰囲気も?

F:うん、ゆるい感じにはしようかなと思ってる。大人の兄弟っていうかさ、そういうナチュラルでリラックスした感じでいけるんじゃないかと。

———チケットは早々に完売し、クリスマスの追加公演も決定しました。久しぶりのユニットでのステージ、期待しています。

*アルバムに収録される「水色と空色」「未完成タワー」についての前号インタビューはこちら
*楽曲タイトル、曲順は変更となる場合があります。
*インタビュー以降に内容に変更が生じている場合があります。ご了承ください。