歌い続ける旅の途中で

全国を巡る唄の旅も、いよいよ終盤。FFメンバーにとっても、一緒に歩んできた長い旅の終わりが近付いている。
そんな旅の途中、新曲「ココロ」や、ドラマ「コンビニ兄弟」の舞台である門司港訪問、そしてさまざまなイベントへの出演など、いくつかのトピックについて語ってもらった。
●心を描くドラマと歌詞がリンク
〜新曲「ココロ」&ドラマ「コンビニ兄弟」〜
ニューシングル「ココロ」が主題歌となっているドラマ「コンビニ兄弟」が、4月28日から放送開始。エンディングを、フミヤならではの明るいロックンロールナンバーが彩っている。また、ドラマの舞台である門司港と、デビュー前の思い出についても語ってもらった。
———ドラマ「コンビニ兄弟」が、好評放送中です。
フミヤ(以下F):小説のイメージ通りで、ドラマも面白い。もともと、コンビニという設定も含めてドラマ向きの本だもんね。そして、ケンティーの二役がすごくいい! ピカピカのケンティーと、アウトローでワイルドなケンティー。そういえば、comu comuを見ていて驚いたのが、「この人かっこいい、誰だろう?と思って二役と気付かなかった」という人もいたんだよ。いや普通これ気付くだろ!みたいな(笑)。
———それが意外と、気付かない人もいるみたいですよ。違うイケメンが出てきた、という感じで。
マネージャー:物語そのものに集中して観ているんでしょうね(笑)。たしかに主役が二役ってあまりないですし、ずっとあの兄弟ばかり映すドラマではないですもんね。
F:ああ、たしかにそうだな。毎回メインとなる登場人物が出てくるから、映る時間で言えば長くないもんね。
———そして、エンディングで次の展開に繋がる場面になると、いい感じで「ココロ」が流れてきます。
F:やっぱり、ラストで映像に乗る流れ方まで想定して作ったし、イントロも歌詞もドラマ用に考えたから、完全にマッチングできていると思う。今回は「ロックンロールで」というオーダーをいただいて作ったわけだけど、実際に映像と合わせた仕上がりを見たら、まさに先方が望んでくれていたのはこういうものだったんじゃないかな、と自分でも思えた。ヒューマンドラマだから、毎回なんらかの温かい気持ちになるようなシーンがあったり、人間模様に心が動いたりする。となると必ず、物語と「ココロ」の歌詞がリンクして聞こえてくる。最終回まで終わったら、一気見したい人はオンデマンドでも観るんだろうね。そのタイミングで、また歌を耳に入れてもらえるかもしれない。
———リリース以降はFUTATABIツアーのセットリストに加えられたので、すでに「ココロ」を生で聴かれた方々もいらっしゃいます。
F:そう、5月の公演からセットリストに入れている。早くも、歌うとかなり盛り上がる1曲になってるよ。ふとした瞬間にサビを口ずさみたくなるような、長く聴いてもらえる曲になれば嬉しい。

———3月には、ドラマの舞台である福岡の門司港に行かれたんですよね。
F:そう。のんびりしていていいところだったよ。門司港はもともと、横浜や神戸と並んで日本三大港のひとつだった。今回はドラマに出てくる観光マップをいただいて見ながら歩いたんだけど、俺的には、角打ちがすごく楽しかったな(笑)。福岡とはいえ、門司港はそこまで馴染みのある土地ではないんだけどね。チェッカーズのメンバー全員そうだったと思うけど、若い頃に東京に出てきちゃったし、天神ぐらいしかよく知らないから。街をそこそこ知っているのは、裕二ぐらいかな(笑)。ただ、俺は国鉄に就職してすぐに、門司港にあった国鉄学校に1週間研修に行っていたんだよ。九州で国鉄に就職した新人は、そこに研修に行く。よく、メディアに俺の国鉄時代の白黒写真が出ることがあるじゃん。みんなで並んでいるあの場所が、門司。俺も含めて親や親戚が国鉄だから入るという人も多くて、大卒の人も少なかった。そういえば、当時の職場には女性社員が一人もいなかったんだぜ。今考えるとありえないよね。あと、ちょうど国鉄が分割民営化に向かう時代だったんだけど、当時はそれがどれほどすごいことなのか理解していなかった。電電公社がNTTに、専売公社がJTに、国鉄がJRになり、その後は郵政民営化という一連の流れ。その中で最初に改革が始まったのが国鉄だったから、当時はまだ先の変化を予想しきれないよね。組織が激しく変化していた時期で、職員たちも、まさか自分たちの首が切られると思ってないわけよ。俺も中にいて、なんでこんなに変化が激しいんだろうと思っていた。俺が辞めた後、1987年に分割民営化されてJRになった。今のJR九州の古宮社長が、同い年なんだよ。下から現場を踏んで、社長になったという叩き上げの方。
マネージャー:入社はフミヤさんが少し先輩ということになります。しかも「ふるみや」の「る」を抜くと「ふみや」さん、です(笑)。
F:そう。古宮社長とは対談もしたけど、面白かったね。
———短期間とはいえ元職場ですから、国鉄やJR九州とのご縁は深いですよね。音楽やバンドに夢中だったところから国鉄への就職を決めた、当時の想いは?
F:チェッカーズはね、そもそも音楽で飯が食えるとか全然思っていなかったわけ。俺は一生音楽で食っていくんだ!みたいなメンバーはいなかったと思う。デビューとか芸能界なんて、あまりにも遠い存在で現実味がなかったんだよ。なんせ、久留米から福岡に出るのにもちょっと緊張するぐらいだったんだから(笑)。高校を卒業しても、どっちにしろ尚之とクロベエはまだ高校生だし、みんな就職するか大学に行くかという選択肢。それで享はヤマハ、俺は国鉄に入って、他のメンバーは進学することになった。そもそも当時は就職を考える上で、好きな仕事とか希望の職種を選ぶという意識はそんなになかったんだよね。俺も、単純に親父が国鉄にいたから、そこでいいんじゃないかっていう程度。親父と面接の練習とかしたなぁ(笑)。とはいえ、ずっと国鉄にいるつもりはなかった。それは音楽でどうのこうのじゃなく、ただ東京に出たいという気持ちだけはあったから。結果的に、思ったより早くそのタイミングが来て、それがデビューというきっかけだった。考えてもいなかったチャンスが急に降ってきて「俺たち、どうやらデビューできるらしいぞ」「そう言われるんだったら、東京行ってみようか?」みたいな(笑)。
———それが今や、還暦を武道館で迎え、全都道府県ツアーをしつつ、福岡のドラマ主題歌でロックンロールを歌っているという。
F:本当だよな。人生、分からないもんだよ(笑)。
●歌うために、整え続ける
〜FUTATABIツアー〜
長いツアーも終盤。そんな中、身体と声に向き合わなければならない局面も……。そこには、真摯にコンディションを整えて、目の前のひとつひとつのステージに臨むフミヤの姿があった。
———FUTATABIツアーも終盤です。5月末には、体調不良で仙台公演が6月に延期となりました。これは、今回の長いツアーでは初めてのことでしたね。
F:公演延期は、いつも本当に苦渋の決断。スケジュール的にその日しか来られない人が必ずいるから、本当に申し訳なかった。この日は完全に無理な状態で、ちょっと対処して治るような状態じゃなかった。病院に行ったら、案の定、喉や鼻の粘膜は真っ赤。ただ、運がいいことに、声帯だけは炎症を起こしていなかったんだよね。そこは先生にお墨付きをもらったから、ある程度回復したら「声帯さえ大丈夫なら、歌はいけるな」と決めて歌うことができた。振替公演の日程がすぐに確保できたのも、ありがたかった! おそらく7月のフォーラム以降になるだろうと思っていたから、その動きたるや、すごいスピードだった。奇跡的なことに、バンドとスタッフもスケジュールを調整してもらうことができて。ただしキーボードのサクちゃん(櫻田泰啓氏)は、公演日当日の朝に香港から帰国だったけど。
マネージャー:櫻田さんの乗った飛行機が日本に向けて飛び立つのを確認するまでは、寝られなかったですね。
F:サクちゃんも、成田の景色を見た時に本当にホッとしたらしい(笑)。
———そう考えると不幸中の幸いというか、全部がパズルのようにはまって、すぐにあの振替公演が実現したんですね。アンコールの最後には、1曲追加のプレゼントもありました。
F:お詫びとお礼として、1曲追加した。振替公演というのは、来られない人がいるから空席が出るのが一般的なんだけど、ほぼ埋まっていた。それがすごくありがたかった。
———今回は、風邪の症状が長く続いて大変だったようですね。回復されてよかったです。
F:いわゆる、今流行りの「謎風邪」ってやつだろうね。感覚的に、いつもの風邪とは全然違った。熱はないのに、喉の症状がめちゃくちゃ長く続いて、3週間経っても夜中に咳が出て起きたりしていたから。医者からは「いつもの1.3〜1.5倍ぐらい食べるようにしてください」と言われたから、普段以上に規則正しく3食しっかり食べて栄養をとっていたよ。2週間目ぐらいからは自分でもいろいろ作りまくった。藤井家の食卓は、8割が野菜で2割が魚や肉。これだけ連日自炊したのは久しぶりだったから、家での食事というのはこんなにもヘルシーなのか!と、あらためて感じた。普段以上に食べまくったから、多少は太るのも覚悟していたんだけど、酒を全然飲まないから2キロ減ったという(笑)。ちょうど、2キロぐらい減らしたいと思ってたから、健康的に体重を戻せてよかった。やっぱり酒は意外とカロリーが高いんだよね。引き続き、歌うために生活も身体も整えていくよ。
———この会報が出るのは、ラスト4本となる福岡公演の前日となります。
F:ついにここまで来たね。楽屋で塗りつぶしている日本地図も、あと少し。あの地図は、その都道府県でのすべての公演が終わった時点で塗るようにしているから、これだけあちこち行った今でも、まだ福岡と東京が残っている(笑)。それに、フォーラムが終わっても、アリーナライブが控えているからね。すべて終わったという雰囲気ではなく、ひと段落ぐらいの感覚なんじゃないかな。

●再会と刺激と
〜イベント、番組出演〜
ツアー中も、大きなイベントや番組への出演が続いていたフミヤ。自身のコンサートとはまた違う観客層にも関わらず、それぞれの場を大いに盛り上げていた。
———ツアー中も、イベントへの出演がいくつかありました。4月の終わりには、FM COCOLOのイベント「SUPER J-HITS RADIO 30th Anniversary Live『音礼・綴(おんれいつづり)』」。
F:これは、長い付き合いのあるDJ加藤美樹さんによる2日間のイベント。出演者もバンドもほとんど知り合いで、ホーム感があった。客席はかなりの人だったよ。FM COCOLOも含むFM802は、とても活気があってすごいなと思うんだよね。FM802に行くと、エレベーターに今日のゲストの名前がだーっと書いてあるんだけど、俺が行った日も8人ぐらい書かれていた。
———出演者側として、時代による変化も肌で感じられるんでしょうね。
F:なにしろ昔から出ているから、ラジオ業界とのご縁は深い。とくに今は音楽雑誌やテレビの音楽番組は少ないから、俺に限らずミュージシャンがプロモーションする場合、必然的にラジオやWEBメディアやSNSが多くなるじゃん? あと、今はradikoもあるからラジオを聴く人がまた増えてきて、FM業界も元気になっているように思う。radikoや局のアーカイブ配信があると、好きな番組を好きな時に聴けるからいいよね。
———コロナ禍から一気に音声メディアの人気が高まったんですよね。画面を観る必要がないし、仕事や家事、運動をしながらの「ながら聴き」がしやすいので。
F:たしかに、BGMとして気軽にかけておけるよな。俺も、家でラジオつけっぱなしの生活とか憧れるんだけど、家族がテレビを観るから実現しない(笑)。あとラジオっていいなと思うのが、全体の印象としては平和なムードで、生活にプラスになるような情報が多い気がするんだよね。もちろん政治や世界情勢のニュースはあるけれど、変なゴシップばかり追いかけて放送することはあんまりないじゃん。これまでテレビやラジオ中心に活躍してきた人たちも、SNSをやっていたりするから面白い。俺、よく安住(紳一郎)アナの出ている番組のTikTokとか観るもん(笑)。
———メディアによって特性や役割が違うので、楽しむ方法や選択の幅がありますよね。それから5月2日には、井上尚弥選手のボクシングの試合で、国歌を独唱されました。
F:これは、かなりの人から「観たよ」と言われた。だってあの試合、有料配信だったけど、記録になるほどすごい人数が観ていたもんね。今回は、井上尚弥くんから直接「フミヤさん! 国歌お願いできますか?」「あ、その日なら空いてるよ」みたいな感じで依頼をいただいた(笑)。最初から「日本人同士の試合なんで」と言われていたから、二人のために歌う感じで。この間も井上兄弟と食事に行ったんだけど、彼らはまたカラオケでチェッカーズ縛りで歌ってたよ。彼らのリモコン画面の履歴を見ると、チェッカーズ、チェッカーズ、チェッカーズ、チェッカーズ……って並んでんの(笑)。しかもマニアックだから「フミヤさん、次は武道館で『One Night Angel』歌ってください」とか言うんだよ。「ファンの人たちも、歌ったら喜ぶんじゃないですか?」「いやー、さすがにその歌は難しいと思うよ」みたいな(笑)。

マネージャー:万一それがセットリストに入ったら、「これ、井上兄弟のリクエストだ」ってことになりますね(笑)。
———5月はそれ以降も、19日のNHK「うたコン」、24日はソフトバンクホークスの、王貞治球団会長の功績を讃える初のイベント「OH SADAHARU LEGACY DAY」での歌唱、31日に京都の「葉加瀬太郎音楽祭 2026」などが続きました。
F:番組としては、この「うたコン」で「ココロ」を生で歌ったのが初披露。NHKのドラマ主題歌だから、早速歌うことができてよかった。5月24日は、ソフトバンクホークスの「OH SADAHARU LEGACY DAY」で「勝利の空へ」。この日は風邪を引いたばかりで、喉もギリギリのタイミングだった。
マネージャー:ところが本番では、観客の皆さんが不調に気付かないぐらいの歌声。やはりフミヤさんは自分の喉のことをよく分かっているんだなと、あらためて感じました。
F:今回の風邪は、どちらかというと中域の音が出しにくくて、逆に「勝利の空へ」のサビとかは歌えそうな感じがしたんだよね。京都の「葉加瀬太郎音楽祭 2026」はフルオーケストラだったけれど、これも歌えてよかった。
———最近では、6月10日のMUSIC AWARDS JAPAN WEEKで、大滝詠一さんのトリビュートライブに出演されました。
マネージャー:昨年はYMOが取り上げられた枠ですね。国際音楽賞のイベントの一部として、日本のレジェンドアーティストを世界に観てもらおう、というコンセプトです。
F:客層で言うとMUSIC AWARDS JAPAN全体よりは上の世代だけど、盛り上がったよ。出演者の中では、俺が若手なぐらいだったもんね。
———それこそ、はっぴいえんど以来のファンとか、そういう年齢層でしょうからね。フミヤさんにとって、大滝さんやその楽曲とは?
F:俺にとって大滝さんは、やっぱり青春時代。もちろん好きだったし、過去に一度だけお会いしたこともある。だから、今回のイベントで歌うことができたのは嬉しかったよ。それこそ山下達郎さんや細野晴臣さんにも影響を与えた岩手出身の音楽オタク。ちなみに、大滝さん名義でリリースした楽曲自体はそんなに多くないんだよ。でも、アルバム「A LONG VACATION」のヒットで作曲依頼が集中した。森進一さんとか小林旭さんとか、ポップス系だけではなく演歌系の方にも楽曲提供されているから、“大滝さん節”を耳にする機会は多かった。ドラマ「ラブ ジェネレーション」の主題歌「幸せな結末」が大ヒットしたことによって、若い世代にも認知度が高まったんだよね。今回のイベントでは、シークレットゲストの小林旭さんを観ることができたのが非常に嬉しかった。俺は会場の2階後ろの壁際で観ていたんだけど、出てきて歌われた時は、お客さんもめちゃくちゃびっくりして、おおーっ!というどよめきが起きていたよ。すごい存在感で、一瞬にして全部持っていった感じ。なかなかこんな機会ないから、観ることができてよかった。
———ツアー中もさまざまなステージに立つことで、長年の番組やミュージシャンとのお付き合いもあれば、井上兄弟のような若い世代とのお付き合いもあり。いろいろな再会や刺激があるようですね。では、またFUTATABIツアーが終わる頃に、あらためてツアーやアリーナライブについて聞かせていただこうと思います。
F:そうだね。まずはツアー最終日のフォーラムまで、しっかり走り切ります!
※インタビュー以降に内容に変更が生じている場合があります。ご了承ください。
*ニューシングル「ココロ」配信サイトはこちら
*「ココロ」ついてのFF SPECIAL INTERVIEWはこちら
*ドラマ原作の小説「コンビニ兄弟」についての「Fumiya’s Favorite」はこちら
*ドラマ10「コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店」放送中
NHK総合/毎週火曜22:00~22:45 <全10回>
※NHK ONE(新NHKプラス)で同時・見逃し配信予定
主題歌 藤井フミヤ「ココロ」