Fumiya’s Favorite ー 二人の女性作家

「いいと感じたものは、FFメンバーとシェアしたい」。
そんなスタンスで、フミヤのおすすめ&お気に入りをご紹介するコーナーです。
今回フミヤのアンテナがビビッととらえたのは、こちら!

「うたうおばけ」くどうれいん 著(講談社)/「じゃむパンの日」赤染晶子 著(palmbooks)

エッセイとは、形式にとらわれず個人的観点から物事を論じた散文。私は時々エッセイ本を買う。自分もこうして文章を書くので、その勉強にもなるからだ。

今回は、二人の女性作家のエッセイ本を紹介する。
1冊目の「うたうおばけ」は、帯の推薦文に「上白石萌音さんが何度も読み返す、愛する一冊」と書いてあった。なるほど、あの子が何度も読み返すのか……彼女の心が少しはわかるかもしれない……そんな、おじさんファン心理で手に取った。
「じゃむパンの日」は、書店員の推薦カードに「エッセイ本の傑作」と書かれていた。傑作?! そりゃ買うしかないでしょ。要はどちらも、出版社や書店のプロモーションにまんまと乗せられたのである。とはいえ、私にとってどちらも本当にいい本だった。

とくに2冊を続けて読んだことで、二人の時代・文化・心情の違いが比較できたことが、とても面白かった。
まず、「うたうおばけ」のくどうれいんさんは、1994年(平成6年)生まれ。一方、「じゃむパンの日」の赤染晶子さんは、遡って1974年(昭和49年)生まれ。二人の生まれには20歳の差があり、くどうさんは平成の岩手、赤染さんは昭和の京都と、環境や時代背景も異なる。出てくる会話の口調も、「うたうおばけ」はほぼ標準語、「じゃむパンの日」は京都弁。まったく違う文体で、それぞれの実生活の中で心に残った風景・状況・感情が紡がれている。
エッセイ集なので、10ページ以上ある話もあれば1ページで終わるものもあり、前者は39篇、後者は55篇で構成されている。全体的に心温まる緩い話が多いが、どこか鋭角的な視点もある。どちらか1冊でも充分にいい本だが、2冊続けて読むとさらに面白さや発見が倍増するので、おすすめしたい。

赤染晶子さんは、残念ながら病気のため2017年に42歳で亡くなられている。彼女の他の著書を検索していて、そのことを知った。くどうれいんさんは、本の中にもよく登場する男性と2023年に結婚されたらしく、今も盛岡を拠点に活動されているようだ。これを機に、赤染晶子さんの第143回芥川賞受賞作品「乙女の密告」、くどうれいんさんの第165回芥川賞候補作となった小説「氷柱の声」も読んでみたい。