藤井画廊 第16回  

「reply」シリーズ From 『FFEd』FUMIYA FUJII & Ed TSUWAKI

前回紹介したのは、Ed TSUWAKI君とのコラボレーション展「FFEd」に出した作品の下描きだった。
1枚の紙に、まず一人が先行として絵を描き、それを受け取った後手が作品を最後まで完成させる、というユニークなコラボレーション。

作品に共通して言えるのは、どれも想像していなかった仕上がりになったということだ。毎度「へぇ~、そう来たか!」と完全に予想を裏切られながら、不思議な喜びがあった。エド君は「その場のインスピレーションでサッと描く」と言っていたが、そのために相当あれこれ考えてはいたと思う。ひょっとしたら、別の紙で少しは練習したりしたかもしれない。なぜなら先手が描いたものは1枚しかないし、ある意味、後手は完成させる責任があるから失敗は許されないのだ。もちろん、何をどう描こうが失敗ということにはならないのだが。

これらの絵は、エド君と私が“往復ハガキの返事を書くような”コンセプトで誕生したことから、「reply」というシリーズ名になった。展覧会に20点を展示したうち、この「reply」シリーズは12枚を占めた。


「Girl & Car」
まずエド君が、90年代のフォルクスワーゲン・ゴルフの車の絵を描いてきた。彼が昔、乗っていた車らしい。どういう意図で女の子の頭上に車を描いたのかは分からないが、若かりし頃のデートでも思い出したのかもしれない。ということは、この子は誰かに似ていたのか? それも分からない。


「LOOK AT ME」
私が描いた目と唇の絵に、エド君はサラッと一筆書きのように裸体を描いた。そして「LOOK AT ME」(私を見て!)と英語のメッセージを添えた。目と唇だけという強い印象のモチーフの奥に、ふくよかな裸体を想像したのだろう。自分のすべてを見てほしいという願望の、ちょいエロチックな仕上がりになった。


「DOLL」
今回のコラボレーションの中で最初に描いた絵だ。とりあえず何か描いてみようということで、幾何学的な裸体のようなものを描いてみた。先に私が描いたモチーフに、エド君はギターと細長い藁人形のようなものを描き足した。それにより当初のモチーフが、まるで使い古され、服を剥がされ壊れた人形の中身のように見えてきたのだ。仕上がりを見て二人であれこれ考えた末「DOLL」というタイトルにし、二人の描いた世界観が統一された。


「Ballet」
先手で私が描いたのは、二人のバレリーナだった。エド君はそのバレリーナの間にカラフルな川のような流れを描き、違うエリアに分けた。この川は、果たして舞台セットなのか? エド君は冗談で「三途の川」などと笑っていたが、そう言われて見てみると、ピンクのチュチュが天国では水色になったということになる。なんとも不思議な二人のバレリーナになった。


ギャラリーに見に来てくれた人たちは、コンセプトと仕上がった作品をとても面白がってくれた。作品がいつかどこかの壁に掛けられた時、見る人は当然、一人の画家が描いた絵として眺めるだろう。しかしどれも不思議な絵なので、「この画家は一風変わった思考を持つ人間だな」と思うに違いない。そこが今回のコラボレーション作品の面白さである。

今後また二人でやることがあるかどうかは未定だが、制作自体が楽しかったので、「またいつかやってもいいね」とはお互いに思っている。今回一緒にやったおかげで、それぞれに新しいアイデアが生まれ、今はその絵を各自描いている。それだけでも十分やった甲斐があったし、大成功だったと言える。
ちなみに、下描きを見たのはFFメンバーだけである。


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