藤井画廊 第17回  

「Tower」シリーズ

「Crescent night」
From 『FFEd』FUMIYA FUJII & Ed TSUWAKI

これまでにも紹介してきたEd TSUWAKI君とのコラボレーション展で、最後に描き上げた「Crescent night」という作品がある。エド君が変わった仮面を被った3人の女性の絵を描いてきたのに対して、私は斜めに傾いたTower(タワー)を描いた。エド君の絵から受けたイメージは、“謎めいた舞踏会”。そこで、舞踏会が開かれている変わった会場を想像し、建物を描いたのだ。キャンバス自体はそれほど大きなサイズではない。二人ともこの作品が気に入って、展示のメインビジュアルにも使用した。
エド君はこの絵からインスピレーションを得て、さらに個展ができるほどの枚数を描いたらしい。自分も「Tower」というテーマが気に入って、別の作品を描いた。私の場合はスローテンポなので2枚しか描けなかったが。つまり「Crescent night」は、Towerシリーズ最初の作品ということになる。その後もいくつか描こうと思ったのだが、マスキングの作業が多くて結構時間がかかるため、今のところ2点に留まっている。

Towerシリーズのテーマは、「繁栄と崩壊」。建築物というのは、その時代における国や街や経済や企業などの社会的繁栄の象徴である。それこそエジプト文明やローマ帝国、平安時代など、昔から繁栄を示すために多くの立派な建築物が造られてきた。現代社会においてはハイタワー、つまり高層ビル。敷地を縦横に広げられない分、バベルの塔のように上へ上へと向かっていく。
繁栄と崩壊は常に繰り返される。このテーマは面白いと思った。ただ、絵を購入するのは成功者が多いので、果たして彼らが「繁栄と崩壊」という不吉なテーマの絵を購入するかどうかは分からないが……。でも、描きたいテーマを絵にするのが画家だ。
今回描きたかった建築物は、現代的ではなく、ピサの斜塔のような少々古めかしいデザイン。かつ物理的に建設は不可能で、まったく意味のない建築物であり、しかも傾いているもの。このTowerは倒れかかっているのか、それともあえて斜めに建てられたのか? 解釈は見る人の自由である。