
夏を満喫し、また唄の旅へ
4月にスタートしたFUTATABIツアーは、約2ヶ月間のオフを挟み、また次の旅へと歩を進めている。
「ツアー中にこれだけ間が空くと、ちょっと変な感じ。ステージに立つ日々の方が生活リズムを整えやすい」と言うフミヤ。まさに歌うことが人生そのものとなっている、音楽人としてのライフスタイルを感じさせる。
8月に行った取材では、FUTATABIツアーやSpotifyプレイリストのこと、そしてツアー中とオフそれぞれの“旅”についてインタビュー。多岐に渡る話題から、今のフミヤを感じてほしい。

●引き続き、最高のステージを全国へ
———FUTATABIツアーは初日から6月下旬までの公演を終え、しばらく間が空きました。もうすぐ8月末の神奈川公演ですね。
フミヤ(以下F):ここまでの公演数を聞いて、まだ 14本しかやってなかったんだ!と驚いた(笑)。初日から2ヶ月やってきたから、もうちょっと本数をこなしてきた気になってたけどね。ちょっとやって、すぐにここまで間が空くスケジュールは、あんまり過去にない感覚。うまいこと脂が乗ってバンドもまとまってきたな、というぐらいで休みに入ったから、8月末の川崎がまた初日みたいな気持ちになるんだろうな。
マネージャー:ツアーは、トータル67本です。
F:あと53本!(笑) 全っ然、まだまだだよな。この間も、「そろそろ曲も少しぐらい変えてみようかなぁ」とか頭をよぎったんだけど、「いや待てよ、まだみんな全然観てないじゃん」って。関東すら、これからの県がほとんどだからね。
———東京や大阪も12月ですしね。そして、いよいよ最終日までの公演スケジュールが発表となりました。
F:そうだね。ここまでの14本は非常に盛り上がったよ。もちろんそうなるような内容で作っているのもあるし、その上で、みんながさらに盛り上がってくれた。すでに一度観て、「また観たい」「次はどこに行こうか?」という嬉しい声も見聞きする。新たに発表されたスケジュールも含め、引き続き最高のステージを届けに全国に行くんで。これから観る人も何度目かの人も、楽しみにしていてほしいね。

●ハワイで作ったSpotifyプレイリスト
———ツアー以外でもイベントライブ出演(Catch×Catch参照)のほか、7月にはフミヤさん自身のセレクトによるSpotifyのプレイリスト「F’s Summer Playlist」、「F’s Summer Night Playlist」がアップされました。
F:ハワイに行ってた時、時間があったから、ふとプレイリストを作ろうかなと思い立ったわけ。それで、夏のドライブ中に聴いてもらえるような雰囲気でプレイリストを作ってみたんだよ。必ずしも夏の歌だけじゃないんだけど、夏というテーマで並べてみると、そう聴こえてくるのがプレイリストの面白いところ。作ったものを「F’s Summer Playlist」として上げてみたら評判がよかったから、じゃあ夜バージョンも作ろうってことで「F’s Summer Night Playlist」を追加。選曲するのも楽しかったよ。もちろん、それなりに真剣に考えたけどね。なにしろ、ライブのセットリストとは全然違って、歌う体力を考えずに選曲できるのがいい(笑)。かつ、アルバムの曲順を考えるのとも違うから、すごく自由。あくまで聴き流してもらえるように作ってるから、全体的にしっかり長さもある。
———ファンの皆さんは、ライブ以外の日もいろいろな場面でフミヤさんと触れていただけますね。
F:手持ちの楽曲が多いと、こういうことができるんだなぁと思った。きっと今後、別の季節のバージョンも作るんじゃないかな。

●FF経済効果が各地で
———今回のツアーでは47都道府県を旅されていますが、さらにオフ中も何度か旅行に行かれていたということで、オンとオフそれぞれの旅について伺いたいと思います。まずはツアー中の旅について。
F:まず、ツアー先での旅の様子をSNSに上げるようにしたことで、各地との接点が前回以上に強い。事前に、この県ではここに行こう、と決めて行ってるから。
マネージャー:しかもフミヤさんの場合、ただ「ここ行ってきた」だけの投稿じゃないですからね。ちゃんと文章も書いて。
F:そうだね。なるべく濃い説明をするようにしている。だって、どうせなら俺の情報を見た人が、ライブ前に行けたら楽しいだろうからさ。ただ、インスタは一般の人が見る場。やっぱりファンクラブが最優先だから、comu comuの方が濃いよ。ちょっと写真を変えたり、文章量に差をつけたりはしている。
———フミヤさんは、いろいろなところをよくご存知ですよね。
F:仕事上、過去にいろんな形で連れて行ってもらった場所が多いからね。例えば岩手の光原社は、テレビ番組の民藝特集のロケで訪れて知ったお店。すっかり気に入って、それからも時間があると立ち寄っている。今回はもう、店がFFメンバーでいっぱいだったよ。みんなも同じところに行って、同じもの食べたり買ったりしているんだろうね。お店やお寺で言われることがあるもんな、「フミヤさん効果で今日はすごいです」とか「フミヤさんのおかげで売り切れました」って。各地で、FF経済効果が出ているという(笑)。
———ファンの皆さんも、マナーを守って楽しんでいただいているからこそですね。逆に、今回初めて訪れて印象に残った場所はありますか。
F:青森県立美術館の隣にある、縄文時代の三内丸山遺跡。縄文人の見方が変わったなぁ! てっきり、狩猟民族だからあちこち移動しながら簡易な住まいで暮らしていたのかと思ったら、ここでは定住していて、竪穴式住居だけでなく結構しっかりした大型の建物もあったらしい。遺跡の柱の跡とかから、こんなものを建てていたんだろうと想像して復元されているんだけど、体育館ぐらいでかい建物もあって。そこはおそらく女性たちの作業場で、土器や織物を作ったりしていたんだろう、と。縄文時代は、知れば知るほど興味深い。あとは、福井の恐竜博物館もすごかったな。実際のサイズで骨格が展示されているから、ものすごい迫力。「こんなでかいものがそこらを歩いていたなんて、地球ってなんなんだ?」と思った。しかも、人類が地球に誕生してまだ数十万年だけど、恐竜は絶滅するまで1億6000万年以上も存在していたわけだからね。そうやって、今回はコンサート会場との往復だけじゃなく、いろいろ見る機会を作ることができているから面白い。
———各地の魅力に触れて新しい発見ができるのは、いい旅ですね。
F:あと、どこに行っても本当にインバウンドが多い。九州は中国や韓国からで、広島あたりはヨーロッパ系の人もかなり多い感じ。東北は、前よりも徐々に欧米人が増えてきているのを感じる。毎年のように全国ツアーに行っているから、年を追うごとに変化しているのが分かる。東日本に来る外国人は、だいたい日本通だよね。すでに何度か来ていて、もう京都とか北海道は見終わってます、という人たち。日本人の旅行と違って、2〜3週間かけてあちこち行く人も多いよね。外国人観光客にどこに行ったのか聞くと、沖縄から北海道まで4か所ぐらいは普通だもんな。あれは日本人になかなかない旅のスタイルだから、ちょっとうらやましい。

●万博と日本の夏
———ツアーとは別になりますが、関西・大阪万博も開幕時に行かれていました。いかがでしたか。
F:俺が行った時はプレオープンだったから、まだパビリオンが完成していない国もけっこうあったんだよ。日本館や日本企業のパビリオンは開いてたけどね。前回の愛知と比べると、建築は圧倒的に今回の方が面白かった。デザインが凝っているところが多くて。その点は、昔の大阪万博みたいだなと思った。あの時も建築がめちゃめちゃ面白かったんだよ。今回の中では、行けてないけどサウジアラビア館が評判いいって聞いたのと、大屋根リングをあらためてじっくり味わってみたい。もう一度ぐらい行けたらいいなぁ。
———前回の万博にフミヤさんが関わったことで、万博というものの楽しさを知ったFFメンバーも多いと思います。
F:あの面白さは、体験してみないと分からないからね。行かずに「万博なんて」とか言う人もいるけど、今回だって始まってみたら評判がよくて盛り上がってるし。あと大阪では、万博はもちろんだけど、USJにある「スーパー・ニンテンドー・ワールド」が外国人に大人気なんだよ。なんせ、スーパーマリオで育った人は世界中にいるからね。万博とUSJがセットで盛り上がってる。
———7月から8月にかけてのお休み中も、何度か旅行に行くことができたようですね。
F:仕事もぼちぼちしていたけれど、時期的に夏休みをもらった感じだったからね。せっかくだから旅行をしていた。ハワイや瀬戸内。ハワイでは毎日運動してたよ。走って、泳いで、ストレッチして、やたら健康的に過ごしてた。最後に、徳島の阿波おどりや京都の五山送り火を初体験して、俺の夏休みは終了した。
———FUTATABIのツアーパンフレットでも、一度観てみたいとおっしゃっていた阿波おどり。いかがでしたか?
F:いやもう、驚いたね! あんなに大規模なお祭りを観たのは初めて。阿波おどりって、席に座って目の前を過ぎていくパレードを見物する感じかと思ってたら、とんでもなかった。「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損々」とは聞いてたけど、本当に観光客も一緒に参加しちゃうんだよ。街じゅうに300ぐらいの連がいて、あちこちで踊ってる。しかも4日間、夜の6時から10時ぐらいまで。俺は最終日に行ったんだけど、結局11時ぐらいまでやってたんじゃないかな。出ている人たちは身体がくたくただと思うけど、きっとトランス状態で疲れとか感じないんだろうなぁ。徳島市の人口24万人に対して、来場者111万人だって! あまりにすごかったから、今後も行ける年はなるべく行こうと思うぐらいよかった。そして京都は、大文字で有名な五山送り火。こっちはお盆の送り火だから、阿波おどりとはまったく別の雰囲気で、味わいがあってよかった。ちょっと小雨が降る中だったけど、盆地を囲んだ五つの山に6つの文字や形が浮かび上がるのを、全部眺めることができた。目の前に大きな「大」と、「妙」、「法」、小さい「大」、あと舟と鳥居の形。ちなみに、よく「大文字焼き」とか言っちゃうけど、京都の人は「大文字焼き」と呼んでほしくないんだって。ちゃんと「五山送り火」と。スイカ割りもしたし。今年は全体的に、日本の夏を満喫できたという充実感がある。やっぱり全国の有名なお祭りや踊りは、一度は生で体感してみるのが大事だね。ねぶた祭りや長岡の花火大会もいつか観てみたいし、まだ行きたいところや観たいものがいくらでもある。

●ヘルシーポジティブに体調管理
———オフ中には、お誕生日も迎えられました。当日comu comuに書かれていた、「ヘルシーポジティブなおじいちゃんを目指す」という言葉が、なんともいいなと。
F:ああ、誕生日な! そういえば63歳になりました(笑)。60や65じゃなくてちょっと半端な歳だから、自分でも忘れちゃうんだよ。あれっ今俺、何歳だっけ?って(笑)。ヘルシーポジティブ、もうそれしかないんだよ。誰もが健康は目指すけど、どうせならポジティブがいいじゃん。それにしても、昔の60代と今の60代って全然イメージが違うよね。個人差も大きいけど。そういえば、この間読んだ雑誌「Tarzan」に、男性の更年期のことが書いてあったんだよ。一般的に、女性の更年期ってメディアでもよく扱われるじゃん。でもターザンはトレーニング好きの男性がメインの読者だから、男性の更年期について。
———ここ数年で話題になってきましたからね。男性が鬱病かと思ったら更年期障害だった、というケースも多いらしく。
F:そうなんだってね。俺もその特集を見てセルフチェックしてみたら、当てはまる症状がひとつもなかったんだよ。ただ、運動面では有酸素運動よりも筋トレが大事らしいね。筋トレはジムに行った時に少しやる程度で、家ではあんまりしてないから、今後は少し増やそうと思った。たしかに筋トレって、やる気とか活力、明るさが出てくるのは理解できるな。周りの筋トレ好きを見ていても、そう思う。そういえば昔、うちのギャラリーでも個展をやってくれたSHAGって覚えてる? 「EQUAL」のアルバムジャケットも描いてくれた。あのSHAGが、今マッチョになってんの。
———当時は、やや細身でスーツにメガネ、繊細な印象の方でしたよね。
F:そうなんだよ。なんでもパドルボートを始めたらハマって、そのために筋肉を付けるようになったらしい。俺はそこまではやらないけど、適度にはやろうと思う(笑)。わりと、ちょっとやっただけで筋肉が付きやすいタイプだから、あまり外側の筋肉が付きすぎない程度にやる。なんせ、肉体にもメンタルにもいいっていうんだから。それこそヘルシーポジティブを目指すのにいいかもしれない。
———ツアーはまだまだ続きますし、筋トレを増やすのも体調管理に役立ちそうです。
F:うん。引き続き、体調管理が最優先事項。今年の夏も暑いけど、寝る時のクーラーは喉によくないから、直接浴びないようにしてるよ。隣の部屋でかけて、ドアを開けて多少冷気を入れるぐらい。それでもこの間、風邪ひいちゃったんだけどね……。京都での「chidoriya Rocks」の2日目に、喉のコンディションが悪くて大変だった。熱もだるさもなく、ただ喉が痛いだけ。そこから1週間後の「めざましクラシックス」までには治したけれど、復活に1週間ぐらいかかるんだなと学んだ。とにかく禁酒も含め、やれること全部やって治した。その1週間は、毎日土鍋でご飯を炊いて食べてたよ。炊飯器だと1時間かかるけど、土鍋だと20分ぐらいで炊けるから手軽。しかも俺さ、酒を飲まない時はご飯を3杯ぐらいおかわりするんだよ。
———運動部の高校生並みじゃないですか。
F:そうそう! まさにそんな勢い(笑)。ここぞとばかりに米を食べる。薬を飲むために3食ちゃんと食べたっていうのもあるけどね。でも、そんだけ食べてもお酒を飲まないから、2キロぐらい痩せたんだよ。もちろん体質によるんだろうけど、俺の場合は常に、酒を飲まなければ間違いなく体重を減らしたり体型を絞ったりできる。そうやって食事でも運動でも、自分の体質や傾向をつかんでおくのは大事だよね。必要な時に対策がとりやすいから。
———フミヤさんは健康意識が高いですし、お料理もされるので、よけい自分の状態や変化を掴みやすいんでしょうね。前回の「F’s RECIPE」では、カレー用のスパイスを伝授してくださいました。思った以上に本格的で、実際に作ったFFメンバーはまだ多くはないかもしれませんが、ご好評の声が届いています。
F:前から「藤井家のカレーのレシピを教えてほしい」という声は多かったけど、毎回具が違うからレシピにしようがなかった。だから、ベースとなるガラムマサラとカレーパウダーを伝授することにした。とにかく一度作っておけば、当分使えて便利。ただ、あれだけのスパイスを全部揃えるのも使い切るのも大変かもしれないから、FFのメンバー数人で分け合うのがベストだと思うよ。誰かの家に3〜4人とか集まって、その場でスパイスを作って分けるのも楽しいんじゃない? 別にそこでカレーを作ったりしなくても、持ち帰ればいい。
———さらに実際その場でFFカレーパーティーをしていただいてもいいですしね。その際は、編集部にお写真を送っていただければと。
F:茶色い写真しか来ないから、色とりどりのページにはならないけどね!(笑) 藤井家では、カレーは最低でも月1回は作る。家族からも「そろそろ作って」とか言われるし、冷蔵庫のいろんな材料を使い切りたい時も、カレーにするのが早い。ガラムマサラとカレーパウダーは便利だから、ぜひ一度作ってみてほしい。カレーはもちろん、何かの味付けにちょっと入れることもできるから。スパイス自体が身体にいいものだし、これを機にハマる人もいるかもしれないよ。
———そうですね。フミヤさんもですが、FFメンバーの皆さんもヘルシーポジティブに、引き続きFUTATABIツアーをお楽しみいただきたいと思います。
※インタビュー以降に内容に変更が生じている場合があります。ご了承ください。