彩事季 – 「FFという渦」

現在、40周年コンサートの真っ最中である。今回のツアーでは、全都道府県を回っている。
FFメンバーの中には、地元以外にもいろいろな会場へ遠征する人が少なくない。電車や新幹線や飛行機に乗り、日帰り、時には宿泊する。ちょっとした国内旅行だ。一人旅のスタイルもあれば、友達やパートナーと、という場合もあるようだ。もちろん、どうせ遠征するなら観光や地元グルメも楽しんだ方がいい。そのためには、事前にSNSやインターネットで情報を集めるのだろう。

さらに、そこでもうひとつ活躍するのが、FFというネットワークだ。FFのメンバーは全国にいる。遠征先の地元に住む人からの情報は、ネット上の情報よりもコアでリアルだ。みんな公演スケジュールは把握しているので、事前にcomu comuなどで「もし〇〇に来るなら、ここがいいよ!」などと、地元のおすすめ情報を知らせてくれていたりする。さらにコミュニケーションが進めば、連絡を取り合い、現地で合流して行動を共にすることもあるだろう。

今この瞬間も、FFのメンバーは、それぞれの都道府県で生活している。赤の他人で知らない者同士だが、“藤井フミヤ”という共通点がある。もしFF同士が偶然相席し、「初めまして」から始まった場合も、ひとたびその共通点に気付けば、1時間以上は盛り上がるかもしれない。よくあるパターンは、グッズがよい目印になる出会いだ。「あっ! そのバッグ……もしかしてFFですか?」と、会話が生まれる。私自身もグッズを身に付けた人に遭遇すると、心の中で「あっ、身内だ!」と思う。
“藤井フミヤ”を共有するFFメンバーは、せっかくなら、もっとこのコミュニティを活用してほしい。なぜなら、すでに仲良くなれる共通のコンテンツがあるのだから。単に映画好きや旅行好き同士という以上に、ノリが良く会話が弾むのではないか。

それこそ、comu comuをうまく活用すれば、お互いの人生において助け合うことだってできる。生活上で何か困ったことや悩みがあり、「〇〇な時にはどうすればいいのか?」という質問をすれば、きっと数人のFFが答えてくれるだろう。一般的なインターネット上のQ&Aよりも、同じFFメンバーとして、もう少し親身になってくれそうな気がする。世代が近い同士なら、悩みも共通するものがあるだろう。逆に年上の意見、年下の意見、いろいろな視点があった方がいい。きっと医師も看護師も、外科も内科も歯科も、弁護士も税理士も保育士も教師も、営業も技術者も個人事業主も専業主婦も学生もバイトもいる。単身者もバツ2も新婚もいる。出産も子育ても離別も介護もある。あらゆる職業や経験を持った人が存在するので、多角的なアイデアが出るはずだ。

人間は、死ぬまで生きる。その間に生じる悩みや困難は、自分だけの知識では解決できないことも多い。FFの中には、自分より先に経験を持った人や、面白いアイデアを持った人が大勢いる。その中で、より自分に合いそうなものを必要に応じて選べばいい。誰かの経験から来る知識を教えてもらうことは、生きていく上で大切なヒントとなるはずだ。
歳を重ねるほど、今までできたコミュニケーションが苦手で面倒になり、できなくなってくる可能性もある。一般的に、人生において長く続く繋がりは身近な家族や親戚や友人だが、その中にFFがあってもいいのではないだろうか。実際に私自身はそう思っているし、みんなにとっても、そういうコミュニティになれば嬉しいと望んでいる。FFメンバーの知識や情報、さらに言えば思考や魂の集合体。それが、今あなたのいるFFというコミュニティなのだ。

“ソロシンガー 藤井フミヤ”になって30年が経ち、FFも30年が経つ。世の中のテクノロジーとともに、ファンクラブというものもずいぶん進化を遂げた。冊子だった会報はデジタル化され、郵便でのファンレターもcomu comuやSNSというインタラクティブなコミュニケーションに変わった。かと思えば、今なお手紙を書いてくれる人もいる。FFは、時代の流れに乗りながら絶え間なく動いている生命体の渦のようなものである。
“藤井フミヤ”はコミュニティの中心に、台風の目のように存在してはいる。でも実際のところ、FFメンバーという渦が常に回っているから、“藤井フミヤ”が存在するのだ。渦が消えれば“藤井フミヤ”も消滅する。しかし、“藤井フミヤ”が消えたらその渦が消滅するかというと、そんなことはない。渦が回ってさえいれば、“藤井フミヤ”は存在する。

宇宙には、数えきれないほどの渦が存在する。地球も、銀河系という渦の中で回っている。渦はエネルギーの集合体。FFも、宇宙の中のひとつの渦なのだ。