40周年ということもあって、すごく充実した一年
開催中の「40th Anniversary Tour 2023-2024」が、各地で大好評を博しているフミヤ。
復活した大歓声に包まれ、自身も確かな手応えを味わっている。
さらにこの年末には、26年ぶりの紅白出場決定という嬉しいニュースも。
アニバーサリーツアー中盤を迎えた今、フミヤが感じていることを語ってもらった。
●40周年のタイミング的にも嬉しい
〜「第74回 NHK紅白歌合戦」出場決定〜
———まずはホットなニュースとして、今年の紅白出場が決定しました。
フミヤ(以下F):ここへ来て紅白に選ばれたことは、素直に嬉しいよ。最初、マネージャーが「NHKから電話がありました」「なんで?」「紅白です。どうしますか?」って言うからさ、「それ、日本の歌手で断るのは基本的にいないだろ。もちろん出るよ!」って(笑)。
マネージャー:予定ではオフで旅行中の可能性もあったので、一応確認しました(笑)。
F:昔はニューミュージック、ロック系アーティストは断る人も多かったけど、今は永ちゃんやユーミンも出るからね。俺が最後に出たのは、97年の「Go the Distance」。チェッカーズで9回出てるから、全部で15回か。長いこと大晦日は武道館でライブだったし、99年からはカウントダウン。そういう状況でだいぶご無沙汰だったんだけど、今回は40周年ということでタイミング的にも嬉しい。さらりと華を添えるような気持ちで、さりげなく歌って帰ってくる感じがちょうどいいんじゃないかな。それにしても、発表されてから、「おめでとうございます」っていうメッセージがたくさん届いた。紅白って今なお、みんなに祝われる番組なんだなぁ。やっぱり、日本の年末の風物詩だからね。“こたつで紅白”みたいな。それに歌番組というのは、家族で安心して見てもらえるじゃん。ニュースのような戦争や事件の要素はないし、映画のように危険なシーンが出てくることもなく、下品さや毒もない。とくに大晦日なんて、誰しも平和にポジティブに過ごしたいからね。紅白を観て、いい気分で「楽しい」とか「いい曲だな」と言ってるうちに、「ゆく年くる年」になって、ゴーンと除夜の鐘が鳴り出す……というのは平和でいいんじゃない。
———最近は若い世代がフミヤさんをフェスやYouTubeなどで知ったとか、お子さんと二代でファンという方も多いので、広い世代で楽しんでいただける紅白は、ご家族でお楽しみいただける機会でもありますね。
F:ああ、国民的な番組だからこそ、それもあるよね。紅白って面白いんだよ。若い人もいればベテラン演歌歌手もいるし、CGやプロジェクションマッピング、ありとあらゆる演出や最新技術を使う。大御所が何十年も同じ代表曲を歌い続けているし、今やかつてのような国民的ヒット曲というのはないから、紅白で初めて若手アーティストを知ったりもする。家族が集まる大晦日ならではの番組。俺は、最近までずっと「紅白」と「笑ってはいけない」を切り替えながら、のんびりした大晦日を楽しんでいたんだけどね(笑)。NHKとは、いろいろなご縁が重なってきている。スペシャル番組や「SONGS」も反響があったし、この間もNHKのラジオに出たりして。
マネージャー:若いディレクター陣も、やりたいと言ってくださっていて。
F:そう。そういうご縁が点々とあって、ひとつのいい流れになっている部分もあるんだろうね。NHKと言えば、今年は朝ドラ「ブギウギ」を見てるんだよ。朝ドラを最初からちゃんと見るのは初めてかも。お付き合いのある水谷豊さんと伊藤蘭さんの娘さんだから、見ちゃうんだよ。しかも、昔ポニーキャニオンにいた、久留米までスカウトに来てくれた木下さんっていう人のお嬢さんがダンスの振付を担当してる。上京当時、木下さんの奥さんにも可愛がってもらってたんだよね。田舎から出てきた男の子たちってことで、ご飯作ってくれたり、マンションのドアノブにお弁当かけておいてくれたりして(笑)。そのご夫婦の、当時小さかったお嬢さん、なっちゃんが「ブギウギ」のダンスを作ってるわけ。クレジットを見て「あっ、“振付:木下菜津子”って出てる!」って(笑)。そういうこともあって、リアル身内感覚でずっと見てる。もちろん題材が音楽ネタだから面白いっていうのもあるしね。そう思うと、なんだかんだNHKづいてる一年だったのかもしれない。
●全都道府県に行くってこういうことか、と実感
〜40th Anniversary Tour 2023-2024〜
———40周年ツアー、ここまでの手応えはいかがですか。
F:内容も出来もお客さんの反応も、全体的にほぼ完璧! バランスもちゃんと考えて作ったセットリストだし、お客さんもめっちゃ楽しんでくれているのが分かる。バンドも、ここへ来て、さらにまとまりが出てきているよ。一緒に飯食ったり、バス移動したりっていうコミュニケーションが増えてくるからね。自然に、文字通り息が合ってきている。最初は、長いツアーだから途中で曲を入れ替えていこうかなとも思ってたんだけど、まだ観ていない県の人がいるわけだから、逆に入れ替えづらくなってきたね(笑)。それだけセットリストの完成度が高いから。そうそう、体調不良で北海道公演を延期してしまったのは申し訳なかった。振替公演が半年後なんだよね……。今回は北海道で声が出なくなって、すぐ東京に帰って、翌日に耳鼻咽喉科に行った。我慢できるものや薬で一時的に抑えられるものならまだいいけど、喉はなぁ。
———ただ、短期間で回復に尽力されたこともあって、かつしか公演で復帰された日の喉は完璧でした。
F:いやー、ちゃんとやれてホッとしたよ! でもねえ、やっぱり怖かったんだよ。前に中止になった時もそうなんだけど、「どうしますか?」って聞かれるわけ。やるかやらないか。
マネージャー:最終的に、フミヤさんにしか調子は分からないですからね……。
F:悩んで「やる」って決めるんだけど、言った後「ああ、やるって言っちゃったなー」みたいな(笑)。実際に俺もやってみないと分からない部分もあるからね。しかも、かつしかで復帰した翌日が岩手日帰りというハードスケジュール(笑)。もちろん泊まってもよかったんだけど、それよりも東京に帰ってメンテナンスした方がいいから帰った。毎週末が本番という状態を半年ぐらい続けるということは、風邪も引けない。たとえ体調不良になっても、1週間以内に治さなければいけないっていうことだよね。これまでも体調には気を付けてきたけれど、今回のことでさらに肝に命じたこともいろいろある。チェッカーズ曲、とくに芹澤さん楽曲はキーが高くて声を張る必要がある。だから、より真面目に生きていかなきゃと思って、タバコもやめ、酒も本番前日はほぼ飲まないし。
マネージャー:どんなに(木梨)憲武さんにタバコを勧められても断ってましたからね。
———憲武さんとヒロミさんとは、職業が違いますからね(笑)。
F:そうなんだよー! 俺はコメディアンじゃなくて歌手なんだからさ(笑)。まあ、そうやって地道に自分を律しているのも、健康やコンディション維持に効いているとは思う。声帯という器官は、男性で2センチ、女性で1.5センチぐらいしかないんだって。俺の場合、その2センチにすべてがかかっているという。しかも、それを人よりも使いつつ、いい状態を保たなければいけない。チェッカーズでは一度も公演中止がなかったんだよ。もちろん体調が悪いときはあったけど、若さと根性だけで乗り切ってたんだろうな。でもこの歳になると、どうしても若い頃より回復に時間がかかる。この間も医者が言っていたんだけど、コロナ以降みんな免疫力が落ちていて、コロナやインフルエンザ以外でも、感染症や帯状疱疹にかかる人もめっちゃ増えてるって。
———そうなんですよね。音楽や演劇ほか、多くのイベントで公演中止が続いています。
F:なんせ、3年間もマスクや消毒をしてたからね。感染症対策として仕方なかったけど、今まではこんなに潔癖じゃなくて、いろんなもん触って免疫がついていたわけだから。過敏にはなりたくないけれど、今は仕事のことを考えると、人混みに出るのも新幹線や飛行機も怖くなっちゃうよな。相手が元気に見えても、ウイルスを持っているか、自分が感染したか、その時には分からないわけだから……。まあ、いろいろ気を付けつつ、普段からしっかり免疫力や体力を上げておくしかないね。
———今回のツアーでは初めて全都道府県を訪れているわけですが、そこはいかがですか。
F:まさに、全都道府県に行くってこういうことか!と、その大切さをすごくリアルに実感しているところ。これまでも全国ツアーはしてきたけれど、全都道府県となると、また違う感覚。これは自分でも、やってみて気付いた。それによって新たな考え方やアイデアが生まれてきているし、全公演をやり終えた時点で、また見えてくるものがありそうだなと感じている。ここまで細かく全国を回るというのは、大変ではあるけれどすごく楽しい。ずっと応援してくれているファンに会いに行くのはもちろん、新たに出会う・繋がるという意味でも、いいことなんじゃないかなって。県庁所在地だけでやっているわけではないし、会場のスケジュールもあるから第二都市や初めての街に行くことも多くて、それもいい。例えば四国だと、香川の高松にはよく行ってるけど、高知や徳島は15年ぶりとか。やっぱり“我が街に”となると、お客さんも来やすいのかもしれないよね。「藤井フミヤが地元に来るんだ、それなら行ってみよう」という人が結構いるのは感じる。あとは実際に見てくれた人たちが、どれぐらい次に来てくれるのか、周りに話したくなるようなステージを届けられるか。本当なら俺も、せっかく行ったんだから各地の名所を見るとか街歩きをしてみたいんだけど、それ以上に体力温存とか体調管理が最優先だから。そこがちょっと寂しいけどね(笑)。今回は半年ですごい本数をやっているけれど、例えば今後、1年かけて全国をゆっくり回るというのもありかもしれないな、とも思う。俺は地方に行くと必ず、今自分がどこにいるんだろう?って地図で確認するわけ。地形とか見ながら「なるほど、ここに街ができた理由はこういうことか」って背景を考えたり。それがまた楽しいんだよ(マネージャーに)そうだ、大きい日本地図を毎回楽屋に貼って、行った都道府県を塗りつぶしていこうよ!「今日はここ」って。最後に完成した絵を撮りたいよね。
———いいですね。フミヤさん自身の御朱印帳みたいに全国制覇していくという。
F:そうなんだよcomuを読んでいると、ファンの子は遠足みたいになっていて楽しそう。どこの何々を食べるとか、どこのお寺に行くとか。遠征先でFF仲間と落ち合ったり、弾丸日帰りでもコンサートだけで帰るんじゃなく、あちこち満喫してるらしい。ツアーグッズの御朱印帳も活用してもらえているみたいで、御朱印を押してもらうだけじゃなく、旅先の日記を書いたりとか。ファンのみんなも、ツアーとかアート展を目的に3箇所に行こうと思ったら、それだけで年3回は旅行ができるわけじゃん。そういうのを見ていても、いろいろアイデアが広がるよ。
●とにかく、休みなく歌ってる
〜2023年から2024年へ〜
———まだツアー中なので年末の区切りという感じではないとは思いますが、2023年を振り返ってみていかがでしたか。
F:そうか、もう今年を振り返る時期なのか。今年はやたら長く感じるんだよな。なんでだろう?
マネージャー:ずっと歌っているからかもしれませんね。去年は冬にF-BLOODの25周年があって、今年に入って2〜5月にSpecial LoveSong、そして9月から今の40周年なので。
F:俺の感覚では、Special LoveSongはもう去年のことのように感じちゃうんだよね。たった半年前か。ちょろっと休んで、すぐに次が始まったんだな。Special LoveSongは、本当にいいツアーだったよね! シングル曲やチェッカーズもほとんどないのに。
マネージャー:セットリストの曲の馴染みがよくて、すごくワクワクする感じがありました。
———アルバム『水色と空色』中心とはいえ、振り返るとアルバムツアーという印象ではなくて、Special LoveSongというパッケージとして印象に残っています。
F:まさにそう。その点で、不思議な存在感のツアーだったよね。すごくいい作品として仕上がったと思うし、じっくり藤井フミヤを堪能してもらえた。そのあと今の40周年ツアーに入って、年末は紅白でしょ。40周年ということもあって、ありがたいことに、すごく充実した一年を過ごせていると思う。来年は後半戦ということで、とにかく健康第一に尽きるな。6月9日には武道館が決まった。これはセンターステージだし、またいろいろと考えるよ。とにかく、休みなく歌ってるよね(笑)。さすがに6月にツアーが終わったら休むんだろうけど。
マネージャー:そうですね。すでにいろいろなオファーはいただいているので、オフ以降の活動も視野に入れつつ。
F:来年の後半は、また曲とか作っていくのもいいかもね! ソロとF-BLOODの制作も、並行していいんじゃないのかな。
———あと、2024年とは言わずとも、そろそろまたFF会員限定ライブ「CORE」も?
F:CORE、またやりたいね! あれは本当にわがままに選曲できるからな。代表曲の「TRUE LOVE」や「Another Orion」ではない、むしろ普段のツアーでは絶対歌わないマニアックな曲ばかり選ぶこともできる。時期はまだ見えないけど、もちろんまたやるよ。
マネージャー:40周年ツアーでも、500曲近くあるレパートリーから24曲しか披露されていないわけですからね。ファンの皆さんもそれぞれに聴きたい曲があるかと思いますし。
———Spotifyのプレイリストもそうですが、曲に出会い直す楽しさってありますよね。来年以降の活動も、ファンの皆さんにご期待いただけそうです。
●みんなの一年と重ねて楽しんで
〜冊子会報「FFF」〜
———ファンクラブでは今年も、Web会報4回分をまとめた冊子会報の発行時期となりました。
F:(チェック用の冊子をめくりながら)こうやって冊子で1年分の会報を読み返してみると、かなり読み応えがあるよね。ちゃんといい紙を使ってるし。
———Web会報になってからは文字数が無制限なので、超ロングインタビューのようなことが贅沢にできます。
F:そうだよね。今回そういう文字数の事情を忘れてチェックしていたから、F-BLOODとか、すっごいボリュームあるなと思ってた。これはゆっくりたっぷり楽しんでもらえるんじゃないの。
マネージャー:いわゆるコロナ禍が明けて元に戻ってきたのが2023年でした。ちょうどVOL.117の「彩事季」(冊子会報P.30)の写真が、マスクなどの制限が解除されたLINE CUBE SHIBUYAでのライブです。
———これ、いい写真ですよね。去年の冊子はまだコロナの影響が濃かったので、2冊を読み返していただくのも味わい深いかもしれません。
F:本当に、やっとここまで日常が戻ってきたよなぁ。みんなも冊子で参加したライブを振り返ったり、自分の一年と重ねて楽しんでもらえたらいいね。
———また、武道館のステージ詳細が決まったらお話を聞かせていただこうと思います。ありがとうございました。
※インタビュー以降に内容に変更が生じている場合があります。ご了承ください。