彩事季 – 「終わりと始まり」

なんとも言えない虚しさを感じている。悲しさでも淋しさでもなく、虚しさ。
自分が3年ほど関わったアートギャラリー。面白い場所だったが、いくつかの理由とタイミングが重なり、終えることにした。虚しいのは、達成感より喪失感の方が上回っているからだろうか。それとも、どこかに未練や後悔があるのだろうか。
もちろん、いろいろ楽しいことや新たな出会いもあったので、すべてが無駄だったわけではない。住む場所ではないけれど、そこで過ごす時間はそれなりに長かった。たくさんの思い出もあるが、たくさんの物もある。思い出は持って行けるが、物はすべて持っては行けない。自分で作ったり購入したりした物も、多くは行き場がなく処分することになった。
多くの人たちと時間と労力と資金をかけて造り上げたギャラリー。そのすべてを壊してなくすことの、なんとも言えぬ虚しさよ。溜息をつきながら、自分は馬鹿で無駄なことする奴だなぁと苦笑いする。ギャラリーを造っては壊すのは、これで3回目。なぜ何度も造るのだろうか……。アートが好きとはいえ、懲りない性格なのか、癖なのか。

始まりがあれば、必ず終わりがある。今という時は止まってはくれないし、人はその都度、何かを経験しながら進んでゆく。すべては時とともに移り変わる。変わらないものがあるとすれば、「この世は変化する」という法則だけだろう。
それは常に繰り返されている、生命のサイクル。芽が出て、葉が出て、花が咲き、やがて枯れて種を土に落とす。人も生まれ結ばれ、子や孫が生まれ、死んでゆく。地球がある限り、生命は変化しながら循環してゆくものなのだ。
とにかく、自分の中で気掛かりだった案件が、これでひとまず終わる。

終わりと始まりは表裏一体。今、ひとつのことが終わったということは、これから何かが始まるということだ。それが何なのかはまだ分からないが、次の新しい何かへ向かおう。今感じている虚しさは、さまざまなことへの別れを惜しんでいるだけであって、続くものではない。消え去るすべてに感謝しよう! ありがとう! 世話になった!

いったん真っ白になった心は、新たにリセットされる。やがて雨上がりの空のように雲ひとつない澄み切った青空が広がり、また新たな未来へ向かって歩いてゆく。いつまでもここに座って眺めている訳にはいかない。さぁてと……そろそろ立ち上がって、行こうかね。