

フミヤ自身による簡単で美味しいレシピをご紹介する、お料理コーナー 「F’s RECIPE」。
「最初から何を作ると決めるよりも、旬の食材や手元にある食材で作ることがほとんど」という、まさに料理上手なフミヤならではのコーナー。
ぜひ、あなたも作ってみてくださいね!
「うどんと私」
私はうどんが好きだ。いつから好きなのだろう? この問いかけは、いつからごはんが好き?と同じだ。うどんは私の人生に、優しく素直に自然にフェードインしてきて、そこにいる。
ラーメンと違い、和の出汁を使ったうどんは完全なる日本食である。うどんの歴史は古く、諸説あるが、小麦を練って食べる文化は平安時代くらいに遣唐使や空海によって中国から伝わったとされる。鎌倉・室町時代に製法が広まり、うどんの原型ができたらしい。江戸時代に各地に広がり発展し、地域ごとの特徴が生まれ、明治時代には全国的に普及したという。最近では海外でも人気のジャパニーズヌードルになりつつある。ラーメンほどのパンチ力はないだろうが、うどんも頑張っている。外国人もうどんの出汁の味が分かるようになってこそ、和食通だといえるだろう。
九州人は、意外とラーメンよりもうどんを食べる。蕎麦は基本的にあまり食べない。久留米に住んでいた頃、蕎麦屋はまったく見たことがなく、中学生の時に近所にセルフのうどん屋ができた。当時はセルフサービスというシステムが画期的で、自分で作れること自体も楽しいし、なにしろ安価だった。200円くらいで腹一杯になるそこのうどんが大好きで、友達とよく自転車で通った。当時食べたのは肉うどん、ごぼ天うどん、丸天うどんのいずれかと、オプションでかしわ飯(鶏肉の入った炊き込みご飯)のおにぎり。ごぼ天はごぼうの天ぷら、丸天は丸いさつま揚げ。かといって、子供の頃はうどんを食べてしみじみと美味いと思ったことはない。うどんはただのうどんであって、安くて腹を満たすものであり、どこで食べても普通に美味かった。でも今は出汁を啜るだけで、心の奥から「あぁ美味い~」と思わず声が出る。
九州うどんは大阪うどんと同じで、薄い色の鰹出汁で、麺は柔らかい。出汁にあご(とびうお)が使われている店もある。ここ最近食べるうどんは、肉かきつね。


大阪では隣席のカレーうどんに鼻が誘われ、時々負けることがある。
福岡に限っては、ごぼ天。

ごぼ天+肉という最強のコンビもある。
年中、昼飯にうどんを食べたい!と思うのだが、東京はうどん屋が少ない。ちょっと前まで、ほぼなかったと言っても過言ではないくらい、上京してからの約30年間はうどんを諦めた人生だった。これは私だけではなく、東京で暮らす関西人や四国人もそうだったはず。食べたければ蕎麦屋でうどんを頼むしかなく、かけ蕎麦の黒い出汁で初めてうどんを食べた時、「東京のうどんは黒いんだ」と思った。まぁ江戸っ子は蕎麦を好むわけで、西側の出身者のために申し訳程度にうどんも置いていたのだろう。だから蕎麦屋で「うどんください!」と言うのは、なんとなく肩身が狭かった。ところが有難いことに讃岐うどんブームが到来し、今や讃岐うどんは全国区になったのである。関西と九州のうどんは、あのコシには勝てなかった。そこは正直、負けを認めざるを得ない。
2年くらい前まで、コンサートの前は必ずうどんを食べることにしていた。理由は消化がいい・添加物が入っていない(うま味調味料などの添加物で体がだるくなることがあるから)・量がちょうどいい。そんなわけで会場に入る前に必ずうどん屋へ行く。ところが西日本にはいくらでもあるのだが、東京から東に行くにつれ、なくなってゆく。東日本方面は乾麺の稲庭うどんか蕎麦を選ぶしかなく、イベンターがうどん屋を探すのに苦労するため、結局コンサート前のうどん縛りはやめた。
そんなうどん好きの私だが、未だに、行きつけのうどん屋というものはない。うどんを食べるためにわざわざ車で遠くまで行くのもどうかと思う。
というわけで、行き着いた先は「自分で作る」である。買うのは、冷凍讃岐うどんの麺だけ。


最近の冷凍うどんは本当に素晴らしく、驚くほど安くて旨い。うどん県・香川の知人も「冷凍麺で充分旨い」とのお墨付きである。
まず、出汁が大切だが、私はよく茅乃舎のだしパックで出汁を取る。

そこへ日本酒と醤油を加え、最後に塩で味を整える。最近のお気に入りは「利尻昆布漁師だし」という添加物を加えていない昆布出汁をさらに入れた、長ネギと油揚げのきざみうどん。たまに玉ねぎと牛肉を甘く煮て肉うどんも作る。うどんはコシのある讃岐風もいいが、少々茹で時間を長くすれば、関西・九州風になる。油揚げをお湯で煮て油抜きをし、細く切ってタッパーに入れて冷凍しておき、食べる時に1人分を出汁に入れて煮る。長ネギの白い部分と青い部分を半分ずつ入れて、三分の一ほど食べてからの一味唐辛子投入。これがまた旨い! 七味は出汁の味が変わり過ぎるので、私は絶対に一味派。しかもその一味は我が家のベランダで育てた赤唐辛子。干してから種も一緒に砕いているので、まろやかだが辛い。

これで、自分で作っても驚くほど美味いうどんが出来上がる。もう東京でうどんを食べるのに困ることはなくなった。ありがたや冷凍うどん!