FF SPECIAL INTERVIEW

約10ヶ月にも及ぶ全都道府県ツアー、そして武道館でのFINALを終えたフミヤにインタビュー。
もちろんFFの皆さんも、ツアーを共同創造してきた構成メンバー。
フミヤ目線でツアーを語る「彩事季」や「武道館特集」と併せて振り返りつつ、
ともにアニバーサリーイヤーへの祝杯を捧げたい。

F:それから、もうひとつ実感したのは、カムバック世代の存在。チェッカーズの時は小学生だったからライブを見たことないとか、ソロの最初に行ったきりだから久しぶりに行ってみよう、とか。どんなアーティストもアニバーサリーツアーというのは代表曲がメインになるから、ライブ初参加や復活のいいきっかけになるんだよね。彩事季にも書いたけれど、ファンの年齢的に子育てが落ち着いた頃だったりして、多くの人にとってタイミングがよかったんじゃないかな。かつ、最近の80年代ブームもあって、若い世代が混ざっているのも面白い現象。コンサートに来た知り合いが、「意外と20代30代がいて驚いた」って言ってたからね(笑)。あと最近気付いたのが、カラオケでチェッカーズの曲をかけると本人映像が流れるじゃん。そこには当然、20代の俺らしか出てこない。意外とああいうので一般の人たちが俺らの姿を目にする機会もあるんだなぁ、と。自分が興味なくても、友達がいつも歌うから覚えちゃったとか、映像が目に入ったとかいうのも、結果的に“擦り込み”みたいなものかもしれないなと(笑)。

F:俺たちが売れてたのはテレビの歌番組も多かった時代だし、当時人気だった曲はファンじゃなくてもだいたい知ってるからね。今回ツアーが盛り上がった要因として、そういうこともボディブロー的に効いてるのかもなぁと思った。そうそう。若い世代と言えばさ、この間、井上尚弥くんと弟さんとカラオケ行ったんだよ。

F:そう。あの、ボクシング4階級制覇の井上尚弥くん。弟の拓真くんもチャンピオンなんだよ。二人とは初めて会ったんだけど、カラオケ行って「俺の歌なんて知ってる?」って言ったら「知ってるも何も、いつも歌ってますよ」って。じゃあ何歌ってほしい?って聞いたら、尚弥くんが「時のK-City」、弟が「Long Road」って言うんだよ(笑)。何そのマニアックな選曲!って大笑い。彼らもチェッカーズと藤井フミヤ縛りで15〜16曲ぐらい歌ってくれたんだけど、拓真くんの「Room」とか、めっちゃ上手いの。うわ、これは本当に普段から歌ってるやつだ!って(笑)。

F:いやそれがさ、俺もそうじゃないかと思って「お母さんがチェッカーズファンだったの?」って聞いたんだけど、そういうわけでもないらしくて。彼らはあの年代の音楽が大好きみたいで、山口百恵さんとかも歌ってたし、むしろ今の歌手にはあんまり詳しくないんだって。まあ、彼らは年季が入ってるのかもしれないけど、最近は世間でも昭和や80年代がブームだしね。ファッションのトレンドにおいても、若い子が今チェックを着ているし。ちょうど40周年にいろんな要素が運良く重なってくれたことで、大きな波となってツアーも盛り上がった気がする。今回のツアーは年をまたぐ長い期間だったから、年末は紅白でファンも大晦日まで盛り上がってくれたし、ドキュメンタリー番組がオンエアされたり、文化庁の芸術選奨で賞をいただいたりもしたしね。あと、コンサートを観てくれた人が、comu comuだけでなくTwitter(X)とか自分のSNSで感想を書いてくれたことも、ありがたかった。最近は小田和正さんや山下達郎さんも毎年ツアーをやるようになったし、小田さんが数年前に、ここからまたファンが戻ってくるんだと言ってたんだよ。意外とこの年代から、そういうことが起き始めるのかもしれないね。

F:チェッカーズ、F-BLOOD、ソロ、そしてミックスという構成。とにかく曲が40年分あるから(笑)、セットリストを作るのにはけっこう時間がかかったよ。なるべくメジャーなシングル曲を入れようとは思ったけど、流れというものがあるからね。なおかつ、全体に対するベストな分量と配置をすごく考えた。あんまりチェッカーズばっかりやるのも違うし、チェッカーズの中でも芹澤先生の曲とバンドオリジナル曲が何パーセント、F-BLOOD、ソロがそれぞれ何パーセント、みたいな。どれも、多くても少なくてもいけない。とくにポイントだったのは頭の3曲だね。ここで、どのぐらい観客のテンションを上げられるか。頭はインパクトがあった方がいいし。ちょっと声を張る必要があるから喉の負担が大きい曲なんだけど、やっぱりファンが喜ぶだろうな、というのを第一に考えながら作ったから。

F:バンマスのおーちゃん(大島賢治氏)を中心に、いいバンドだったね。何本もやっていくうちに、最終的にはひとつのバンドとしての音にまとまっていった。今回は、ピアノのサクちゃん(櫻田泰啓氏)だけが初参加。サクちゃんと俺の音楽的な相性は抜群だった。「Another Orion」の前の長いピアノソロは毎回アドリブで、1回も同じ演奏を聞いたことがない。衣装を着替えながらも、おぉ!今日はこんな感じかぁと毎回楽しみにしてたんだよ。そういえば福岡公演で、サクちゃんがソロをいつもの3〜4倍長く弾いたことがあった。あれっ今日どうしたんだろう、イントロまだ?みたいな(笑)。そしたら、その日は俺の胃の調子が悪かったから、スタッフから「もしフミヤさんがトイレに行った場合は、長めに弾いて繋いでください」って内容のメモを、完全にトイレに行ったものだと思い込んでたらしいんだよね。でも俺は行ってなくて、むしろとっくにステージに戻ってたのにサクちゃんは気付いてなくて(笑)。気を遣わせて悪かったけど、あとでスタッフから理由を聞いて笑った。

F:本当だよな。みんなで日本地図を制覇していく旅だったよ。しかも会場によっては県庁所在地ではない第二、第三の都市に行くこともあるから、俺も初めて行く場所がかなりあった。今どこだろう?って地図を見て「俺は今、日本のここにいるんだな」みたいな。それもなんとも楽しかったよ。バンドはよく飲むメンバーだったけど、みんなで2軒目に行くことは一度もなかったし、9時とか早い時間に解散してた。たとえ次の日にライブがないとしても、俺は早く寝たい、回復したいっていうのが先だったし。

F:そうなんだよなぁ。今日ここが終わった、来週はあそこだ、移動を除くと何日間しか空いてないな、とかさ。

F:まさにそうなんだよ。今回一番大変だったのは、そこだった。休むことも仕事のうちだからね。若い頃とは回復の速度も違うし、ライブ後の回復やメンテナンスにすごく気を遣った。北海道は風邪で延期になってしまって申し訳なかったけど、奇跡のような振替ができてよかった。延期でだいぶ先になってしまい、本当にお待たせしました!っていう感じだったよ。最後だったから、ステージの完成度は間違いなく上がってたけどね。最後の岩見沢が終わった時は、本当にホッとした。

F:今回の武道館は、たった1日しかない割に、すごく完成度が高くて大成功だったと思う。それは、バンドがここまでホールを60本やってきたことに加えて、制作側にも円形ステージ経験者が多かったからなんだよね。俺も制作スタッフも円形に慣れているというのは大きかったと思う。セットリストは、基本的には40周年ツアーの締めだから大幅に変える必要はなかったけれど、演出が完全に別物だから、同じ曲でも見え方がまったく違う。かといって演出は大仕掛けなものに頼ることなく、生でできたのがよかった。普通、ソロであの規模で歌うならダンサーとか派手に使うケースが多いけれど、そういうのもないし。サウンドも「UPSIDE DOWN」以外は全部生だし。始まったらすぐ終わるんだろうなと思ってたら、案の定だった。本当に怒涛のような、あっという間の時間だった。途中でも自分で何やってるか分からないぐらい、ただ身体が音楽に反応して歌っている感じだったからね。完全にやり尽くして、燃え尽きた(笑)。

F:あと今回はFFメンバーの、40周年の最後を見届けるぞ!という勢いが本当にすごかったんだよ。内容がホールとほぼ同じでも、それが武道館ならどういう風になるのか? それを見たい!というワクワク感が事前から伝わってきた。その意気込みたるや、俺以上にすごい勢いだったからね(笑)。ありがたいことだよ。そして当日、その勢いを3倍ぐらいに高めたのが、緞帳だった。あれは興奮したんじゃないかな。チェッカーズの時にも何度かやっているから、それを経験した人や知っている人は、会場に入った瞬間に「うわーっ、これはあの時の!」ってイメージが重なったはず。そこから幕が落ちるまでの時間を、興奮とともに楽しんでもらえたと思う。一回目のツアーミーティングで、「オープニングで幕を振り落としたいんです」という演出アイデアを聞いて、それは面白いじゃん!と。演出の岡崎さんが、チェッカーズの時に初めて振り落としをやったのは、大阪城ホールだったんだって。当時、無事に落ちたのを見届けて、中尾監督と一緒に涙ぐんだと言ってたよ。その二人と今回も一緒にやることができた。観客が入場してあの幕を見ればこれから起こることは分かるんだけど、実際に落ちると、たった数秒間で全員がうわーっとなる。すべてが一点に集中して注がれる瞬間の感覚は、すごかったよ。完全に作戦大成功だったね。

F:シルエットになるポーズも、どうするのがベストかと考えた。チェッカーズのGOツアーの時は、こうだったんだよ(肩の高さで右手が前、左手が横)。あえて一緒にしようかなとも思ったんだけど、やっぱり一緒じゃつまんないから、片手を上にあげることにした。ただ、シルエットが映るのは本当に一瞬。緞帳は、始まったと思ったら意外とすぐ落ちる。あえて短くしたんだよ。そして、緞帳があるとなると、1曲目はホールでやってきた「星屑のステージ」とは変える必要がある。もともと1曲目は変えようと思っていたんだけど、緞帳と合わせるなら「ギザギザハートの子守唄」にしよう、という感じで決めていった。最初の3曲だけで、サウナかと思うぐらい汗でびしょびしょになったよ。

F:そう。今回は歓声があったから、それに触発された感じで、つい俺も盛り上がってしまいそうになる。だから自分に「ダメだ、俺は盛り上がっちゃいけない!」と言い聞かせてた(笑)。なにしろ最初から「ギザギザ」だからさ、歌いながら「ここでやりすぎるとやばいぞ、次は『ジュリア』じゃん。落ち着け、落ち着け! 力むな、力むな!」と。動きも喉も、ここで興奮しすぎると後でしんどくなる。だから、ああ見えて意外と冷静でもあったね。歌自体はしっかり届けるけれど、同時に動きや進行を考えながらやるから。ここはステージの外周を歩くとか、ステージがリフトで上がるとか、楽器を持つとか、着替えるとか、気を遣うポイントが普段よりめちゃくちゃ多いんだよ。ただ、あまりに先を考え過ぎて「I Love you, SAYONARA」が終わった時、「Cherie」が頭から抜けて、その次の「NEXT GENERATION」だと思っちゃったからね(笑)。ハーモニカを取ってきて構えていたら、尚之が「Cherie! Cherie!」「あ、そうだった」って(笑)。こんだけ60回もやってきたのに、やっぱりそれだけ特殊な状況なんだよ。

F:武道館に向けて、1ヶ月ぐらい前のライブからイヤモニを使って慣らしていった。やっぱり最初は歌いづらくてねー。イヤモニは自分の骨伝導が入るから、耳を塞いで歌ってる感じなんだよ。耳塞いでしゃべると声がこもるじゃん、そういう感じ。バンドの演奏は完璧に聞こえるけど、自分が歌う声はこもる。徐々に慣らして、本当にギリギリでやっとOKという感じになってきたね。MCでは片方外したりしてた。

F:動き回ると言えば、観に来てくれた生田斗真くんから「あの動きは一から十まで全部決まってるんですか?」って聞かれて「いやいや、逆にそんなに決めて覚えられない。ここで動くとかサビで戻るとか、その程度だよ」って。すごくきっちり決め込んでやっていると思ったらしくて(笑)。もう長年の経験があるから当たり前になっちゃってるけどね。

F:あそこはステージの内周も外周も全部使うからね。歓声のデカさでいうと、やっぱり「REVOLUTION 2007」がすごかった。ここから、ロックンロールという男女が踊るための音楽で求愛しようぜ!っていう時間(笑)。あとはノンストップで本当に記憶にないぐらい。唯一休憩できるのが「I LOVE IT!ドーナッツ!」だったもんなぁ。

F:ほら、尚之と俺で歌が半々じゃん。尚之が歌っている時は少し休めるんだよ。見た目は派手に動いてる曲だけど、俺の喉だけが密かに休憩できるという(笑)。あそこも、ゲネプロの時は俺がイニシアチブを取って先に外周に出て、尚之が着いてくることになってたんだけど、当日リハで、「やっぱ尚之お前が先に出て、俺を連れていけ。俺が着いていくから」って。尚之がイニシアチブとった方が面白いしね。あと、アンコールの「紙飛行機」は盛り上がったね。かつてないほどの紙飛行機が、曲が終わってもまだ飛んでたね!(笑) やっぱりあれは普段できないことだし、武道館ならではの風物詩ってことで印象的だった。あとは、照明やレーザーも全体的に綺麗だったね。RED PARTYはステージの床まで映像だったから、今回はストレートにシンプルで。といっても十分カラフルで凝ってたし、効果的に使われていた。

F:今回は自分でスタイリングしたんだよ。RED PARTYが赤だったから、違いを付けて黒。頭のチェッカーズブロックは、スパンコールのジップアップジャケット。最初の3曲ではサウナみたいに暑かったけど、後で映像を見たら不思議とそこまで汗だくには見えなかったからよかった(笑)。F-BLOODとソロは、オーダーしたシャツ。白いパイピングがほんの少し入っている。ここは、シャツ1枚ぐらいの方がいいだろうと。そして最後はノースリーブ。直前に俺が見つけて、家で着てみたらロックっぽくて、これ後半いけるかも?と思って採用。襟もあるから程良い感じなんだよね。しかしあれ、ノースリーブになっただけで、なんであんなに興奮して盛り上がるんだろうな?(笑) しかも「REVOLUTION 2007」の前奏で早着替えがあったからね。あそこは俺がステージを降りたことに気付かないように照明も工夫してもらって、バンドにも盛り上げ続けてもらった。今回の衣装は、決して派手に変わるわけじゃないんだけど、いい感じで変化を付けられた。自分でスタイリングした割には大成功だったな。

F:後半はほぼ記憶がないけど、ミスがめっちゃ少なかったから、全体的にいい出来だったんじゃないかな、とは思った。

F:そうだよなぁ。アンコールまで来ると、完全に山を越えた感じはある。やっぱり本編は本編、アンコールはアンコールだからね。最後の「I have a dream」を歌い終えた時は、もう1曲も歌えない!と思った。出し尽くした。すでに、持っている以上の力を出していたんだよね。俺のバッテリーはとっくにゼロになってるんだけど、周りの客席から受けるエネルギーでだけで動いているような感覚があったから。よくあの後、打ち上げであれだけ飲めたなぁと思うよ(笑)。明日から何もないぞ!と思ったから久々に飲んだけど。

F:尚之、そうだったんだ!(笑) とにかくすべてがいい形で終わって、ホッとしたよ。

F:そうなんだよ。全都道府県ツアーをやってみるまでは、アニバーサリーだから今回だけだと考えていた。でも実際やってみたら、ぜひまたああいう規模で全国ツアーをやりたい、という思いが出てきたんだよね。やりたいし、やった方がいいだろうなと。完全に体力勝負だから、3年後とか5年後とか言ってられない。今回61本やったからって、次は62本って増やしていくわけにもいかないんだから(笑)。体力的には大きい会場1本の方が楽だけれど、自分の歌やサウンドはホールが一番合うし、距離感も雰囲気もお客さんに伝わりやすいと思ってる。そうすると、どうしても本数が必要になるんだよな。武道館はいいんだけど、常にアリーナだけでやるようなタイプのアーティストではないというか。山下達郎さんとかも音質にこだわってホールでしかされないけど、それに近い。ま、数年後どうなるかなんて、なるようにしかならないからな。今回、全国を回って喜んでもらえたし、FFメンバーの勢いがすごくてありがたかった。次に繋がる、実りあるアニバーサリーツアーだったと思う。今後もやれるだけやっていくよ。

F:長いことツアーに全力を注いできたから、さすがに年内はほぼ休ませてもらうよ(笑)。そして来年は、また全国ツアーのための一年になると思う。今のところリリースの予定はないけど、なんせ曲はたくさんあるし、今回入れられなかったものも多いからね。武道館もまたいつかやりたいし、ここから体力が落ちないように、トレーナーとか付けたりして頑張っていこうと思ってる。また来年ツアーで会えるのを楽しみにしていてほしいね!

※インタビュー以降に内容に変更が生じている場合があります。ご了承ください。