Fumiya’s Favorite ー 「三の隣は五号室」

「いいと感じたものは、FFメンバーとシェアしたい」。
そんなスタンスで、フミヤのおすすめ&お気に入りをご紹介するコーナー。
今回フミヤのアンテナがビビッととらえたのは、こちらです!

これまでの人生で、何冊の小説を読んだだろう。その中でもこれは、変わっているタイプの面白い小説・ベスト3に入るかも。

作家の長嶋有さんは、小説家になるために生まれてきたのだと思う。久々に、作家というのは凄いなぁと思った。案の定、これまでに4つも賞を受賞されている。

「三の隣は五号室」は、こんな小説の書き方があるのか!と感服した。タイトルからは密室殺人のような推理ものを想像したのだが、まったくそんな内容ではなく、逆に期待ハズレどころか大アタリだった。

五号室、それは藤岡荘という木造アパートの一室。その部屋自体が主人公のような設定なのである。

ページを開くと、本編が始まる前に【第一話 変な間取り】とある。そこには、これまでに藤岡荘五号室に住んだ人々のことが軽く紹介されている。ここで五号室の間取りを想像するのだが、どうも頭の中の間取り図が釈然としないところがあって苦戦した。
すると数ページ後、本編最初のページに、間取り図が描かれていた。なんだ、早く言ってくれよ!という感じだったが、あえて先に自分なりに想像してから答え合わせをする感覚も、面白いのかもしれない。とにかく、まず間取り図をしっかり頭に入れてから読まないと、話の内容がしっかりと入ってこないのだ。

物語は、これまで約50年間に渡り藤岡荘五号室に住んでいた13世帯の話が、行ったり来たりする。一人・夫婦・親子と、さまざまな構成の13世帯。もちろん別々の時代に住んでいるから、全員が誰とも出会っていない。それぞれが五号室に住んでいる間に起きた出来事が描かれているのだが、これが妙に繋がっていたりするのだ。
笑えるところもあれば、胸がキュンとするところもあり、泣けるところもある。最初はコミカルな内容かと思いきや、13世帯の人々が織りなすヒューマニズムあふれる深いドラマだった。

これだけの人間模様を織り上げて布のように構成できているところが、この小説の面白さであり、作家の力量だ(毎度のことながら私は作家の語彙量に感心する。全部きちんと読めて意味まで分かる人は大したものだ)。

正直、もう一度くらい読まないと、時間軸が交差しすぎていて完全には把握できていない。読みながら年表のように線を書いて、年代・住人の名前・キャラクターを紙に書けば分かりやすかったかなと思った。
これから読む人は、部屋の間取り図を目の前に置き、年表を制作しながらだと、より分かりやすく楽しめると思う。なんなら、間取り図のページをスマホで撮っておくとか、コピーして折りたたんで栞にして、確認しながら読むのもいいかもしれない。

「三の隣は五号室」。あまりにも素晴らしい本だったので、私はしばらく長嶋有さんにハマる予定です。