Fumiya’s Favorite ー 渋谷東急本店

「いいと感じたものは、FFメンバーとシェアしたい」。
そんなスタンスで、フミヤのおすすめ&お気に入りをご紹介するコーナー。
今回フミヤのアンテナがビビッととらえたのは、こちらです!

●渋谷東急本店

最近、とても寂しい出来事があった。渋谷の東急百貨店本店が閉店したのだ。「1月31日をもって55年あまりの歴史に幕を下ろし、閉店することになりました」「え~っ!嘘でしょう!(涙)」

東急百貨店は1967年に開業し、渋谷の街を盛り上げ支えてきた。現・東急電鉄は渋谷に電車を乗り入れ、百貨店を作って人を集め、現在のような大都会を代表する街・渋谷を創り上げた。渋谷の街の中心は東急グループが創ったとも言えるのだ。
だいぶ前から全国で百貨店という業態が厳しくなってはいるが、さすがに東急本店がなくなるというのは、相当に会議を重ねた結果であり断腸の思いだったろう。東急はここ数年の間に、渋谷駅と隣接した複合商業ビルを二つも建てた。空が狭くなるくらいのハイタワーだ。そこに新型コロナウイルスという未曾有の時代が到来。グループとして多くの周辺事情もあったのかもしれない。
隣接していた東急Bunkamuraには、ギャラリー、美術館、映画館、劇場、コンサートホールなどが集合していた。私自身も何度もここのオーチャードホールでコンサートを行った。Bunkamuraも、いったん休館となり改修される。
東急本店が解体された跡には、新たにハイタワーの商業施設とマンションが建つらしい。約5年はかかるというが、何ができることやら。それはそれで、また新しい渋谷の顔になるのだろう。

百貨店という名の通り、何でもあるのがデパートだ。正月や祭日でも営業しているし、急なプレゼントやお中元・お歳暮、食材など、とにかく困った時には頼りになる。とくに東急本店は1フロアが丸ごと大きな書店というのも魅力だった。20年近く前から足を運ぶようになったが、ここは駅から離れていることもあり空いていて、年配客ばかり。置いてある商品もその客層に合った物が多く、昭和な匂いが残るデパートだった。そののんびり感がよかった。せわしない渋谷という街にありながら、あんなにゆるやかなデパートは他にはなかった。

馴染みのデパートを失う寂しさは、以前にも経験したことがある。久留米の老舗デパート、井筒屋がなくなった時だ。物心ついた時から、デパートと言えば井筒屋だった。閉店の話を聞いた時、自分はすでに東京在住だったが、幼少期の思い出がなくなるようで寂しかった。今ではその場所に久留米シティプラザという文化施設が建っているが、私はそのオープニング式典に出席し、こけら落としコンサートをやるというご縁があった。

ここ10年で、渋谷の街も随分と変わった。相変わらず人だらけでせわしなく、駅前のスクランブル交差点を渡る人を見れば、95%くらいが若者。それが渋谷という街なのだろう。

今後、昭和の建築物は老朽化で次々に姿を消してゆく。私が生まれた時代、東京オリンピックの頃に建てられた建物たちも、ほぼなくなってしまうのだろう。時代は常に移り変わるのである。