

「いいと感じたものは、FFメンバーとシェアしたい」。
そんなスタンスで、フミヤのおすすめ&お気に入りを紹介するコーナーです。
今回フミヤのアンテナがビビッととらえたのは、こちら!
短編集のすすめ
短編集を、わりとよく買う。20代の頃にショートショートを読んだのがきっかけで、短編を読むようになった。短い話なのに世界観があり、話の先にまだその先があるような、物語のさらなるエピローグを想像させる感覚が面白くて好きになったのだ。
短編集には、一人の作家が書いた複数の短編をまとめたものと、異なる作家の作品を集めたアンソロジーがある。さらに言えば、出版社が選んだ作品集と、著名作家が選んだ作品集というのもある。私が主に好んで読むのはアンソロジーだ。作風も書かれた時代もさまざまなのが楽しい。それに、数ある中からのセレクトなので、面白い作品が確実に多いのだ。
短編の良さは、すぐに読み終えることができるところ。ちょっとした時間の合間に、ひとつの世界にパッと入り込み、そしてパッと出てこられる。気軽に読んでは放置し、気が向くとまた読んでは放置する。長編のように長い線として読むのではなく、点々と読む感じ。人生の隙間を埋めてくれる本ともいえる。
コンサートツアーの旅には、いつも本を2冊以上持ってゆく。1冊は比較的長編のもので、もう1冊は短編集。短編集の役割は、長編を読み終えた場合と、ちょっとした気分転換のためだ。
今回は、おすすめの短編集をいくつか紹介しよう。
●「文豪たちが書いた 泣ける名作短編集」(彩図社文芸部)
最近買った短編集。手元に本がなかったので、どこかの駅の売店で、とりあえず店の端に数冊置いてあった本棚から選んだ1冊。宮沢賢治、森鴎外、太宰治や芥川龍之介など、大家であり巨匠ともいえる文豪たち。現代とは違う日本語の古風な単語や言い回しが、妙に心に染みてくる。
●「夏のカレー 現代の短篇小説 ベストコレクション2024」(日本文藝家協会編/文春文庫)
これも、地方から東京に戻る時に読む本が欲しくて、駅ビル内の本屋で買ったもの。「ベストコレクション」という文字に釣られて、思わず手に取った。こちらは打って変わって、AIの話も出てくるような現代作家たちによる短編集。表題作「夏のカレー」を筆頭に、まるで夏にカレーを食べるように気軽にサクサク読めた。
●「夜に星を放つ」窪美澄(文春文庫)
帯に「第167回直木賞受賞」とあったので、短編だとは思わずに読み始めたところ、5本の短編だった。星にまつわる、心にキュンとくるような優しいお話たち。
●「教えたくなる名短篇」「読まずにいられぬ名短篇」「とっておき名短篇」(ちくま文庫)
作家の北村薫さんと宮部みゆきさんがセレクトした短編集3冊。FUTATABIツアーが始まる前に、旅に持って行くお供本として本屋であれこれ悩んだ結果、やや気合を入れて購入した。厚さもそれなりにある。新旧そして日本人作家と外国人作家を織り混ぜたセレクション。3冊を順不同に、その日の気分で適当に手にしたものを読んでいる。まだ全部は読み終えていないし、いつ読み終わるのかも分からない。
なお、「とっておき名短篇」の中に、飯田茂実さんという作家の「一文物語集」がある。これは短編ではなく、2~3行程度の一文の物語がいくつも綴られており、そこからひとつの物語を想像させるという不思議なスタイル。しかも25歳の時に執筆されたという。これには驚愕! 25歳にして、こんなにも言葉というか単語を操れるものなのか……。天才としか言いようがないが、どこか紙一重な奇才的な凄みがある。プロフィールも相当に変わっていて、興味深い。これは「一文物語集」も買うしかない、と思ってネットで探したところ、すでに絶版で中古しかなく9,000円くらいしたが、欲しくて思わずポチってしまった。
こんな風に短編集を通じて、知らなかった作家や、さらなる面白い作品に出会うこともある。私にとって短編集は、読書の世界を広げてくれる存在でもあるのだ。
皆さんも日々の用事の合間に、そして本と本の合間に、短編集はいかがですか? おすすめですよ!